身近なDX事例からみる実現に向けた取り組み
コロナウイルスの感染拡大に伴い、改めてDX(デジタルトランスフォーメーション)についての議論が盛んになってきています。
電通デジタルが2020年末に実施した調査では、コロナウイルス感染症の拡大によってDX推進を加速したと答えた企業は、実に50%に達していると報告されています。
しかし、いくら勢いが増しているとはいえ、DXによって具体的に何が実現できるのかが見えてこないと自社に導入するイメージがつきにくいですよね。
そこで今回は、私達の身近な企業で実際にDX推進に成功している企業をご紹介しながら、DX導入までのポイントをまとめていきます。
新たな顧客体験、ビジネスモデルを生み出したJapan Taxi(日本交通)
タクシー会社としておなじみの日本交通。その情報部門からスピンオフしたJapan Taxiの例を、まずご紹介します。
Japan Taxiでは、乗車場所を選択してボタンを押すだけで、すぐに周辺のタクシーを呼ぶことができる配車アプリを提供しています。
このアプリにはWallet機能も付随しており、タクシー後部座席のタブレットに表示されるQRコードを読み取るだけで事前に支払いまで完了することができるサービスも利用できます。
このアプリの導入により、顧客側にとっては急いでいるときにスムーズにタクシーの手配や支払いができるという体験を、日本交通などの企業側にとっては現金管理や釣り銭確保の負担軽減などの価値を提供することができているといいます。
さらに先述したタブレットを活用した広告事業も新たな収入源として開始しており、タクシーを利用するビジネスマン向けの媒体としての売上も好調とのこと。こちらの事業は各車両から収集できるデータと組み合わせることができるため、さらなるビジネス展開にも期待が寄せられています。
こちらはまさに、DX推進によって新たなビジネスチャンスを見つけることに成功した例と言えるでしょう。
DX推進により業務時間の短縮に成功した株式会社学研ロジスティクス
次にご紹介するのは、物流事業を手掛けている株式会社学研ロジスティクスの例です。
こちらの企業では、かつて申込書や引き落とし用紙をすべて紙で管理していたことで、繁忙期には入力専用の人材を20名追加雇用する必要が生じていました。
この課題を解決するために彼らが導入したのが、手書きの文字を高精度で読み取ることができる「DX Suite」というサービスとRPA(Robotic Process Automation)を組み合わせたシステムです。
このシステムを導入することで、データの読み込みだけでなく、確認・修正といった作業の負担も軽減し、業務時間の削減につながったと言います。
こちらは、DXにより作業時間や人件費といったコストを削減することに成功したわかりやすい実例と言えます。
DX導入までのポイント
ここまでDXによりビジネスチャンスの獲得や業務改革に成功した実例を紹介してきました。では、実際に自社でDXを推進するために気をつけたいポイントはどこなのでしょうか?
まず、最も重要となるのは「目指すべき目的とそのための戦略」です。
いくら多くの企業がDXに取り組んでいるからと言っても、自社の課題にあった目的と戦略がなければ日進月歩で変わっていくITに振り回されるだけで終わってしまう危険さえあります。
まずは、なぜDXに取り組むのか、どのような価値を生みたいのか、そのためにどのようなシステムにするのかなどをしっかり戦略として整えておく必要があるでしょう。
次に意識したいのが「組織内の風土や体制」です。
DXは、これまでとは全く違うチャレンジをしていくことがベースとなっている営みです。変わることを嫌ったり、新しいものに拒否反応を起こしたりするような土壌では、中途半端な結末にとどまってしまう可能性もあります。
各部署の鍵となる人物や経営層も含めて、社内一体となってプロジェクトに取り組む姿勢を作っていくことも重要となります。
最後に、「DX推進によって得られる顧客体験を差別化し、そこから得られるデータもまた活用していく」というポイントも忘れてはいけません。
DX推進によって選ばれるサービスになることで、そこからまた膨大なデータを得ることができます。このデータはサービスの改善だけではなく、新しいニーズやターゲットの分析、さらなる差別化などにも利用することが可能です。
このサイクルを回していけるかどうかが、サービスが永続的に選ばれ続ける課題になっていくといえるでしょう。
まとめ
このように、DX推進には、新たなチャンスやターゲットを見つけ出したり、今の自社の課題を解決したりといった効果が期待できます。
まずは自社の課題を見つけ、それに対してどのようにDXを導入していくのかを検討するところから始めてみませんか?