数字は管理するものか、それとも育てるものか
こんにちは、YKプランニング代表取締役の岡本です。
数字を見ていると、つい「ちゃんと管理しなければ」と思う瞬間があります。
売上や利益、コストや人件費、キャッシュの残高など、どれも放っておいて良いものではありません。実際、数字を見なくなると、あとから困った事態につながることもあります。
その一方で、管理しようとすればするほど、なぜか数字との距離が遠くなっていく。そんな感覚を持ったことがある方も多いのではないでしょうか。
今回は、数字を「管理するもの」ではなく「育てるもの」と捉えてみると何が変わるのかについて考えてみたいと思います。
数字を管理しようとすると起きること
数字を管理しようとすると、まず基準を決めたくなります。
予算、前年差、目標値、業界平均など、何らかの物差しを置き、それに対して良いのか悪いのかを判断しようとします。これはごく自然なことですし、必要な場面もたくさんあります。
ただ、この「基準」が前面に出すぎると、数字を見ること自体が少し重たくなっていきます。
数字を見るたびに評価が生まれ、評価が生まれるたびに説明や言い訳が必要になる。そうすると、数字は考えるための材料ではなく、答え合わせの紙のような存在になってしまいます。
こうした状態が続くと、数字は次第に避けたいものになっていきます。
数字が悪いときはもちろん、良いときでさえも「この状態がいつまで続くだろう」「次に落ちたらどうしよう」と不安になることがあります。その結果、数字を見る時間そのものが前向きな時間ではなくなってしまいます。
「管理」という言葉は本来、中立的で実務的なものです。しかし現場では、「縛られる」「チェックされる」「評価される」といったイメージと結びつきやすい側面があります。そうなると数字は少しずつ人から遠ざけられ、経営や現場から浮いた存在になってしまいます。
数字を育てるという見方
そこで、数字を「管理」ではなく「育てる」と考えてみると、少し景色が変わります。
育てるという言葉には、時間がかかること、手間がかかること、思いどおりに進まないこと、それでも関わり続けること、といったニュアンスが含まれています。
植物を育てるとき、毎日メジャーで測りながら「昨日より伸びていないからダメだ」と言い続ける人はほとんどいません。水をあげたり、日当たりを調整したり、土を入れ替えたりしながら、少しずつ変化を見守ります。
数字も、実はそれに近い存在です。
売上や利益は、ある日突然大きく伸びるものではありません。日々の行動や判断の積み重ねが、時間をかけて数字として表れてきます。
数字を育てるという視点に立つと、「今いくらか」よりも、「何がこの数字をつくっているのか」「どこに手を入れると変わりそうか」という問いが自然に生まれます。
そうすると、数字は評価の対象ではなく、対話の相手になります。
数字が悪いときも、「なぜこうなったのか」と責めるのではなく、「どんな環境だったのか」「どんな行動が重なったのか」を振り返る材料になります。数字が良いときも、「すごい」「良かった」で終わらず、「何が効いたのか」「どこが再現できそうか」を考えるきっかけになります。
数字と行動の距離
数字を管理しようとすると、どうしても数字と行動の間に距離が生まれます。
数字は結果であり、行動は原因です。そのため、結果だけを見て原因を後から探す流れになりがちです。
一方で、数字を育てるという見方に立つと、数字と行動はもっと近い関係になります。
今日の営業活動、現場のちょっとした工夫、採用や育成の方針、価格の決め方。こうした一つひとつが、時間差を伴いながら数字に反映されていきます。そのつながりを意識できるようになると、数字は「遠くにある結果」ではなく、「自分たちの行動の延長」に見えてきます。
そうなると、数字を見ることが少し楽になります。怖いものではなく、確認したいものになる。失敗の証拠ではなく、次のヒントになる。数字と行動の距離が縮まると、数字は経営や現場の言葉になり始めます。
数字が変わり始める瞬間
数字が変わり始めるのは、大きな施策を打ったときだけではありません。
むしろ多くの場合、小さな見方の変化や小さな会話の変化、そして小さな行動の積み重ねによって、少しずつ変わっていきます。数字を見て、「良い・悪い」を語る時間が減り、「なぜだろう」「どうしたらいいだろう」と考える時間が増えたとき。数字の話が、詰問ではなく相談になったとき。数字が、評価の材料ではなく、次の一手を考えるための材料として扱われ始めたとき。そのあたりから、組織の空気が少しずつ変わっていきます。
数字を育てるというのは、実は数字そのものを育てているというより、「数字との関係」を育てることなのかもしれません。数字との関係が変わると会話が変わり、会話が変わると行動が変わります。そして行動が変わることで、結果として数字も変わっていきます。その順番を意識できるようになると、数字は管理すべき対象ではなく、一緒に成長していくパートナーのような存在に見えてくるのではないでしょうか。

1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。

