VRIO分析とファイブフォース分析の違いとは?
「VRIO分析」と「ファイブフォース分析」は、どちらも事業戦略の立案に活用される代表的なフレームワークです。しかし、VRIO分析が自社の強みを分析する手法であるのに対し、ファイブフォース分析は業界の競争環境を分析する手法です。
今回は、VRIO分析とファイブフォース分析の違いを比較しながら、それぞれの特徴や使い分けについてわかりやすく解説します。
VRIO分析とファイブフォース分析の違い
経営を続けていると、
「良い商品やサービスを提供しているつもりなのに利益が伸びない」
「競合との違いが見えにくくなってきた」
と感じることがあるかもしれません。
そのようなとき、原因は社内にある場合もあれば、市場環境の変化にある場合もあります。
だからこそ経営では、「自社を見る視点」と「市場を見る視点」の両方が欠かせません。
そのために活用されるのがVRIO分析とファイブフォース分析です。
VRIO分析では、自社が持つ人材や技術、ブランド、ノウハウなどを整理し、「何を強みに戦えるのか」を考えます。
一方、ファイブフォース分析では、自社を取り巻く業界や市場に目を向け、「その市場は利益を出しやすい環境なのか」を考えます。
しかし、どちらか一方だけでは十分とは言えません。市場を理解し、自社の強みを把握してはじめて、現実的な戦略を描けるようになるのです。
VRIO分析とは
「自社の強みは何ですか?」
そう聞かれたとき、すぐに答えられる経営者もいれば、頭ではわかっていても言葉にするのが難しいという方もいるのではないでしょうか。
長年積み重ねてきた技術や顧客との関係、社員の経験やノウハウは、当たり前になっているからこそ価値に気づきにくいものです。
VRIO分析は、そうした経営資源を整理し、自社の強みが競争優位につながるかどうかを確認するためのフレームワークです。
1991年に経営学者ジェイ・B・バーニー氏によって提唱され、現在も広く活用されています。
VRIO分析の4つの視点
VRIO分析では、次の4つの視点から経営資源を評価します。
①Value(経済的価値)
まず確認するのが、その経営資源が価値を生み出しているかどうかです。
対象となるのは資金だけではありません。人材や設備、技術、ブランド力なども含まれます。
市場の変化に柔軟に対応できるか、新たなチャンスをつかめるかといった点から考えていきます。
②Rarity(希少性)
次に確認するのが希少性です。
競合他社も同じ強みを持っている場合、差別化は難しくなります。
自社ならではの特徴や独自性があるかどうかがポイントになります。
③Imitability(模倣困難性)
たとえ希少性があっても、簡単に真似できるものであれば優位性は長続きしません。
競合が同じ仕組みを再現しようとしたときに、どの程度の時間やコストが必要かを考えます。
④Organization(組織)
最後に確認するのが組織です。
優れた人材や技術があっても、それらを活かす仕組みがなければ成果につながりません。
部門間の連携や人材育成の仕組みなど、自社の強みを発揮できる体制が整っているかを確認します。
このようにVRIO分析では、自社の持つ技術力やブランド力、顧客との関係性などを整理し、競争優位性の源泉を見つけていきます。
ファイブフォース分析とは
一方で、自社に強みがあったとしても、市場環境によっては十分な利益を確保できないことがあります。
たとえば、価格競争が激しい市場や、新規参入が相次ぐ業界では、多くの企業が利益を出しにくくなります。
そうした業界構造を整理する際に役立つのが、ファイブフォース分析です。
ファイブフォース分析は、1979年にマイケル・E・ポーター氏によって提唱されたフレームワークで、業界の競争環境を分析するために活用されています。この分析では、業界の収益性に影響を与える「5つの脅威」に注目します。
ファイブフォース分析の5つの脅威
① 業界内での競争
競合企業との競争の激しさを分析します。
同業他社が多い業界ほど価格競争が起こりやすく、利益が圧迫される傾向があります。
② 新規参入者の脅威
新たな企業が参入しやすい業界かどうかを確認します。
参入障壁が低い業界では競争が激しくなりやすく、利益を維持するのが難しくなります。
③ 売り手(サプライヤー)の交渉力
原材料やサービスを提供する取引先の影響力を分析します。
仕入先が限られている場合、コスト上昇の影響を受けやすくなります。
④ 買い手(顧客)の交渉力
顧客が価格や条件にどれだけ影響を与えられるかを分析します。
競合が多い市場ほど、顧客側の交渉力は強くなる傾向があります。
⑤ 代替品の脅威
競合他社の商品ではなく、顧客のニーズを別の方法で満たす存在を指します。
紙の書籍に対する電子書籍、テレビ放送に対する動画配信サービスなどが代表例です。
ファイブフォース分析をおこなうことで、業界の収益性や競争の激しさ、将来的なリスクなどを整理できます。
VRIO分析とファイブフォース分析の使い分け
中小企業の経営では、「自社に問題があるのか、市場環境に問題があるのか」が見えにくくなることがあります。
売上が伸びないと、営業力や商品力ばかりに目が向きがちです。しかし実際には、市場の構造変化や競争激化が影響していることも少なくありません。反対に、市場環境は悪くないにもかかわらず、自社の強みを十分に活かせていないケースもあります。
そんなときは、まずファイブフォース分析で業界の状況を整理し、そのうえでVRIO分析によって自社の強みを確認してみるとよいでしょう。
「どのような市場で戦っているのか」
「その市場で活かせる強みを持っているのか」
この2つをあわせて考えることで、自社らしい戦い方が見えやすくなります。
フレームワークの目的は分析そのものではありません。経営判断の材料を整理し、次の一手を考えるために活用することが大切です。
まとめ
VRIO分析は、自社の経営資源や強みを分析するためのフレームワークです。一方、ファイブフォース分析は、業界や市場の競争環境を分析するためのフレームワークです。
経営環境が変化し続けるなかでは、自社の状況だけを見ても、市場だけを見ても十分とは言えません。
市場環境を理解し、自社の強みを改めて見つめ直す。その繰り返しが、自社らしい戦略を描くための第一歩になるのかもしれません。


