2022.04.27
回復基調のなかで示された、
厳しいシミュレーション結果
有限会社まるみや ✕ bixider 岡憲一郎税理士
2021年10月初旬の某日。有限会社まるみや原田社長と岡憲一郎税理士(以下ビサイダー)がタッグを組む「bixider経営支援プロジェクト」の第1回目は、事前にwebコミュニケーションツールを駆使し、必要な情報共有を行ったうえ、前回同様非対面で、大分県と香川県を結ぶオンライン上ながらもストレスフリーな環境でスタートしました。
今回の定例ミーティングに際し、まるみやの過去の財務諸表を取り寄せていたビサイダーは、bixidの「月次経営計画シミュレーション」に2020年11月〜2021年9月の収支データを事前に入力。その理由は、今ミーティングが開催される10月が、まるみやの決算月であることによります。
画面越しにあいさつを交わした後、ビサイダーの提案により今回のミーティングを3つのTASKに分けることが決定。
〈TASK1〉10月の収支見込額を「月次経営計画シミュレーション」に入力し、当期決算の着地点を共有。
〈TASK2〉11月からスタートする来期の資金計画をひと足早くモニタリングし、来期の利益と資金繰りを見通す。
〈TASK3〉当期決算から課題を抽出し、来期の施策を見出していく。
そして今回、当期決算をもとに来期の資金計画(損益)シミュレーションを導き出したところ、予想外かつ驚きの“誤差”が判明することに!
原田社長が予期していなかった“誤差”とは、果たしてどのようなものだったのでしょうか。
今回活用したbixidの機能
単年(月次)経営計画シミュレーション
※当画像はサンプルデータです。
企業経営のPDCAを支える「計画」をスピーディに作成する機能が「経営計画」です。
単年・月次で予算を作成する「単年月次計画」と、年次で予算を作成する「中期年次計画」を併用することによって、数値計画とそれに対する行動計画を作成できるこの会計ソフトは、複雑な経営計画を高精度に単純化するとともに、売上をベースに、固定費や変動費を昨対ベースで瞬時に作成できる点が魅力です。
また、売上:経費の比率が季節によって変動する場合も、季節指数で自動計算。慣れれば15分で作成できる6つの自動作成機能のほか、部門単位や店舗単位での作成も可能です。
長引くコロナ禍により、当期決算は厳しい内容に
「コロナが収束傾向にあり、1000から2000単位の大口案件が入るようになったことで工場の稼働率も上がっています。いまはこの回復基調を継続させていきたいと考えているところです」(原田社長)
ミーティング開始直後にそう話す原田社長の言葉を聞いて安堵の表情を浮かべたビサイダー。
「それはよかったですね。順調に推移されることを私も願っています。そこで第1回目は、今月がまるみやさんの決算月ですので、まるみやさんの当期の決算内容を確認したうえで、来期をどう戦っていくかという方向性を見出せればと思っています。ですので今回は、店舗ごとにデータを細分化しない方向で進めたいと思います」と原田社長に提案を投げかけました。
ここから、今回のミーティングは本格的にスタートすることに…。
ビサイダーからの提案を了承した原田社長は、手元に用意した財務データが記載された紙資料を見ながら、問いかけに対して各科目の数値を答え、ビサイダーが「月次経営計画シミュレーション」の10月分の勘定科目に数字を入力する作業が30分ほど続いたのですが、その模様を一部抜粋しましょう。
岡憲一郎税理士事務所(以下 ビサイダー)
賃借料や保険料は9月の数字と同じですね?
原田社長
はい。工場の賃借料、減価償却等の固定支出は毎月同じ数字です
ビサイダー
そのほかに数字が変化する科目はありますか?
原田社長
弁当の製造数増加に伴って工場のライン稼働率が上がると、その分の水道・光熱費や、原材料仕入費の支出割合が増加します。さらに、野菜の価格上昇や小麦や油脂類の値上げも、今後の原材料費増加分として見込まれる部分です
原田社長
そうですね、弁当に欠かせない包装資材のフィルムやプラスチックも原油高騰に伴って値上げされますが、当期にはさほど影響はないと思います。とはいえ、来期は支出が増加することは確かです
原田社長
今年10月から大分県の最低賃金が約3.7%上がったため、人件費の支出割合はこれまでより増えることになります
こうしたやりとりの末、当期(見込)決算が「月次経営計画シミュレーション」上に示されたのですが、その内容は以下の2つを示唆する内容となりました。
・長期化したコロナ禍の影響によって、依然として経営状況は厳しい状態にある
・数値的に見て、キャッシュフローについても早急な対策が必要とされる
ビサイダー
当期は固定資産の売却等でしのいできましたが、回復基調を継続するために課題を洗い出し、そこから来期に向けた施策を考えていきましょう
課題から見えてきたのは、想定外の“誤差”だった!
10月の勘定科目の見込額を整理・確認する過程で、
来期において「水道・光熱費」「原材料仕入費」「人件費」の“3大支出”が、全体の支出割合を大きくしめることが判明。
この段階で、来期の支出増加分が売上を圧迫することが明確な課題として浮き上がってきたため、
“3大支出”がしめるキャッシュアウト分を軽減・相殺するべく、早急な対策を打つ必要性が明確になったのです。
さらにそこから、当期の決算内容をベースに来期の資金計画(損益)をシミュレーションしたところ、以下の2点の数値が示されることに…。
・〈シミュレーション予測1〉保守的に見ても、対前期比 約1300万円の支出増が見込まれる
・〈シミュレーション予測2〉予測1が現実のものとなった場合、翌期末の現預金残高が、当初の想定よりも800万円少ない結果となってしまう。
厳しい予測結果を前に、原田社長は驚きの表情でこう言葉を継ぎます。
原田社長
実は、コロナ禍で売上が減少した当期より、来期は若干ながらの売上増を見込んでいました。さらに新規に設定した当座借越枠で当面は資金繰りをまわせるとも考えていました。
ところが、予想とは異なる厳しい予測が示されたことに危機感を抱かざるを得ませんし、売上促進とコスト削減の両面から、早急に対策を練る必要性を痛感しています。
それにしても、スピーディに数値が出てくる便利さにも感心しましたが、何より、私の見込みとシミュレーションが弾き出した数字の違いには、ただただ驚かされるばかりです
来期の資金計画(損益)シミュレーションが示した数字を現実のものとしないために、さまざまな改善策の必要性を痛感した原田社長は、新規事業についても「慎重に進めていきたい」と語り、4つの施策を挙げてくれました。
“3大支出”を軽減する、コスト削減に根ざした4つの施策
今期と比較して来期の支出割合がかさむ「水道・光熱費」「原材料仕入費」「人件費」の3大支出。回復基調を維持するには、支出割合の約半分を占めるキャッシュアウト分をいかに軽減してくか…といった、多面的な「コスト削減」が来期の大命題になってきます。
とはいえ、いかにしてコストを削減していけばよいのでしょうか。
そこで「原価・仕入れ管理」「売上促進」の2方向に根ざした4つの施策を、原田社長は打ち出すことに。
この4つの施策をどこまで実行できるか…。
施策によって、どこまで支出を抑えることができるか…。
この2点が来期を乗り越える大きなカギとなることは間違いないでしょう。そして何より、来期の経営戦略ともなる方向性を見出せたことこそが、第1回のセカンドオピニオンの最大の収穫といえるのではないでしょうか。
ミーティングの最後には、新たな施策の実行に向けて意欲を示す原田社長から、「まずは今ある商品アイテムを整理しながら、原価率を下げる施策に取り組んでいかなければなりません。
それだけに限らず、あらゆる面からスピード感をもって課題を改善しながら、PDCAサイクルをまわすことで回復基調を継続していきたいと思います」といった熱意に満ちた意気込みも語られました。
今回のPOINT!
(ビサイダー 岡氏)
・支出割合の大きな固定費を3項目程度に絞り込んでKPIとして設定。その進捗を今後はモニタリングしていきましょう。
・部門別に原価管理を掘り下げていきましょう。
・早めに予測を立て、先手先手でキャッシュフロー対策をしていきましょう。
社長のなかにある「今期決算着地イメージ」「来期利益イメージ」「来期資金繰りイメージ」に対して、セカンドオピニオンの岡先生(ビサイダー)がどれだけ短時間で、このイメージを共有できたか?…がポイントでしたね。
ほぼ初対面のお二人が、出会って1カ月目で現実的な来期イメージを共有できるスピード感は、「bixider経営支援プロジェクト」だからこそできたことなのかもしれませんね。
活用するbixidの機能
有限会社まるみや
大口ユーザーをもつ地域密着優良企業として、「食」を通した幅広い事業を展開。自社製造工場を持つ利点を生かし、老舗ながらも、新規サービスなどの事業拡大に意欲的に努めている。
代表取締役:原田 政直
本社所在地:大分県大分市
創業:1931年5月(昭和6年)
従業員数:約50人(本社・スーパー・工場)
事業内容:仕出し、弁当・惣菜製造・小売