原価率の掌握が、
“高利益”変革への第一歩に
有限会社まるみや ✕ bixider 岡憲一郎税理士
20220525有限会社まるみや
有限会社まるみや原田社長と岡憲一郎税理士(以下ビザイダー)がタッグを組む「bixider経営支援プロジェクト」の第2回目は、今回も大分と香川を結んで行われました。
今期決算が確定し、本社と部門別の売上、商品ごとの原材料費率等が出揃った第2回目は、来期を見通す第一歩として「原価率」に注目。以下のTASKで進められることになりました。
〈TASK1〉「本社」と「部門(店舗)」が扱う商品の「売上」「原材料費率」「粗利率」の概算を割り出していく。

〈TASK2〉回転率が高い弁当・寿司・惣菜等の原価率をモニタリングしながら粗利を把握し、利益率の高い商品開発に取り組む風土を醸成していく。
ときに売上を圧迫する原価率は、細分化された短期消費商品を製造・販売する経営者にとって共通の課題ともいえます。しかし、原価率を突き詰めていけば、経営を俯瞰する視点が養われ、確実に利益を積み重ねることも可能になるのです。
経営計画

今回活用したbixidの機能

単年(月次)経営計画シミュレーション
※当画像はサンプルデータです。
企業経営のPDCAを支える「計画」をスピーディに作成する機能が「経営計画」です。
単年・月次で予算を作成する「単年月次計画」と、年次で予算を作成する「中期年次計画」を併用することによって、数値計画とそれに対する行動計画を作成できるこの会計ソフトは、複雑な経営計画を高精度に単純化するとともに、売上をベースに、固定費や変動費を昨対ベースで瞬時に作成できる点が魅力です。
また、売上:経費の比率が季節によって変動する場合も、季節指数で自動計算。慣れれば15分で作成できる6つの自動作成機能のほか、部門単位や店舗単位での作成も可能です。

数百円の商品が多い企業の生命線は、原価率

「10月終盤から大口の注文が入ってくるようになりましたし、2022年年明け分の大型案件も数件入ったことで、コロナ禍からようやく脱出できるのではないかという希望を抱いているところです。ただ安心してはいられませんので、決算が終了したいまこそ新たな取り組みにスピーディに着手していきたい」とミーティングの冒頭で話すのは、有限会社まるみやの原田政直社長です。
すでにご紹介の通り、大分県を主戦場とする有限会社まるみやは、自社工場で製造した弁当・寿司・惣菜等を販売する老舗仕出し企業であり、取り扱う商品柄、原価率が売上や利益率を左右する重要な指標となります。
そこで今回、まるみやのビサイダーを務める岡氏は、同社の売上促進強化に向け、「原価率」を精査する方向性を打ち出し、弁当や惣菜の「原価率」を一つひとつモニタリングしていくことにしました。
すると早速…。
自社店舗で販売する商品それぞれの「本体価格」「原価」「原価率」が一覧化された表をリモート共有していったところ、販売価格に対し、多くの商品が30〜40%の原価率にとどめられていることが確認されました。
有限会社まるみや 原田社長
原田社長
売価を100とした場合、原材料費、人件費等その他の原価あわせて約60%の原価率を目安に商品を販売していまして、弊社では粗利を約40%確保するイメージで商品作りに取り組んでいます
〈店売り商品原価(材料仕入)一覧〉の表にズラッと並んだ「幕の内弁当」「関東風すきやき弁当」「棒寿司」「ポテトサラダ」「さばの山椒煮」「ふきの煮物」「玉子焼き」etc.の品目を見ながら原田社長は話します。
岡憲一郎税理士事務所
岡憲一郎税理士事務所(以下 ビサイダ―)
原価率は非常に細かい数字になるため、算出するのはご苦労が多いと思いますが、数百円の商品を数多く取り扱っているまるみやさんにとっては、これが生命線ともいえる重要なカギになります。だからこそしっかり突き詰めて、来期の利益を確実に積み上げていくお手伝いしたいと思っています。
このビザイダーの言葉は、顔合わせの際に「因数分解のレベルで財務上の数字を顕在化させたい」と言っていた原田社長の思いを受けてのもの。さらに、ミクロレベルでの原価率を把握することが、企業が成長する強いエネルギーになるという思いも込められた言葉といえるでしょう。

誤差を解消し、さらに数字を細かく詰めるために

有限会社まるみや 原田社長
原田社長
損益を二分する材料仕入費(原材料費)の上限ラインを超えてしまうと利益が見込めなくなると認識しています。さらに、材料仕入費に加えてその他の原価が上乗せされるため、実質的な原価率はそれよりも高く、それを考慮した適正な粗利を確保したいですね
ところが、bixidのシステムに入力された「本体価格」「原価」「原価率」から割り出された原価率の平均値は社長の認識よりも数パーセントの差異を示すことに。
原価率への認識の差異は、ときに売上次第によっては数百万円、数千万円の利益の誤差につながるため、ビザイダーは「材料仕入費をより正確に突き詰めていく必要性がある」と原田社長にアドバイスし、以下の2つの提案がなされたのです。
【提案①】
まるみや本社の「卸売」「外注」はもとより、スーパーや百貨店内の自社店舗すべてで扱う商品(弁当・寿司・惣菜等)の材料仕入費をより正確に精査していく。
【提案②】
百貨店内の店舗で売れなかった商品の廃棄分や、閉店間際に価格を割り引いて販売する「ロス高やロス率(販売額×廃棄した個数)」を反映することで、KPIをより厳密に設定する。
例年であれば、プロサッカーチームへのまとまった仕出しをはじめとする定期的な大型案件によって売上が下支えされていたまるみやですが、コロナ禍でそうした受注案件が減少し、大きな打撃を受けることに。しかし、老舗企業の信頼と実績から、ふるさと納税のおせちなどで売上を伸長するなど、コロナ禍の荒波のさなかで舵をとってきた原田社長。
「少しずつながら、プロサッカーチームやBtoBの小口取引などの取引状況も回復傾向にありますし、Go To トラベルが再開すればJTB等からの受注再開にも期待が寄せられます」と話しつつ、「古くからの取引先が戻ってきてくれているいまこそ、自分たちから動くべき」と意欲を示します。

コロナ禍からの脱出は、体質強化への転換期に

コロナ禍のなか、苦しい経営を乗りきった原田社長の言葉を受け、ビザイダーは言います。
岡憲一郎税理士事務所
ビサイダ―
まるみやさんの売上構成を見ますと、やはりお弁当や惣菜が高い割合をしめていますので、原価率を突き詰めることが利益の掌握につながります。さらに今後、大口取引先からの受注が戻り、工場のラインがフル稼働したときに、いままでとは違う目線での商品作りも必要ですね
有限会社まるみや 原田社長
原田社長
そうですね。弊社では2000円、3000円の高級弁当も取り扱っていますが、主力は数百円から1000円ほどですので、主力販売帯の弁当にしめる材料費率を計算・管理することで、利益を着実に積み重ねていきたいと思っています
有限会社まるみや 原田社長
原田社長
これまでは、弁当の製造スタッフが原価を感覚的にとらえている傾向にありましたが、最近は新商品の企画時に、おかずのラインナップや味付けに加えて原価率も示した企画書を作る取り組みを社員自ら行ってくれています。もちろん、お客様に喜んでいただける弁当作りがいちばん大切ですが、その一方で、利益率の高い弁当作りにチャレンジする風土の形成もとても大切です。もちろん、一気に社員の意識を変えるのは難しいので、インセンティブなどの仕組みを通して、社員の思いに応えていきたいですね
20220525有限会社まるみや
原田社長の言葉通り、現場スタッフが自ら原価率を考えたうえで“ものづくり”に取り組めたあかつきには、自然と現場から利益は積み上がっていくことでしょう。
有限会社まるみや 原田社長
原田社長
こうした社員育成と意識転換の取り組みと並行して、労働分配率の観点から作業手順、生産性を高める具体的な行動指標も構築していきたい
岡憲一郎税理士事務所
ビサイダ―
今後、景気が好転すれば数字が上振れする可能性もありますので、いまは原価率の“見える化”に注力しながら、成長軌道に乗れるようにしていきたいですね。一緒に頑張りましょう
——第3回目のミーティングでは、歩金や家賃などを積み重ねた詳細な事業計画を策定する予定です。大分の人々を支える老舗仕出し企業まるみやが、どのように成長し、さらに愛される企業としてどう変貌していくのか、次回もお楽しみに!
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今回は原価率にスポットを当てたミーティングになりました。お弁当、お惣菜において相当な数の商品があり、それらの想定原価が商品ごとに細かく設定されていますが、全体的な原価率利益率を示すものが不足していました。社長の中には目標としている原価率(利益率)と毎月集計される実績数値との差を以下になくしていくか?が今後のまるみやさんにとってのKPIになっていくのではないかと確信できたミーティングでした。
活用するbixidの機能
有限会社まるみや
大口ユーザーをもつ地域密着優良企業として、「食」を通した幅広い事業を展開。自社製造工場を持つ利点を生かし、老舗ながらも、新規サービスなどの事業拡大に意欲的に努めている。
代表取締役:原田 政直
本社所在地:大分県大分市
創業:1931年5月(昭和6年)
従業員数:約50人(本社・スーパー・工場)
事業内容:仕出し、弁当・惣菜製造・小売