2022.08.03
精度を上げるため、
細かな数字をアジャストメント
株式会社ベストウェル × 大阪総合人財経営株式会社
ベストウェル(兵庫)の代表取締役 西川弘氏と、bixider(以下ビサイダー)の大阪総合人財経営 代表取締役 佐藤充氏を結ぶオンラインミーティングは、いよいよ第5回目に。
これまでは、bixid(ビサイド)をもとにしたビサイダー・佐藤代表のアドバイスにより、今期を俯瞰するコツや、複数事業所(高齢者施設等)別の数値を的確に把握する手立てを学んできた西川社長。
すでにご紹介の通り、医師と経営者の二足のわらじによって、細かな数字にまでなかなか目が行き届かないと自省気味に話していた西川社長ですが、4回のミーティングを経た現在は、ビサイダーに鋭い質問を投げかけるまでに…。
プロジェクトの最終コーナーに突入した今回は、第24期(2021年11月〜2022年10月)のランディングポイントを確実にするため、ビサイダーと細かい数字の調整がなされました。その過程で、増床工事が始まった事業所について、中長期の視点で留意すべき借入金に関するアドバイスも。
複数の事業所を束ねる経営者や、新規事業所の開設を考えている経営者にとって必読ポイント満載のミーティングの模様を、早速リポートしましょう。
今期推移を確認するうえで顕在化した、経営リソースの活用法
大阪総合人財経営 佐藤(以下ビサイダー)
今回でもう5回目ですね。今日もお願いします
西川社長
bixidに11月から4月までの実績値を入力したことで、第24期決算の半分が確定し、今期の状況がかなり見えてきました。ここまでありがとうございました
ビサイダー
私のほうでも4月までの実績値を確認しましたが、今期は順調に推移していますね。そのなかで一点確認ですが、損益推移表の2月の営業利益が若干のマイナスになっています。これは他月と比較して2月の日数が少ないことから保険収入が減少するためですね?
西川社長
はい。それに加えて、一部の施設で4名ほど利用者様が退去されたことも数字に反映されていると思います
西川社長
ベテランのケアマネジャーが60歳を越え退職することになりました。その方が担当する利用者様は40人ほどいらっしゃるのですが、後任がなかなかみつからないため利用者様を減らしたことで、今年5月からは介護保険収入が半分ほどになり、6月以降はさらに減収します
ビサイダー
後任の方が早くみつかるといいですが、もしみつからない場合どうなりますか?
西川社長
そのケアマネジャーがいる事業所の継続が難しくなるので、近隣の居宅介護支援事業もしくは包括支援センターに、利用者様のケアを引き継いでいただくことになります
ビサイダー
どの高齢者施設でも慢性的な人手不足が経営課題になっていますので、計画的に人材を育成し、ベテランの方が辞められた後にその仕事を滞りなく引き継げる人材の育成も大切ですね
西川社長
つねづね若い人を入れて新陳代謝を図りたいとは思っていますが、新卒採用がうまくできていませんし、いま働いているスタッフもかなりの業務量をこなさなければならないため、新人や後輩の育成にまで手がまわらない状況にあります。最大の経営資源である“人”に対する課題の解決に、今後は早急に取り組んでいきたいと考えています
科目ごとの経過累計も
西川社長
さらに大きな変化として〈既存のグループホーム〉の増床工事が予想以上に延びていて…。この変化は、今期の数字にダイレクトに反映されることになります
ビサイダー
当初の計画では9月オープンでしたので、今期終盤の見込値として前年×180%の見込みで売上計画を立てましたが、その数字が変わるのですね
西川社長
今のペースでいくと工事は今年いっぱいかかり、オープンは来年に持ち越します。そのため今期10月決算分の数字に変化がないことになります
ビサイダー
コロナ禍で建築資材が入手しづらくなっていることも要因なのでしょうね。ではここから、そのほかの事業所の数字の推移も見ていくことにしましょう
こうして、11〜4月の6カ月分の実績値と、残り半年分の見込値が入力された損益推移表をPCの画面上で共有しながら、ビサイダーから適宜質問が投げかけられていきます。そして、ミーティングのほぼすべてがこの作業に費やされることになりますが、確認作業の途中で西川社長から以下のような質問も。
西川社長
支出にある〈一般販管費〉と〈戦略販管費〉の違いはなんですか?
ビサイダー
一般的会計ではどちらも〈一般販管費〉でくくられます。ただ、支出にかかるすべての勘定科目がズラッと並んでいると細かな部分まで目が行き届かなくなる恐れがありますので、外注加工費などの大きい支出分の科目が売上に直結する企業であれば、外注加工費を〈戦略販管費〉に組み込むことで、すぐにその数字を認識できるメリットがあります
西川社長
弊社の場合は、比較的金額が大きい地代家賃、管理諸費、備品消耗品費の3科目が〈戦略販管費〉に組み込まれているのですね
ビサイダー
そうです。3つの勘定科目で構成された〈戦略販管費〉と、それ以外の細かい支出をまとめた勘定科目の総額は実は同じ割合です。よって、大きな支出分で構成された〈戦略販管費〉の数値を把握することがすなわち、キャッシュアウト分の半分を把握することになります
西川社長
〈戦略販管費〉は企業によって科目を自由に選択できるのですね?
ビサイダー
はい。業種や業態によって自由に科目を選択できます。これはつまり、売上に直結するキャッシュアウト分の“見える化”ということですね
運転資金を借り入れする際に必須の、経営シミュレーション
ビサイダー
〈既存のグループホーム〉のオープンが延びたことで、来期の保険収入の変化の見込みはどのようになりますか?
西川社長
オープンから3ヵ月経った時点で満床になるのが通例ですので、1月オープンであれば4月くらいにフル稼働すると考えています
西川社長
はい。利用者様が増えれば、その分のスタッフが必要になりますので、来期は給与手当等も変化します
ビサイダー
〈既存のグループホーム〉の運転資金の調達は順調ですか?
西川社長
実は、数日後に銀行で話をする予定なのですが、現時点では銀行側から〈今回の運転資金の借入は土地建物を担保にせず、信用保証協会の保証を使って無担保で3000万円の資金調達が可能〉と言われています
西川社長
据置期間がない10年で金利は1.5%だったと思います
ビサイダー
3000万円を借り入れると金利も含めざっくり年間320万円程度の返済になりますが、これまでの借入金を含めた全体的なことを考えますと、月30万円弱の元利返済はそれほどの負担ではないと思われます。でも、返済額は少ないに越したことはないので、金利についてきちんと相談されてみてはいかがでしょうか
西川社長
そうですね。私としては土地建物を担保に借入するつもりでしたが、〈既存のグループホーム〉が幹線道路や駅から離れた場所にあるため与信的に厳しいのかな…と
ビサイダー
コロナ禍前までは与信的に厳しい会社に対して信用保証協会を使うことが一般的でしたが、最近の融資の全体的傾向として、銀行さんが貸したい先に保証協会をつけて信用で融資する傾向が強まっています。あわせて、据置期間は無くても10年での返済というのは月の返済負担に無理がないので、いいお話だと感じます
西川社長
そうですか。そう言っていただけると安心です
ビサイダー
まずは銀行さんとお話しされる際に金利の交渉をきちんとすることが大切です。1.5%であれば従来通りの3000万円を借り入れ、1.2〜1.3%であれば3500万円の借り入れを検討したいと交渉してみてはいかがでしょう。もし金利を下げてもらうことが可能で、借入額も3500万円に増やすることができた場合、おおよその計算で月30万円弱を年間12回で返済するところが、13回に増えるイメージになります。返済額は増えますが、この程度であれば従業員が一人増えた感じにとどまるため、それほどの負担増ではないかと
西川社長
そうですね。一人分の給与という感じですね。まずは金利と借入額について銀行さんと交渉し、どうするかを決めなければなりませんね
ビサイダー
そのほかにもいくつかの考え方があります。例えば、今回のようにある程度のまとまった融資を受けられるときは、借入のなかで1年以内に返済が終了するものをまとめて返済してしまうことで、トータルの返済額を抑えることも可能になります
しかしながら、金利は低いほうがいいとはわかっているものの、金利と照らし合わせながら返済額を見越し、借入額を調整・判断していくことはなかなか難しいといえます。多くの経営者に共通するこうした悩みに対し、ビサイダーは次のようなステップを提案します。
ステップ1……「現時点での自社借入の全体像を把握する」
ステップ2……「運転資金として新たにいくら必要かを正確につかむ」
ステップ3……「金利によって借入額を変化させた際の、返済シミュレーションを立てる」
ステップ4……「返済インパクトが大きい場合、借入分から他借入分を一括返済する」
ステップ5……「3〜5年後に、自社の負債がどれだけ減るかをシミュレーションする」
ステップ6……「負債減少に伴い、自己資本がどう変化するかをシミュレーションする」
新たな借入を行う際にこうしたステップを踏むことが健全な借入の必要最低限の条件であり、その後の返済が負担にならないベストな方法となります。
銀行との交渉によって金利、借入期間、借入額、月の返済額がどのように決まったのでしょうか。気になる経営者の方も多いと思いますが、ぜひ銀行から借入する際の参考にしてみてくださいね。
今回のPOINT!
・技術承継の重要性を再度確認
・コロナ過の影響で銀行の貸付基準が変化している
・借入金前の6個のステップ
売上に関しては未来の計画を立ててもその通りに行かないことが多々ありますが、借入金に関しては借りた時点から100%未来の返済額が確定しています。確定している未来を事前に見える化(シミュレーション)することで、最低限必要な売上&利益(資金分岐点)を把握できるようになります。 攻めの経営を行うために資金調達は必要不可欠ですが、同時に未来の返済額の見える化も行いましょう。
活用するbixidの機能
株式会社ベストウェル
兵庫県内に高齢者向けの介護施設を多数展開し、地域に密着した質の高い介護サービスを提供。企業理念は「誠実さと思いやり」「心と体への貢献」「従業員の幸福と社会への貢献」
代表取締役:西川 弘
本社所在地:兵庫県神戸市
創業:1999年
事業内容:介護事業・グループホーム運営・サービス付き高齢者住宅