経営状況を客観的な視点で評価し、
確信をもって次なる一歩へ
西日本食品工業株式会社 ✕ 税理士法人アイ・パートナーズ
20220518西日本食品工業
​西日本食品工業株式会社の長田和也社長と、税理士法人アイ・パートナーズの山田諭氏、石渡康二氏(以下ビサイダー)がタッグを組む「bixider経営支援プロジェクト」。その第1回定例ミーティングが、2021年12月初旬、熊本と横浜を結ぶオンラインで実施されました。

1950年創業の老舗食品メーカーを継ぐ3代目として、伝統の味と技術を守りながら、時代に即したネット通販や新商品の開発にも取り組む長田社長。そうしたなかで「現状の実績の妥当性を客観的に把握したうえで施策を立て、安心感と確信をもって経営に携われるようになりたい」と、前回のキックオフで語りました。

これを受けて今回のミーティングでは、bixidの「月次経営計画シミュレーション」に入力した前期・今期(2021年2月~2022年1月)のデータをモニタリングしながら、以下2項のTASKを軸に進めていくことになりました。

〈TASK1〉 今期11月までの実績値と12・1月の目標計画をもとに、ポイントとなる科目をチェックしながら、現時点の経営状況と今期決算の着地点(見込)を確認

〈TASK2〉 TASK1を進めるなかで、今後の方向性や改善点などを把握し、次回の来期計画に向けたアプローチを導く

また、ミーティングの最後には、長田社長が就任当初の辛い体験から奮起し、経営の立て直しに全力で取り組んできた思いを語り、ビサイダーが感極まって目頭を押さえるシーンも。

そんな“涙あり・笑いあり”のドラマチックな展開となった、第1回定例ミーティングの様子をお届けします。
経営計画

今回活用したbixidの機能

単年(月次)経営計画シミュレーション
※当画像はサンプルデータです。
企業経営のPDCAを支える「計画」をスピーディに作成する機能が「経営計画」です。
単年・月次で予算を作成する「単年月次計画」と、年次で予算を作成する「中期年次計画」を併用することによって、数値計画とそれに対する行動計画を作成できるこの会計ソフトは、複雑な経営計画を高精度に単純化するとともに、売上をベースに、固定費や変動費を昨対ベースで瞬時に作成できる点が魅力です。
また、売上:経費の比率が季節によって変動する場合も、季節指数で自動計算。慣れれば15分で作成できる6つの自動作成機能のほか、部門単位や店舗単位での作成も可能です。

ほぼ想定通りの結果となった今期の決算予測

アイ・パートナーズ 山田
アイ・パートナーズ 山田(以下ビサイダー)
今回のミーティングでは、残り2ヵ月(12・1月)となった今期の決算予測と、経営面の現状把握という点をメインに進めていきたいと思います。
すでに長田社長から12・1月の売上目標をご提示いただきましたので、そちらも参考にしながら、私どもでbixidの今期決算計画(見込)を作成してみました。ポイントとなる科目を画面で共有しながらご確認ください
こうして、ビサイダーが今回の趣旨を説明したのち、いよいよ支援プロジェクト第1回の定例ミーティングがスタートしました。
まず、ビサイダーは現状把握という観点から、今期11月までの経営状況をbixidの収益ダイジェストでモニタリング。その分析結果として、以下の2点が現時点の評価として導かれました。
●当初の計画より売上はやや減少しているが、損益分岐点売上高は約36%上回っており、利益は十分に確保できている
●固定費と比べて限界利益が大きく上回っており、最終利益も安定して確保できている
続いて、今期12・1月の売上と諸経費を暫定的に設定し、長田社長と各科目の詳細を確認・調整しながら、今期の最終的な決算予測を実施しました。
ここでは長田社長が提示した12月の売上目標が、ビサイダーの予測を超えていたのですが、「毎年12月は年末需要で食品の動きが活発になるので、売上目標も大きく設定してみた」と長田社長が説明。そうした季節変動を考慮し、長田社長の目標値をそのまま生かして今期決算の着地点を導くことに。
その結果、今期の売上高・限界利益・営業利益・経常利益は、前期とぼぼ同水準の実績が見込まれることがわかりました。
この結果について長田社長は「現時点の評価も今期の着地点も、ほぼ想定していた通りの数字でひと安心しました。大きく落ち込むとは思っていなかったものの、こうして明確な数字が示されると、やはりほっとしますね」と安堵の表情でコメント。
これを受けてビサイダーも「今回、棚卸の動きを細かく見ていないため、最終的には数字に多少の誤差が生じるかもしれませんが、原価のコントロールもしっかりされていますし、在庫状況で利益率が大きく変わってくることはないと思います。
ひとまず、今期の着地点が長田社長のイメージに近い数字となり、私自身も安心しました」と感想を語りました。

ビサイダーが感嘆した資産状況と的確な経営判断​

さらにビサイダーは、前回のミーティングで長田社長が示した < 自己資本比率70% > の数値目標を受け、貸借対照表とキャッシュフローをもとに、会社の資産状況をモニタリング。すると、ビサイダーが感嘆するほどの数値結果(以下参照)が得られました。

●今期末時点の純資産は、今期スタート時と比較して10%弱増加し、自己資本比率は約44%を確保
●現在の総資産を維持しながら、同じペースで利益を積み上げていけば、7~8年後には目標の < 自己資本比率70% > を確保できる可能性も
アイ・パートナーズ 山田
ビサイダー
一般的に自己資本比率が30~40%以上なら安定企業とされていますので、この数字は非常にすばらしいです。しかも着実にジワジワと微増している。これまで工場の設備投資なども行いつつ、実績を上げるなかで少しずつ蓄えてこられたのでしょうか
西日本食品工業株式会社 長田社長
長田社長
長年、建物の改修や設備投資の必要がなかった、投資しなくて済んだというのが大きいかもしれませんね。とはいっても、最近は工場の老朽化も目立ってきましたので、今後は建物や設備への大きな投資も必要になってくると思います
アイ・パートナーズ 山田
ビサイダー
そうした今後の投資については、次回以降の中期計画作成のポイントにもなってきますので、自己資本比率への影響や資金繰りなどを含めて、一緒に考えていきましょう
こうして、今回のTASKを通して良好な数字が得られた一方で、ビサイダーは1点の懸念材料を指摘。それは、長田社長が取引先とのやりとりで「手形」を利用していることです。そのデメリットとは…
20220518西日本食品工業
ただ、こうした手形のデメリットは長田社長も十分認識しており、支払手形は来期2月から廃止、受取手形も取引先と相談しながら、早いタイミングで廃止する方針を示し、ビサイダーの懸念を一掃。
さらに長田社長は、現状の利益がより明確に把握できるよう、毎日の在庫状況が確認できる管理システムを今月から導入するなど、経営の見える化に向けた施策を少しずつ実践していると明かしました。
これについてビサイダーは「すでに社長ご自身で、いろいろと動き始めていらっしゃるんですね。さすがです!」と称賛しました。

長田社長の鋭い経営感覚は、いかにして養われたのか?

そしてミーティングの終盤、ビサイダーはあらためて長田社長にこんな質問を投げかけました。
アイ・パートナーズ 山田
ビサイダー
長田社長は経営に対するリテラシーが非常に高く、会社の数字なども完璧に把握されていますが、そうした鋭い経営感覚や財務管理のスキルは、どのようにして養われたのでしょうか。差し支えなければ、ぜひお聞かせください
すると長田社長は「いやいや、そんなに鋭くないですよ」と笑いつつ、真剣な表情に転じてゆっくりと語りはじめました。
西日本食品工業株式会社 長田社長
長田社長
じつは、私が会社を引き継いで社長に就任した初年度は、前年度の営業損失を受けて、かなり経営が厳しい状態だったんです。そんな状況で初年度の申告をしたときに、金融機関の担当者から『新社長の能力、大丈夫ですかね?』みたいな態度で対応され、もう涙が出るほど悔しくて…本当に辛かったですね。
でも、そこで腐っていてもなにも変わりませんから、『絶対に経営を立て直して見返してやる!』という気持ちで奮起し、経営や財務について猛勉強を始め、現在に至ったという次第です
そんな長田社長の体験談に耳を傾けながら、思わず目頭を押さえるビサイダー。
アイ・パートナーズ 山田
ビサイダー
そんな背景があったのですね。すみません、ちょっと涙腺が緩んでしまって……(泣笑)。そうした辛い体験を原動力にして、ひたすら前向きに進んでこられた長田社長の姿は、きっと多くの経営者の方にも勇気を与えられるんじゃないかと感じました。私も長田社長とともに、時には悩み、時には喜んだりしながら、全力でサポートさせていただく機会を頂戴して、心からうれしく思っています
西日本食品工業株式会社 長田社長
長田社長
こちらこそ、山田先生という頼れる仲間ができて、本当に心強いかぎりです。とくに来期は原料費の大幅な値上がりが予想されますし、顧客開拓の営業活動も強化していきたいと考えていますので、どのような手を打っていけばいいのか、いろいろとご教授ください。次回も楽しみにしております!
こうして第1回のTASKを進めながら、お互いの絆を深めた長田社長とビサイダー。
鋭い経営感覚をもって事業に取り組む3代目社長と、その思いを全力で支援する税理士のタッグが、今後どのようなチームプレイで結果を積み上げていくのか──
次回からのプロジェクト展開にも、どうぞご期待ください!

今回のPOINT!

(ビサイダー 山田氏)
・引き続き、原価のコントロールをしっかり行っていきましょう
・受取手形は、できるだけ受け取らない方がいいでしょう
・支払手形に頼らない運転資金の見える化を目指しましょう
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今回話題に上がった手形取引は、この機会に是非とも見直すべき内容です。手形は資金繰りを楽にしてくれる一方で、万が一不渡りを2回起こしてしまうと「銀行取引停止」という非常に厳しいペナルティが与えられます。
過去の商慣習から使用を続けていても、資金繰りに余裕があればできる限り手形は廃止すべきです。
今回の社長の決断が今後どのように資金繰りに影響するのか、ウォッチしていきたいと思います。
活用するbixidの機能
西日本食品工業株式会社
「食で命を育み、子どもたちの明るい笑顔を世界に広げる」を企業理念に掲げる、1950年創業の老舗食品メーカー。主力商品の春雨は、中国に古くから伝わる製法にこだわり、その伝統の技と手作りの味を守り続けている。
代表取締役:長田 和也
本社所在地:熊本県熊本市
創業:1950年
事業内容:春雨や粉物などの食品製造・輸入・販売