2022.08.17
“過去を整理”する会計から、
会社の“未来を考える”会計へ
有限会社まるみや ✕ bixider 岡憲一郎税理士
桜の開花の便りが届く卒業シーズンに実施された、有限会社まるみや ✕ bixider(以下ビサイダー)岡憲一郎税理士の「bixider経営支援プロジェクト」。
6ケ月にわたってオンライン上の定例ミーティングの密着取材を行ってきました。まるみやさんへの岡ビサイダーの経営支援は以後も引き続き進みますが、密着取材の最終回は、2022年11月に迎える当期決算を見通すとともに、これまでの取り組みを振り返ることに。
数字に追われるのではなく、戦略的に未来の数字を創っていく経営の醍醐味を実感したことで、初回時と比較して表情に自信がみなぎる原田社長。その一方、ビサイダーとしてまるみやの伴走者をつとめている岡憲一郎税理士も、「財務のプロとしてのテクニックを活かし、強い企業体質を構築する会計サービスを提供していきたい」と気持ちを新たにします。
両者は今プロジェクトにどのような感想を抱いたのでしょうか。密着取材最終回の模様をリポートします。
淀んだ水をスムーズに流す方策を、具体的に考えられるように
原田社長
思えば、コロナ禍で大きなイベントがほぼ中止になったことでお弁当の注文も激減し、苦しい時期が長く続きましたが、いまは少しずつお弁当や仕出しの売上が回復傾向にありますので、今後はこのプロジェクトで学んだことを活かしながら、ぜひとも当期は黒字で着地したいと思っています
岡憲一郎税理士事務所(以下 ビサイダー)
イベントなどのお弁当の大型注文は増えてきていますか?
原田社長
各種団体や組織の会合は温泉での慰労を兼ねて大分で実施されることが多いのですが、1000名以上の方が全国から集まるシンポジウムの開催も春先に決まり、それに伴って大型のお弁当の注文も入っています。本当にありがたいですね
そう笑顔で話す原田社長。このレポートでもご紹介してきた通り、“お客様に喜ばれる良質な商品の提供”に努めてきたまるみやは、90年にわたって大分の人々に愛され続ける老舗仕出し企業です。
原田社長
お客様に愛される商品をという一途な思いでたくさんの商品を開発してきましたが、お恥ずかしいことに、これまでの私はそろばんよりロマンばかり追いかけてきたのかな…と(笑)。でもこのプロジェクトに参加したことで、経営者にはロマンとそろばんの両方が必要だということがよくわかりました
ビサイダー
僕もたくさんの経営者とおつきあいがありますが、経営者の方って財務の“細かいところは担当者や税理士任せ”という方が多くて、原田社長のようにロマンを追いかける方が多いかもしれませんね(笑)
原田社長
以前の私はめがねなしで数字を見ていた感じで、細かい数字が多少ぼけやけていてもあまり気にせず、足下に水が淀んでいるような状態でした。でもいまは、淀んだ水をスムーズに流す方策を具体的に考えられるようになったことで、細かい数字はもちろん大きな数字の見方も変わり始めたんです
ビサイダー
僕自身もこのプロジェクトに参加したことで、経営者の方が困っていることや知りたいことを的確に伝える税理士としてのテクニックの必要性を再認識しましたので、後もまるみやさんの財務の伴走者として、売上を伸ばす手立てを一緒に練っていければと思っています
今プロジェクトの総括として、当期ランディング・ポイントを再確認
ともに得難い“果実”を手にした両者ですが、最終回は今プロジェクトの総括として、PC上で共有した損益推移表(2021年11月〜2022年10月の当期分)をもとに、当期決算のランディング・ポイントの確認が主要テーマに据えられました。
原田社長
当社のほうで2月までの実績値と、3月以降の見込値を入力しましたが、地代家賃、保険料、労務費、減価償却費等の固定分は迷いなく入力できた半面、原価率を勘案した売上見込値は、過去の決算書の数字と比較しながらあれこれ考えながら立てていったため、少し時間がかかりました
寿司、弁当、惣菜などの多様な商品を扱うまるみやにとって、全商品において一定の原価率を維持するには材料の厳選、仕入れの工夫、調理の効率化など、あらゆる面での工夫が必要とされます。そこで原田社長は、原油価格高騰の兆しが見え始めた2021年11〜12月に、価格上昇が見込まれる包装資材や長期保存が可能な材料をまとめて仕入れたそう。
さらに、海鮮系と揚げ油系の既商品の原価率が比較的高いことに着目したうえで、商品全体をブラッシュアップ。原田社長が中心となり、スタッフ全員で売上伸長を目的とした新商品開発にも意欲的に取り組んだと言います。
ビサイダー
時季商品や大型受注向けの弁当などの商品開発は、お客様の期待を裏切らないまるみやさんらしい豪華さとおいしさはそのままに、包装資材や原材料への工夫によって原価率を下げつつ、時季商品にも力を入れて売上伸長に努められるのですね
原田社長
はい。これからはイベントの開催も増えてきますので、どんな発注にも対応できるよう生産体制をしっかり整えていきたいと考えています
言葉通り、トキハ本店とトキハわさだタウン店の寿司コーナーには、すでに春らしい販売時期限定の商品がラインナップ。
一例として、春らしさを味覚・視覚で味わえる新商品の寿司は、大分県産のベリーツ(いちご)でごはんをほんのりピンク色に染め、海鮮の魅力をアレンジしたホタテとイカのマリネをトッピング。そのほかにも、節分には8種類の海鮮が入ったボリューム満点の「七福海鮮巻」や、ひな祭りには見た目にも鮮やかな「特別なちらし寿司」など、売り切れ必至の商品が店頭を鮮やかに彩っています。
スタッフとの会話の真ん中に、当たり前のように数字がある
ビサイダー
包装資材や長期保存が可能な材料を昨年にまとめて仕入れた関係から、11〜12月の原材料費率は上がっていますが、1・2月の原材料費の実績値は低く抑えられ、売上も対前年比30%ほどの伸び率になっています。これらの数字の動きを踏まえて今後8カ月で計画と実績がどう推移していくかをモニタリングしながら、誤差に対してどう修正をかけていくか…。これが当期モニタリングの重要なポイントですので、残り8カ月をしっかりモニタリングして着実に売上を積み増していきましょう
原田社長
はい。このまま見込値で順調に推移すれば当期は“黒”で着地することが見えてきましたので、いまはホッとした気持ちが大きいのですが、もし見込みとずれる数字が出てきたときは、スピーディに対策を練るなどして、残り8カ月の数字をしっかりモニタリングしていきたいと思っています
そして「bixider経営支援プロジェクト」最終回の締めくくりに、プロジェクトに参加する前の自分自身を振り返りつつ、原田社長は未来に懸ける思いも語ってくれました。
原田社長
決算は過去を整理するための会計ですが、これからはみんなで一緒に会社の未来を考え、数字を創っていくことに力を注いでいきたいですね。経営者である私は全体の管理者ではあるけれど、実際の数字を創っていくのは従業員なので、仕入れ担当や工場の製造スタッフが当事者意識をもって数字を立てていく風土を醸成したいな、とも思っています
ビサイダー
その風土が従業員の方にとって、まるみやさんで働いている誇りにつながりますね
原田社長
そうなるとうれしいのですが、bixidで数字を創っていく楽しさを知ったことで、ひとつ気づいたことがあるんです。それは財務や会計を難しく考えるのではなく、私と現場に立つスタッフが交わす何気ない会話の真ん中に、当たり前のように数字があればいいな、ということなんです。会社を成長させ、従業員が当社の一員であることを誇りに思える良質な数字って、私一人でジタバタしても限界があると思うのです。従業員と数字を真ん中に置いた会話を日常的に交わせる風土ができたら、自然と良質な数字は生み出されていくものではないかな…と
ビサイダー
経営者が孤軍奮闘するのではなく、スタッフや取り巻きが経営にかかわっていく風土を醸成することで、滞っていた水がスムーズに流れ始めるということですね
原田社長
はい。そうなれば本当にいいなと思っていますし、ぜひそうしたいとも思っています。それに、最初の頃は岡先生のアドバイスに、ただただうなずいてばかりの私でしたが、私のまわりでもbixidの魅力をまだ知らない経営者が多いので、もっと多くの方にこのような見やすいツールがあることを知ってもらいたいですね。bixidで数字を創っていく魅力を知ることは、経営の面白さを実感することにもつながりますから。とはいえ、私もまだ至らない点が多いと思いますので、岡先生これからも引き続きよろしくお願いします!
—— 経営のだいご味と楽しさを実感する原田社長が率いるまるみやは、一段高い次のステージに歩を進めているようです。その変化は、店舗にズラッと並ぶ弁当、寿司、惣菜等の商品にもきっと現れているはず。お客様に喜んでいただく良質な商品を…という創業以来の真摯な思いはそのままに、よりおいしく、より魅力を増したまるみやの商品を、みなさんぜひ一度ご賞味あれ!
仲人的な役割として私たちYKプランニングが当企画「セカンドオピニオンマッチングプロジェクト」を運営サポートさせていただきました。「経営のセカンドオピニオン」という存在一人でも多くの経営者に知っていただくため、まるみやさんと岡ビサイダーのやりとりに密着取材させていただきましたが、あっというまの6カ月間でした。これからは私たちの取材は終了しますがお二人の関係性はまだまだ続きます。また1年後にどのような結果になっているか是非ともお会いしたいと思っています!原田社長、岡先生ありがとうございました!
活用するbixidの機能
有限会社まるみや
大口ユーザーをもつ地域密着優良企業として、「食」を通した幅広い事業を展開。自社製造工場を持つ利点を生かし、老舗ながらも、新規サービスなどの事業拡大に意欲的に努めている。
代表取締役:原田 政直
本社所在地:大分県大分市
創業:1931年5月(昭和6年)
従業員数:約50人(本社・スーパー・工場)
事業内容:仕出し、弁当・惣菜製造・小売