前期の実績をベースに、
今期の売上予測をモニタリングする
有限会社まるみや ✕ bixider 岡憲一郎税理士
20220615有限会社まるみや
「bixider経営支援プロジェクト」の定例ミーティング第3回は、これまで同様に和やかな雰囲気のなか、大分と香川の遠距離を結ぶオンライン上で実施されました。
前期(2021年10月決算)の着地予測がすでに立ったことで、前回のミーティングからは今期を見すえた取り組みがスタート。弁当・寿司・惣菜の主力3カテゴリの原価をモニタリングしながら粗利を把握することで、利益を確実に積み重ねていく重要性を共有しました。

今ミーティングでは、bixider(以下ビサイダー)・岡氏の提案により以下のTASKに分け、店舗、商品カテゴリ別に精査した前期実績から来期の売上戦略を練っていくことに…。

〈TASK1〉店舗・商品カテゴリ別の売上、販売個数、平均単価を整理

〈TASK2〉商品ごとの単価、販売個数から課題を抽出

〈TASK3〉今期の売上を伸ばすための戦略を考える
経営計画

今回活用したbixidの機能

単年(月次)経営計画シミュレーション
※当画像はサンプルデータです。
企業経営のPDCAを支える「計画」をスピーディに作成する機能が「経営計画」です。
単年・月次で予算を作成する「単年月次計画」と、年次で予算を作成する「中期年次計画」を併用することによって、数値計画とそれに対する行動計画を作成できるこの会計ソフトは、複雑な経営計画を高精度に単純化するとともに、売上をベースに、固定費や変動費を昨対ベースで瞬時に作成できる点が魅力です。
また、売上:経費の比率が季節によって変動する場合も、季節指数で自動計算。慣れれば15分で作成できる6つの自動作成機能のほか、部門単位や店舗単位での作成も可能です。

商品の個別計数管理をもとに、来期事業計画に着手

大分県の老舗仕出し企業・まるみやの代表取締役 原田政直社長と、ビサイダーを務める岡氏は新年の挨拶を交わした後、原田社長はミーティングの冒頭で自身に訪れた変化を笑顔で披露してくれました。
有限会社まるみや 原田社長
原田社長
弊社は本社、店舗、外注、卸売などの販売形態があるため、これまでは売上の数字をふわっとした感覚で眺めていました。でも、ミーティングに参加したことで数字を見る目が変わっていく手応えを感じていて、ここ最近は1日5時間ほど財務や経営関連の書籍を読み比べする勉強に充てるようになりました
岡憲一郎税理士事務所
岡憲一郎税理士事務所(以下 ビサイダー)
それは素晴らしいですね。ぼやけていた数字がクリアになると、この数字はどうしてこうなんだろう?という問題意識も芽生えますし、そうした意識は経営力を高めるプラスのパワーにもなります。今回はそのパワーをより強化するため、店舗・商品カテゴリ別の売上、販売個数、平均単価を整理しながら、今期の売上戦略を立てていきましょう
早速、PC画面上に「カテゴリ別売上高」(右表)を表示したビサイダーは、「トキハ本店」「トキハわさだタウン店」で販売した月別の弁当・寿司・惣菜の販売個数と平均単価を示しつつ、必要に応じて別シートの「弁当類の納数と残数の内訳」(左表)に切り替えながら、疑問や確認事項を原田社長に投げかけていくことに。
20220615有限会社まるみや

まずは、店舗ごとに異なる客層やニーズを把握する

前期決算の数字をもとに、主力商品を「弁当」「寿司」「惣菜」でカテゴライズし(右表)、さらに「トキハ本店」の「弁当類の納数と残数」(左表・2020年11月)の内訳を見ていったところ…。
弁当名が並んだ左表では、まるみやの看板商品〈幕の内〉は〈梅〉が440個、〈竹〉が810個売れていて、〈味くらべ(韓国風)〉570個、〈肉巻おにぎり弁当〉475個、〈味くらべ〉452個の合計5種が販売個数上位にランクイン。
岡憲一郎税理士事務所
ビサイダー
販売個数を店舗ごとに比較すると、トキハ本店では〈幕の内(竹)〉が群を抜いていますが、他店舗では必ずしもトップではないようです。これはなぜでしょうか?
有限会社まるみや 原田社長
原田社長
店舗の立地も影響していますね。年配のお客様が多いトキハ本店では〈幕の内(竹)〉が特に人気が高く、日によってはすぐに完売してしまうベストセラー商品です。一方のトキハわさだタウン店はファミリー層や若い方が多いので、昔ながらの〈幕の内〉よりはボリューミーでリーズナブルな弁当に人気が集まる傾向にあります
これまでも客層や現場スタッフの声から、弁当のラインアップを充実させてきたまるみやは、以下のようなさまざまな改良を行い、弁当の売上を伸ばす企業努力を続けてきました。
・年配層が多い店舗では、煮物や焼き物等のおかずをメインにした弁当を主力に ・若い層が多い店舗では、揚げ物や肉類等をメインにした弁当をラインアップ ・時季を問わず売上堅調な「煮しめセット」は、1種類から魚や揚げ物など中身を増やした詰め合わせにして3種を展開 ・同店が店舗を構えるデパ地下で高い人気を誇る韓国惣菜店にヒントを得て、韓国の巻き寿司やトッポギ、ヤンニョンソース添え唐揚げ等を商材にした「味くらべ(韓国風)」を開発
上記のように改良を施した商品はいずれも堅調に販売個数を伸ばしています。そこでビサイダーは、さらに個数を伸長する戦略として以下の2つを提案。
・店舗ごとにまとめた年計4000個超の「人気ベスト5」と、販売個数が少ない「ワースト5」をセグメントし、そこから売上を伸ばす商品構成を考案する ・前期通年の商品別単価の推移から、今期の数字を先まわりする戦略を練っていく

売上伸長のコツは、無理せず現実的な目標を立てること

弁当や惣菜などの商品を取り扱うまるみやと同じく、日用消耗品を販売する企業では「うちはだいたい主力商品だけで毎月300万円くらいの売上がある」というざっくりとした認識でいる経営者も少なくありません。
こうしたケースにおいて売上を戦略的に高めるには「商品別に数字を細かく拾う」「POSレジを導入する」「出荷時にバーコード管理を採り入れる」などのさまざまな施策が必要になります。
その点において複数商品の売上、個数、原価率等を月ごとに精査しているまるみやでは、商品別の数字をマクロで見られる点から、計画通りに数値が推移しているかどうかを追いかけやすく、同時に今期の見通しも立てやすくなります。
こうした説明を経てビサイダーは、左表に示された〈幕の内(竹)〉の“8”という数字に着目。
岡憲一郎税理士事務所
ビサイダー
〈幕の内(竹)〉の“残数8”は売れ残った弁当の数ですね?
有限会社まるみや 原田社長
原田社長
はい。割引しても売れ残ることがあり、その数の月の合算分が“8”になります
岡憲一郎税理士事務所
ビサイダー
でも、11月の1カ月で810個販売して残数が8個ですから、30日のうち22日は完売している計算になりますね。ただ、前期の数字を反映したKPI表には割引価格分が反映されていないので、純粋にこの数字から来期の計画数値を立てると、“未達”になる恐れもあります。そうならないために値引分を考慮した現実的な計画数値を立てることを、今後の課題として共有しておきましょう
有限会社まるみや 原田社長
原田社長
前期の数字をもとに今期の製造個数を割り出す際は、割引分や残数を含めて数字を追いかけていくということですね。でも、すべての商品の適正数を見きわめるのは大変そうですね
岡憲一郎税理士事務所
ビサイダー
最初から全商品に着手せず、まずはメイン商品に絞って製造個数をコントロールし、少しずつ数字を見る目を慣らしていくようにしましょう

数字が鮮明に見えるに従い、経営にかける時間が濃密に

ビサイダーのアドバイスに笑顔でうなずく原田社長には、老舗仕出し企業のトップとしての矜持があります。
有限会社まるみや 原田社長
原田社長
創業から一貫して安くてよいものをお客様にお届けすることが弊社の使命だと考えてきましたし、今後もこれまで同様、大分のみなさまに愛される商品を提供していきたいと思っています。でも実はここ最近、判断に悩むことがいくつかありまして…
原田社長の悩みとは下記の2つになります。
・これまでは売れ残った商品を廃棄してきたが、フードロスの問題からも何かよい方法はないか ・平日と比較して週末の売上が低調な傾向にあるため、週末の売上を強化する効果的な施策
伝統を継承しながら、新たなチャレンジにも意欲的に取り組んでいきたいと語る原田社長の悩みに、ビサイダーは次のようにアドバイス。
岡憲一郎税理士事務所
ビサイダー
フードロスについては、例えばシングルマザーの家庭やこども食堂に寄付する取り組みも選択肢としてありますね。こうした活動は社会的貢献度も高く、まるみやさんの企業ピーアールにつながると思います。もう一点の〈週末の売上が低調〉に対する仮の施策案などは何かお持ちですか?
有限会社まるみや 原田社長
原田社長
弊社は“ポテトコロッケのまるみや”と言われるほどポテトコロッケ人気が高いので、この主力商品で何か勝負ができないかと模索しています。でもその場合、庶民の味 = 低価格商品の販売に注力すべきか、逆に、少し値が張る新商品に改良すべきかと、低価格路線と高級路線のどちらに振ればよいかが悩みどころで…
岡憲一郎税理士事務所
ビサイダー
これは僕がいま思いついた一案ですが、プレミアム感を演出するために価格を少し高めに設定した匠監修の“ぜいたくポテコロ”などを開発し、売上が低調な週末限定で販売するのも面白いかもしれませんね
有限会社まるみや 原田社長
原田社長
匠監修の“ぜいたくポテコロ”ですか! 〈看板商品×プレミアム感〉で目新しさと価値を生み出せれば、週末の売上低調も改善できるかもしれませんね。ぜひ検討させていただきます
——3度の定例ミーティングに参加したことで、「いままではネット販売などの経営手法に目が行きがちでしたが、ぼやけて見えていた財務上の数字がクリアになったことで、経営にかける時間が濃密になっている」と話す原田社長。そんな原田社長の今後の経営手腕にも大きな期待が寄せられますが、まるみやの“ポテコロ”を愛する大分の人々のみならず、この記事を読んだ全国の方が、“ぜいたくポテコロ”の完成をきっと楽しみにしているはず。大分を訪れた際には、ぜひ店舗をチェックしてみてくださいね!

今回のPOINT!

・月単位の大きい括りでの平均単価を把握し分析しましょう
・店舗別での販売数の違い、原因を分析しましょう
・店舗別、商品別の売上構成を分析し、商品のテコ入れができる環境を目指しましょう
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先月のミーティングで、どのような商品をどういった価格帯でどれくらいの個数を販売しているか?が経営者とビサイダーの間でお互いに共有できたことにより、今回はより具体的な実践的な会話に発展したと思います。売り上げは「単価×数量」で構成されています。今回は特に数量に着目して会話が進みましたが、これを次回はKPIで見える化していく流れになりそうです。「森を見て木をみる」まさにそんな会話が繰り広げられたミーティングだったと思います。
活用するbixidの機能
有限会社まるみや
大口ユーザーをもつ地域密着優良企業として、「食」を通した幅広い事業を展開。自社製造工場を持つ利点を生かし、老舗ながらも、新規サービスなどの事業拡大に意欲的に努めている。
代表取締役:原田 政直
本社所在地:大分県大分市
創業:1931年5月(昭和6年)
従業員数:約50人(本社・スーパー・工場)
事業内容:仕出し、弁当・惣菜製造・小売