予算管理の重要性 ー予言と予算の違いー
こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。
三国志の「赤壁の戦い」で、本来季節的に吹くはずのない東南の風を吹かせた諸葛孔明は、本当に奇跡を起こしたのでしょうか?私の考えは「NO」です。特定の人物を神格化するうえで、このような奇跡は都合がよいですが、実際は、当時馴染みのなかった気象学の知識を身に着け、風が吹くメカニズムを熟知しており、それを駆使して数々のピンチを乗り越えたというのが私の見解です。
現在では気象予報士が一番近い職業かもしれませんが、それだと物語としてはあまり面白くないですね。「実は諸葛孔明は石原良純だった!」なんて言ったら、たくさんの三国志ファンから非難されそうです。そういう私も三国志ファンの一人ですが。
それはさておき、、、
「経営の未来を“予言”する。」
“予言”というと、ミステリアスで合理的には説明できないものですが、
会社の未来を“予言”することと、会社の未来の“予算”を作成することは、全く違うものだと断言しておきます。
予算を予言だと捉える経営者
これまでの経験上、経営者に「会社の未来のため、経営計画を立てましょう」という話をすると、そこそこの確率で「未来のことはわからないから作っても無駄だ」という返事が返ってきます。このような返事をする経営者は経営計画を“予言”に近い感覚でとらえているのではないかと推察しています。
未来のことは誰にもわからない、果たしてそうでしょうか?
先を読む職業に、冒頭で触れた気象予報士があります。私が子供の頃に比べると昨今の天気予報はかなり精度が高くなっています。
1週間先までの天気予報はいつでもスマホで確認することができますし、予報に誤差がある場合でもすぐに修正がされ、日にちが近づくにつれほぼ正確な予報を見ることができます。さらにはピンポイントエリアで雨が降るか降らないかなど、地図上でタイムリーにみることができるほど身近になっています。
自然科学である天気予報と、社会科学である企業経営を同じように語ることはできないかもしれませんが、参考にできるところはたくさんあるのではないかと思います。
天気予報は膨大なデータと物理の法則を使って計算されます。例えば、細かく区分けされた場所から気温、湿度、風向き、風速などのあらゆるデータが集まり、地形や日射量データとともに繰り返しシミュレーションされることによって、より精度の高い予測が出されています。
この高い精度を実現するために、とても重要なポイントがあります。
それは、出した予測に対して、実際はどうだったのかという結果をモニタリングすることです。当たったのか?外れたのか?その要因は何なのか?といった分析データが次の予測に活用されている、というメカニズムです。
データを分析して予測を立て、その予測の結果をモニタリングして、次の予測に活用する、という考え方は、社会科学である企業経営にも十分に応用する価値があるのではないかと思います。
企業経営の未来をデータに基づいて予測
では、企業経営の未来予測で活用するデータとは?
それは、自分自身の会社の会計データです。過去に税金の申告を行うために作成している決算書の元になっている日々のデータ、いわゆる仕訳データです。
未来を予測するために、過去に発生した仕訳データは3種類に分類することができます。
①全く同じ取引としてこれからも発生するもの
②似たような取引としてこれからも発生するもの
③再度発生するか予測不能なもの
①の代表例としては、借入金の返済や家賃、リースの支払いなど、将来の支払金額も日にちも確定しているものです。
②の代表例としては、給料や水道光熱費、の支払いなど、多少の増減はするものの、払うタイミングや大体の金額が決まっているものです。
③の代表例が“売上”とそれに伴って購入しないといけない仕入などです。
この③については、特に売上という企業経営にとってメインの行為であるうえに予測が難しいという印象だけが先行して、③だけを指して「未来のことはわからない」という発言につながってしまうのだと思います。
繰り返しますが、予測不能なのは③だけです。①②は再度発生する取引であることが確定しているのであれば、それを先回りして予測値として見える化すべきです。③だけにとらわれて、①②のデータを未来に使わないのは、台風が直撃するよと言っているのに天気予報を見ずに海水浴に出掛けるのと同じ行為です。
過去の会計データを①②③に分類し、①②を見える化することがいわゆる“予算化”であり、経営計画なのです。創業したばかりの会社の場合は、過去の仕訳データがありませんが、それでも①②を洗い出すことはそれほど難しいものではありません。
合理的な説明が可能なものが予算である
具体的な経営計画の作成手法については、別のブログで書くとして、ここでは“予言”と“予算”とは全く違うということを訴えたいのです。
“予言”は合理的な説明が不可能ですが、
“予算”は合理的な説明が可能です。
これでもまだ、「未来のことはわからない」と言い切れますか?
天気予報は石原良純に任せてニュースやスマホで確認すれば済みますが、自分自身の会社の経営は誰に任せることもできません。
“予算”は“予言”ではありません。
諸葛孔明のように東南の風を吹かせるのは、あなた次第です。