【経営ウォッチ】スノーピークのファン獲得術
「スノーピーク」というアウトドアブランドをご存知でしょうか。
スノーピークの製品は他のアウトドアブランドと比べると、ケタが1つ異なるくらい、少しだけ高額な製品ばかりを取り扱っています。手軽には手を出しづらい価格帯ではありますが、スノーピークはそれでもコアなファンの獲得に成功し、彼らが離れずに長期にわたって支持を続けています。
スノーピークは、なぜ顧客の心をつかんで離さないのか。今回の【経営ウォッチ】では、高価格帯でも顧客の支持を集め続けるスノーピークを見ていきましょう。
中核となるミッションステートメント
スノーピークには、画像のような30年以上経営理念として掲げられているミッションステートメントがあります。
経営理念をしっかり定めてしまうと先々の事業や従業員の考えの自由度が減るのではないか、と考える方も多いかもしれません。しかし、企業としての方向性が明確だからこそ、ぶれることなく新しいアイディアや事業展開を生み出しやすいという見方もできます。
例えばスノーピークの場合、「自然志向のライフバリュー」「自らもユーザーであるという立場」「お互いが感動できる体験価値」など、他の企業とは少し異なる独特な視点が経営理念に明記されていることが分かります。一方で、スノーピークの主力事業である「キャンプ」「アウトドア」といった言葉は見当たりません。
このことから、既存の「キャンプ」「アウトドア」にとらわれることなく、「自然志向」で「お互いが感動できる体験価値」が得られるものを「ユーザーという立場」から生み出していくという自由度の高い考え方が見えてきます。これがまさに、「コンパスの真北の方角」のように社内全体を導く指針になっているのです。
「自らもユーザーである」という視点
スノーピークが大切にしている理念のひとつに、「自らもユーザーであるという立場」という考えがあります。
実際スノーピークでは、採用の時点から「キャンプが好きな人間」を最低条件として掲げており、近年では採用情報を公式サイトにだけ掲載し、コアな自社ファンのみが応募してくるように仕向けているという徹底ぶりです。
この理念に基づいた採用を徹底することにより、「ユーザーであるという立場」から自分たちがほしいと思うもの、美しいと思うもの、きちんと使える機能を備えたものを生み出すことができているといいます。
また、「ユーザーであるという立場」が生み出したスノーピークの自信は、商品の保証にも表れています。
スノーピークの商品は全てに「保証書」がついておらず、「永久保証」となっています。これは社内一丸となってユーザー目線で考えることがベースにあり、「商品が壊れること、使い勝手が悪いことは絶対にあり得ない、そんなものづくりはしない」との姿勢を貫いているからこそできる施策です。
どんなときにも「ユーザーである」ことを忘れない、この価値観は商品開発や商品管理など事業の隅々まで徹底して生かされている理念なのです。
30代3代目新社長が目指す先
2020年3月末、スノーピークでは大きな変化がありました。2代目社長に代わり、娘の梨沙さんが32歳という若さで3代目社長に就任したのです。
彼女はこのコロナ禍を体験し、自社の掲げる「自然志向のライフバリュー」の大切さに改めて気づいたと言います。
自由に外出ができない状況だからこそ、多くの人が自然の中で何かをすることにより価値を見出し、暮らし方や働き方を見直しています。彼女はそんな人々の価値観の変化に合わせて、企業として自分たちの仕事を通して人生の価値を高めていきたいと考えているそうです。
この思いも一貫した企業理念のもとで培われたものと言えるでしょう。
まとめ
キャンプ用品だけにとどまらず、食や衣服、働き方や暮らし方まで提案しているスノーピークは、本当に幅広い領域で事業を展開しています。しかしその裏側には一貫した経営理念があり、その理念を徹底することで新たなビジネスチャンスを敏感にキャッチしていることが分かります。
このしっかりした経営理念こそがコアなファンを惹きつけて離さない魅力になっているのでしょう。
スノーピークのように経営理念をしっかり固めることも、企業のブランディングになります。ぜひこの機会に、自社の経営理念を振り返ってみてはいかがでしょうか。