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節税を意識した投資・運用方法③

2021年 9月16日
会計・財務

こんにちは。税理士の藤井です。

誰でも「効率よく資産を増やしたい」と思いますよね。

その際、よく見かける数字が、「55%」「30%」「20%」です。
これは、いったい何でしょうか?

「55%」とは

「55%」とは、個人の総合所得に対する所得税・住民税の最高税率です。

個人の方が事業を開始したり、不動産投資をしたりした場合は、所得金額に応じて最高で55%の税率が課税されます。利益の半分以上を税金で持っていかれては、なかなか財産を増やすことが難しいですね。

前回お話した事例では、サラリーマン(給与所得者)が不動産投資をすることによって、43%の所得税・住民税率が課税されていました。そして、25年後の事例では、税引き後のキャッシュフローがマイナスとなり、これはこの不動産投資を続ける限り、自己資金を投入し続けないと物件の保有ができないことを意味しました。

自分が課税される税率を知ることは、とても大切です。


「30%」とは

次に、「30%」という数字です。これは、法人に課税される概算税率です。

実際には、中小企業の場合、所得によって税率が違ったり、法人税額に税率を乗じて法人県民税や市民税といった地方税を計算したりするので複雑ですが、法人が稼いだ利益に概ね30%の税率が課税されると理解いただいて結構です。

ということは、同じ不動産投資をするにしても、個人で投資する場合と、法人を設立して法人で不動産投資をする場合では、税引き後のキャッシュフローが大きく変わってきます。

今まで何度かお話しましたが、個人に課税される所得税は超過累進税率といって、所得が高くなるほど課税される税率も高くなります。

下記図が所得税の速算表です。(引用:No.2260 所得税の税率|国税庁
(注)例えば「課税される所得金額」が7,000,000円の場合には、求める税額は次のようになります。7,000,000円×0.23 - 636,000円= 974,000円

住民税率は一律10%ですので、課税される所得金額が900万円以上となる人は、自分自身で不動産投資をするより、法人を設立して、その法人で不動産投資をしたほうが課税される税率が低いので、結果、税負担は軽くなります。

最近はサラリーマンの方が、法人を設立して不動産投資を行うケースが増えたように思いますが、その大きな理由はこの税率の差にあります。


「20%」とは

最後に、「20%」です。これは、個人が上場株式を売却した場合の売却益や、受け取った配当金に課税される税率です。

個人が事業を開始した場合の事業所得や、不動産投資をした場合の不動産所得は、総合課税といって給与所得などと合算して所得税・住民税が課税されます。ですから、繰り返しになりますが、仮に年収が高いサラリーマンの方が、副業で事業を開始したり、不動産投資を行ったりする場合は、もともと高い給与所得にさらに事業所得や不動産所得を合算しますので、より高い税率で課税されます。結果として、稼いだわりには手元に残るお金は少ない、となるわけです。

しかし、このような年収が高いサラリーマンの方が、上場株式に投資して、配当収入を得たり、売買を繰り返したりすることによって多額の売却益を手にした場合、課税される税金はどうなるのでしょうか。

たとえ1億円、2億円といった売却益を得たとしても、20%の税率で課税されるだけです。これは、分離課税といって、他の所得とは別に(分離して)税金を課する仕組みです。なおかつ、超過累進税率ではなく、一律20%の税率です。

具体的に、前回のブログで不動産投資をした人の25年目の事例がありましたが、この事例で比較してみましょう。

この人の場合、不動産投資による不動産所得が467万円。この所得に課税される所得税・住民税の合計額は、192万5100円でした。

では、この人が不動産投資ではなく、上場株式の売却益で467万円を稼いだ場合、課税される所得税・住民税額は、467万円×20%=93万4000円、となります。この場合の税額の差は、192万5100円-93万4000円=99万1100円です。実に倍以上の差があります。

個人で投資する場合、何で稼ぐかによって、手取り額が全く変わってきます。 

なお、この「20%」の税率は、FX取引の差益でも同様です。FXとは、外国為替証拠金取引のことで、外国通貨の売買を、一定の証拠金を担保にして、その証拠金の何十倍もの取引金額で行う取引をいいます。
平成24年1月1日以後に行われる外国為替証拠金取引(FX)の差金等決済により生じた差益は、他の所得と区分し、「先物取引に係る雑所得等」として、20%の税率で課税されます。なお、外国為替証拠金取引(FX)には、店頭デリバティブ取引と市場デリバティブ取引がありますが、いずれの場合も課税関係は同じです。


まとめ

ここまで具体的な事例を挙げて、いくつかの投資や運用に関する課税関係を説明してきました。

資産運用をする際、いずれにせよその運用益に対しては必ず課税されます。まずは自分の課税されている税率を知ること、そしてそれぞれの運用や投資による課税方法を知ること。これが効率的に手元資金を最大化できる要因となるでしょう。

繰り返しになりますが、「55%」「30%」「20%」という数字と、自分に課されている税率を把握することでより効率的な資産運用を行うことができるはずです。

藤井 悟
藤井 悟
株式会社YKプランニング 社外監査役

山口大学大学院経済学研究科修了。税理士法人行本事務所広島支店の立ち上げを経て、2016年4月に代表社員就任。2023年9月、YK社会保険労務士法人を設立し代表社員就任。

保有資格はCFP、1級FP技能士、宅地建物取引士。創業支援とクラウド会計が得意。愛車はRebel250。