「電子帳簿保存法」改正の影響は?ポイントを解説
令和3年度の税制改正において、電子帳簿保存法が改正されました。その施行が令和4年1月1日に迫っているため、財務・経理の担当者は今から対応を進めておく必要があります。
今回は、改正の具体的な内容と、経営者や経理の担当者がおさえておくべきポイントについてご説明します。
今年度の「電子帳簿保存法」改正とは
今回、前回の改正から5年ぶりに電子帳簿保存法が改正されました。電子帳簿保存法は、これまでも時代のニーズに合わせて段階的な改正を重ねてきましたが、今回の改正では経済社会のデジタル化を踏まえた抜本的な見直しが行われています。
では、今回の改正で重要となるポイントを見ていきましょう。
まず、これまで帳簿を電子保存するにあたって必要だった税務署長の事前承認が廃止されます。現状では、国税関係の帳簿書類の電子保存を始める場合、その3ヶ月前までに管轄の税務署へ申請をし、税務署長の承認を得る必要があります。
しかし今回の改正を機に、この事前承認が不要となるのです。今後は、電子帳簿保存法に対応できる会計システムやスキャナなどの設備が整えば、すぐに電子保存にとりかかることが可能となります。
次に、適正事務処理要件が廃止となります。現状では、請求書を電子データ化する際の改ざん防止策として、社内規定の整備やその規定に沿った業務の実施などが義務付けられています。
しかし今回の改正では、そのうちの「相互けんせい」と呼ばれる複数の担当者によるチェック体制が不要となります。また、相互けんせいの廃止に伴い、相互けんせいを行うために保存しておかなければならなかった紙媒体の書類原本も保存の必要がなくなるため、電子化の後に該当資料をすぐ破棄することができるようになるのです。
そして、タイムスタンプ要件の緩和も今回の改正の重要なポイントです。従来は、国税関係の帳簿書類を電子化した際に、受領者の自署と3営業日以内のタイムスタンプの付与が必要でした。
しかし改正後は受領者の署名が不要となる上、タイムスタンプの付与は最長2ヶ月以内までに期間が延長されます。
さらに、電子取引データの紙媒体での保存も廃止されることが決まっています。例えば請求書や領収書などを電子ファイルで受け取った場合、それらを印刷して保存しても原本とはみなされなくなるため、今後は全て電子ファイルとして保存することが義務付けられます。
このように今回の改正では電子化の業務フローが簡素化されており、帳簿の電子化を進めやすくする改正が行われています。
今回の改正で注意したいポイント
帳簿書類の電子化を手軽にしてくれる今回の改正ですが、一方で不正防止の観点から今回新たに追加される内容もあります。
まず、不正や申告漏れがあった際に課される重加算税の課税措置が整備されます。
電子帳簿の改ざんや不正利用が発覚した場合には、これまでも35%の追徴課税が行われていましたが、改正後はこれに加えてさらに10%の重加算税が加重されます。今回の改正を機に業務フローの簡素化が進むことが考えられますが、不正防止のために自社独自のチェック体制を整えておく必要がありそうです。
また、メールの添付ファイルなど、電子取引データの保存方法にも注意が必要です。
先述の通り、電子ファイルで受け取った請求書などを印刷しての保存は、原本として認められなくなります。電子ファイルでの保存が必須となるため、受け取った電子ファイルにタイムスタンプを付与して保存するなどの対応をしなければいけません。
紙の原本が廃止できることは今回の改正の大きなメリットですが、これまでの業務フローになかったひと手間を加える必要が出てくるため、対応に漏れがないよう注意して業務に当たりましょう。
まとめ
以上、電子帳簿保存法の改正についてご説明いたしました。
今回の改正では、デジタル化を推進するための要件緩和や承認の廃止が進んだ一方で、新たな申告漏れ防止措置の適用も決定しました。
帳簿の電子保存を活用しペーパーレス化を進めつつ、改正後の法律に則った適正な書類保存ができるよう、今から準備を整えていきましょう。