【経営ウォッチ】ココカラファインのデジタル戦略
「ココロ、カラダ、ゲンキ ココカラファイン」というフレーズを一度ならず耳にしたことのある方は多いでしょう。ピンク色のロゴマークが街中でもぱっと目につくドラッグストア、ココカラファイン。独自のデジタル販促戦略で成果をあげているドラッグストア・調剤薬局の大手です。
今回の経営ウォッチでは、ココカラファインのデジタル販促戦略を深読みしていきます。
オンラインとオフラインの融合
新型コロナウィルスの蔓延も多大に影響し、近年SNSを活用したデジタル販促やECサイトの導入・移行対応は多くの企業で今まで以上に重要な経営課題となっています。このような状況下にあって、オンラインとオフラインを融合させる独自のデジタル販促戦略が成果を上げているのが、ココカラファインです。
オンラインでは、アプリやSNSを活用して様々なクーポンを配布し、ウェブサイトもリニューアルすることで活用の幅を広げました。オフライン、つまり来店時の施策では画像や映像を映し出すサイネージや有線放送、POPなどの仕掛けをすることで、オンラインとオフラインそれぞれを掛け合わせた来店促進企画を行い、実際の購買に繋げるための導線を強化しています。
オンラインとオフラインを連携させるこの施策により、ココカラファインではコロナ禍で客足が鈍るなかでも、郊外や住宅地に立地する店舗では客単価が上昇し、ECも好調に推移しているといいます。さらにアプリやSNSを使用することで、これまで接触できなかった顧客にもアプローチが可能になったという効果も現れてきています。
サイトリニューアルの成果
オンライン部分でSNSをうまく活用しているココカラファインですが、その立役者ともいえるのが商品・店舗企画部の販促チームでココカラファインのカスタマー/ECサイト全般のウェブマスターをしている林哲史氏と、彼が率いるECチームです。
林氏は2019年からココカラファインのSNS運用を兼務し、Twitterのフォロワー10万人超えを達成したことで、2020年から会員サイト「ココカラクラブ」の責任者になりました。またその少し前の2018年には、ECチームの一員として自社サイトのリニューアルを行っています。
リニューアル前、ココカラクラブのサイトはプレビュー機能や予約投稿機能がなく、それぞれの作業をマンパワーに頼っている状況でした。さらに、ECサイト・カスタマーサイト・コーポレートサイトという主要な3つのサイトの管理手法がバラバラだったため、サイトをリニューアルすることでそれらを1本化したいという希望も出ていました。
一般的には半年から一年ほどかけて行うことが多いサイトリニューアルですが、ココカラファインでは林氏の指揮のもと、わずか5ヵ月という短期間で成し遂げています。
サイトリニューアルにより新たなCMS(Webサイトのコンテンツを構成するテキストや画像、デザイン・レイアウト情報(テンプレート)などを一元的に保存・管理するシステムのこと)を導入したことで、マンパワーに頼らざるを得なかった部分が解決され、内部工数とスタッフの負担が削減されました。
また、CMS導入過程で抜本的なサイトの見直しとコンテンツ整理を行ったことが功を奏して、サイトリニューアル翌年の2019年にはコンテンツのGoogle検索ランキングが大きく上昇し、セッション数が前年比300%増という目覚ましい成果が出たのです。
顧客を徹底的に分析する
オンライン上のシステムづくりを加速させるココカラファインですが、オフライン上でもデジタルによって顧客を徹底的に分析しています。
2020年12月には、新宿に都市型大型旗艦店をオープン。既存の商品以外に家具やアパレルなども取り扱う、従来のドラッグストアの枠組みから飛び出す店舗を実現させました。
この店舗では、どのような商品配置や販促をすれば顧客が興味を持つのか、どの商品をどれだけの顧客が手にし、最終的に購入したのかという点までデジタルで分析できるようにしています。
その分析結果は、顧客の動線を意識した商品配置を行ったり、生活動線の一部に店舗を取り込んでもらえるような仕掛けを取り入れたりという部分で活用されています。
まとめ
ココカラファインは、オンラインとオフラインそれぞれでの顧客とのタッチポイントを増やすだけでなく、オンラインとオフラインを融合し、境目をなくそうと動き続けています。
どちらか一方に偏るのではなく、双方を伸ばし、掛け合わせることでさらに飛躍する。ココカラファインのデジタル販促戦略からますます目が離せません。