今見直される「同族経営」メリット・デメリットとは
トヨタ自動車、サントリー、任天堂、ウォルマート、サムスン。これらの企業に共通するポイントはなにか、分かりますか?
それぞれの業界をけん引する大手企業ですが、共通点は「同族経営」であること。特に日本では、全企業の97%が同族経営の企業となっているのが現状です。
今回は同族経営のメリット・デメリットや同族経営を成功させるためのポイントなど、改めて同族経営について詳しく見ていきます。
「同族経営」とは
同族経営とは、ある特定の一族が会社を所有もしくは経営しており、会社の経営方針に大きな影響力を持っている企業のことを指します。他にもファミリービジネス・家族経営・同族企業などといった表現をされることもあります。
日本では、法人税法上に同族会社(=同族経営)は『会社の株主の3人以下、並びにこれらと特殊な関係にある個人や法人が議決権の50%超を保有している会社』と定義されています。つまり、企業の発行した株式や出資金の半分以上を、3人以下の株主や「特殊な関係にある個人や法人」が保有している場合に同族会社と判断されるということです。
なお「特殊な関係にある個人や法人」とは、親族のほか使用人や扶養されている者、これらの関係にある者が支配している会社などが対象となります。
イギリスやアメリカでも全企業中80%ほどが同族経営を行っていますが、特に日本国内の企業ではその割合が顕著であり、長寿企業の割合も非常に高くなっています。
「同族経営」のメリット・デメリット
それでは次に、同族経営が多い背景にはどのようなメリットがあるのか?デメリットはないのか?という2つの点を見ていきましょう。
▼同族経営のメリット
・創業者の経営理念が組織に浸透しやすく、そのことが長期的な安定した経営に繋がる
・自分の会社という意識が強まり、情熱的に貢献してくれる人間が多く獲得できる
・経営者と株主が共有されるため、経営陣が株主の顔色をうかがったりすることなく大胆な経営改革も行うことができる
このようにメリットのある同族経営ですが、デメリットも同じように存在します。
▼同族経営のデメリット
・株主からの監視機能が働かず、一族のワンマン経営になりやすい
・身内びいきをしてしまう可能性があり、身内の行った悪事に目をつぶる恐れがある
・後継者を親族内から選ぶという前提があり、経営素質のある後継者を選択できる可能性が減ってしまう
経営者と株主が共有されることが同族経営の一番のポイントですが、このことがメリットにもなり、デメリットにもなるということが分かりました。
同族経営を成功させるには
その上で同族経営を成功させるにはどのようなことに注意すればよいのでしょうか。同族経営を成功させるために気を付けるべきポイントがいくつかあります。
まず最も重要な点は、経営者側が自らを厳しく律し、法令を遵守する意識を高めることです。プライベートの借金返済に会社の資金を流用するような行為は、第三者による厳しいチェックのない同族経営の会社で起こりやすい行為です。非同族経営と比べて、より自分に厳しく、倫理を大切にすることが重要です。
次に、社内全体において親族以外の従業員を大切にすることも重要となります。経営は一族が行うとしても、実際の事業を行うのは親族以外の多くの従業員です。親族だけを優先するような経営は、従業員の士気やモラルの低下につながってしまいます。えこひいき等のないよう、意識して経営に当たっていきましょう。
最後に、長く続く伝統に固執し、経営が古くなってしまうという懸念もあります。積極的にイノベーションを行い、外部と連携した事業を行うなど、内にこもらない経営を心がけることも同族経営を成功させるポイントになるでしょう。
まとめ
今回は、世界的にも数多い同族経営についての基礎的な解説をしてきました。
デメリットもありますが、メリットも多く存在する同族経営。デメリットを知ることで、さらに経営を成功に近づけていきましょう。