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「総資産回転率」でわかる!貸借対照表から読み解く資産活用の実力

2025年 8月 7日
経営管理 会計・財務

こんにちは、YKプランニング代表取締役社長の岡本です。

企業の財務状況を把握するうえで、貸借対照表(B/S)の読み解きは欠かせません。
資産・負債・自己資本という構造を通じて、会社の健全性や成長性を把握することができます。

今回はその中でも「総資産回転率」という指標に注目して、企業が持つ資産をどれだけ効率的に活用できているのかを見ていきます。
財務の“動きの良さ”を測るこの指標を通じて、経営の改善ポイントを一緒に考えていきましょう。


総資産回転率とは?──貸借対照表から資産活用力を測る指標

総資産回転率は、企業が保有しているすべての資産を使って、どれだけの売上を上げているかを見る指標です。

ここで少し、イメージしやすい例えを紹介します。
売上は“身長”、総資産は“体重”だと考えてみてください。
同じ身長でも、体重が重ければ重いほど動きは鈍くなりますよね?
それと同じで、同じ売上でも、総資産が大きすぎると非効率な経営になっている可能性があります。

つまり、総資産回転率は「どれだけの資産を使って、どれだけの売上を生んでいるか」という“効率の良さ”を示す指標です。

この数値が高ければ高いほど、持っている資産を無駄なく活用しているといえます。
逆に数値が低いと、売上を上げるために過剰な資産を抱えている、もしくは資産がうまく使われていない、という可能性が浮かび上がってきます。
総資産回転率の良し悪しは、会社の「動きの良さ」、つまりビジネス全体のキレのようなものを表すものです。

とくに中小企業では、限られた資産の中で最大限の成果を出す必要があるため、この“効率性”の視点はとても重要です。また、総資産には現金や売掛金といった流動資産だけでなく、建物や機械といった固定資産も含まれます。

したがって、資産全体を通してどれだけ利益を生み出しているかを捉えるには、非常に総合的で本質的な指標とも言えます。この指標を使えば、企業がどれだけ軽やかにビジネスを展開しているかが見えてくるのです。


総資産回転率の計算方法:初心者でもわかるステップ解説

総資産回転率の計算式は、とてもシンプルです。
→【総資産回転率(回)】= 売上高 ÷ 総資産(期中平均)

ここで使う「総資産」は、期首と期末の平均値を用いるのが一般的です。これは1年間の中で資産の金額は変動するため、平均をとることで実態に近い数字を算出できるからです。
たとえば、年間売上が1億円で、総資産の期首が9,000万円、期末が1.1億円だったとします。この場合の平均総資産は1億円となり、総資産回転率は1.0回転(100%)になります。

もう少しイメージしやすくするために、3つのパターンで見てみましょう。

A社:売上1億円 ÷ 総資産1億円 = 1.0回転(100%)
B社:売上1億円 ÷ 総資産2億円 = 0.5回転(50%)
C社:売上1億円 ÷ 総資産0.5億円 = 2.0回転(200%)

このように、同じ売上でも資産の規模が変わると回転率も大きく変化します。資産に対して売上がどれだけ上がっているか、という「効率」の違いがはっきり見て取れます。

ただし注意したいのは、数値の大小だけで経営の良し悪しを判断しないことです。
回転率が低くても、設備投資を終えたばかり、あるいは成長に向けた準備期間中であることもあります。逆に、回転率が高すぎる場合には、必要な投資をおこなえていない可能性もあります。

大切なのは、「自社の現在地を把握し、どう活用するか」という視点でこの指標を見ることです。


なぜ重要?総資産回転率が経営効率に直結する理由

総資産回転率は、経営の効率性を測るうえで非常に有効な指標です。
この数値を見ることで、「企業が持っている資産をどれだけ活かしているか」がわかります。
たとえば、売上が同じでも、総資産が少ない企業のほうが回転率は高くなります。これは、少ない資産で大きな成果を出しているということです。

つまり、身軽で無駄がない経営ができているとも言えるのです。また、金融機関が融資判断をおこなう際や、外部の投資家が企業価値を評価する際にも、回転率はチェックされることがあります。

「どれだけ効率よく資産を回せているか」は、企業の競争力や将来性を読み解く重要な材料のひとつなのです。もちろん、以下のように業種によって適正水準は異なります。

小売業・飲食業などは回転率2.0以上が理想(少ない資産で売上を稼ぐモデル)
製造業は1.0前後が目安(設備投資が多いため)
不動産業・インフラ系などは0.3~0.5でも健全(資産を多く保有する業種)

このように、自社の業種に応じて指標の見方を変えることが重要です。一律に「高ければ良い」というものではないという視点を持っておきましょう。


中小企業の実例で学ぶ!総資産回転率改善のヒント

中小企業では、同業他社との比較が難しいケースも多いため、過去の自社の数字と比較する「縦の比較」が非常に有効です。

たとえば、前年は0.8回転だったのが、今年は1.1回転に改善していれば、資産の使い方が上手くなってきている証拠です。逆に、回転率が落ちている場合は、売上の伸び悩みや、過剰な設備投資、回収されていない売掛金、増えすぎた在庫など、何らかの非効率が潜んでいる可能性があります。

ただし、数値が高すぎる場合も注意が必要です。資産が少なすぎると、将来への投資が不十分な場合やリスク耐性が弱くなることもあります。指標は単なる「効率」だけではなく、「健全性」とのバランスで考える必要があります。


まとめ:総資産回転率で経営の「ムダ」を見抜こう

総資産回転率は、企業が持つ資産でどれだけ効率よく売上を生み出しているかを測る指標です。

単なる数値の良し悪しではなく、自社の事業規模や戦略に合った適正水準を見極めることが大切です。数値が低ければ余剰資産や在庫、逆に高すぎれば投資不足の可能性が考えられます。

定期的にこの指標を見直し、資産の使い方を振り返る習慣が、経営改善への一歩につながります。貸借対照表を経営の羅針盤として活用し、資産を最大限に活かした持続的な成長を目指しましょう。

ぜひ、この機会に自社の総資産回転率をチェックして、より良い未来への一歩を踏み出してみてください。

岡本 辰徳
岡本 辰徳
株式会社YKプランニング 代表取締役社長

1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。