中小企業こそ取り組みたいマーケティング
近年、マーケティングは大企業だけでなく、中小企業にとっても重要な活動として注目されています。しかし、多くの中小企業では、人手不足や優先度の問題から、十分なマーケティング活動がおこなわれていないのが現状です。
その一方で、効果的なマーケティングは、新規顧客の獲得や既存顧客との関係を強化し、安定した成長を支える重要な手段となります。インターネットの普及により、WebサイトやSNS、オンライン広告などの低コストで取り組めるツールが増え、小さな規模でも十分な効果を発揮できる時代となりました。
今回は、中小企業がすぐに取り組めるマーケティングのポイントをお伝えします。
まずは自社の強み「USP」を定義しよう
グローバル化が進んだ現代では、国内外問わず競合他社との競争がより熾烈になってきています。顧客から自社を選んでもらうためには、まず自社の強みを明確に打ち出していく必要があります。
USPは「Unique Selling Proposition」の頭文字を取った略称で、直訳すると「独自の販売計画」となります。
最初にこの概念が提唱されたのは1960年代、アメリカのコピーライターであるロッサー・リーブス氏によるものだと言われています。USPは自社のサービスや商品が持っている「独自の強み」のことを指しており、マーケティングにおいて他社との差別化を図る際に注視するポイントです。
この言葉を使用する場合は単なる「強み」を指すだけではなく、「自社が顧客に対して提供できる独自の価値や利益」も意味します。情報があふれる現代において、自社のUSPを明確にし、正しく理解した上で経営戦略を立てることが重要となってきているのです。
「USP」を作り出すポイント
USPを設定するには、以下のポイントを押さえておくことが必要です。
1.ターゲットを明確にする
自社の魅力をできるだけ多くの人に知ってほしい、そう考えるのは経営者として当たり前のことです。しかし、その思いが強すぎると、万人受けする独自性のない戦略になってしまう危険があります。USPを意識するのであれば、自社の商品やサービスが刺さる特定のターゲットや業界を絞り込んで、彼らに合わせた戦略を練っていく必要があるのです。
2.独自性を見出す
これはUSPを考えるうえで最も重要なポイントです。どれだけ魅力的であっても、他社と差別化できないのであればそれはUSPとは言えません。時代に合わせて次々と変化する顧客のニーズや経済状況に常にアンテナを張り、適切なタイミングでこれまでになかったものを打ち出していくことが重要になります。自社の業界のことだけでなく、日頃から幅広いジャンルの知識や情報を収集するように心がけましょう。
3.顧客の得られる利益を示す
ターゲットを絞り、他社との差別化を図っても、そこから得られる利益が正しく顧客に伝わらなければ最終的な売上には繋がりません。自社の商品やサービスを利用することでどのようなメリットがあるのか、どのような課題を解決できるのかを適切に伝えていくことも意識しましょう。
顧客設定の重要性
USPを作り出すポイントとしても“ターゲットを明確にする”ことは重要なポイントとして挙げられています。
顧客設定が定まらないと、広告をひとつ打つにしても、
どのような文面がいいのか?
どこに広告を出せば効果的なのか?
どのようなデザインが購買につながるのか?
など、全ての面において決め手を欠いたものになってしまいます。
しっかりと顧客設定をしておくことで、社内やプロジェクトメンバー間での認識のずれがなくなり、ユーザーの視点で製品やサービスを作成したり、広告を打ったりすることができるようになります。
顧客設定で気をつけるポイント
では、実際に顧客設定をするときにはどのような点に気をつければよいのでしょうか。
マーケティング戦略を考えるうえで使用される分析手法として、「STP分析」というものがあります。「STP分析」とは、S(セグメンテーション)、T(ターゲティング)、P(ポジショニング)の3つの段階の頭文字をとったものです。
顧客設定をするときのヒントは、「顧客セグメント」と「ターゲティング」の二つにあります。 それぞれ順に見ていきましょう。
1.顧客セグメントとは
「セグメンテーション」では、市場にいる顧客を年齢や性別、趣味などの属性で分類して「顧客セグメント」を作ります。具体的な属性には、人口統計(年齢、性別)、心理(趣味、価値観)、地理(地域)、行動(購入履歴)などがあります。セグメントが広すぎると顧客の関心を引きづらく、狭すぎると市場が限定されるため、適切な範囲での設定が重要です。
2.ターゲティングとは
「ターゲティング」は、市場を細かくグループ化した後に、どのグループをターゲットとするかを決める工程です。これには「6R」フレームワークが用いられます。6Rとは、(1)市場規模の現実性、(2)成長率、(3)競合の有無、(4)顧客の優先順位や波及効果、(5)到達可能性、(6)効果測定の6要素です。ターゲティングが適切におこなわれると、新規顧客開拓が効率的になり、売上の増加が期待できます。
スモールスタートできるWeb広告のメリットとデメリット
自社の強みを洗い出し、顧客設定が済んだら実践してみましょう。
Web広告はこれまで一般的であった「マス広告」とは異なり、広告の効果測定やターゲティング、低コストでの運用などが可能であることが特徴です。少ないコストの中でより効果的にターゲットに行動促進できることから、コスト面で大企業に遅れを取りやすい中小企業には大きなメリットが有るマーケティング手段と言えます。
メリットとしては、安価で広告出稿ができること、短期間でも効果が得られること、そして効果測定をしながら適宜改善がおこなえることが挙げられます。
マス広告は1回あたりの金額が高額であることに加え、一度出稿してしまうと内容を変更することはほぼ不可能です。しかしWeb広告であれば、低コストでスタートしてその効果を数値で見ながら、ターゲットにより効果的に刺さるように調整していくことが可能となります。
デメリットは媒体によって異なりますが、全体を通して、実際に運用していくための知識力や分析力が必要となることがネックになると考えられます。Web広告の運用には、Webマーケティングの知識と広告運用の知識が必要となります。また、より成果を上げるためには効果測定で得られた数値を多角的に分析し、改善策を講じていくスキルも求められます。
場合によっては専門家の力を借りたり、マーケティング人材の確保を必要とすることが、Web広告全体のデメリットといえるでしょう。
まとめ
「良い商品、良いサービスであれば顧客が買ってくれる」という時代は、もう過去のものです。マーケティングは「小さな一歩から始める」ことがポイントです。
大きな予算をかける必要はありません。まずは手の届く範囲で実践し、分析を繰り返しながら少しずつ改善を重ねていきましょう。中小企業だからこそ、柔軟な発想と素早い実行力で、新しい顧客との出会いを積極的に生み出せるのです。ぜひ、今日から取り組んでみてください。