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今更聞けない「減価償却費」

2021年12月23日
会計・財務

こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。

本日は、今更聞けない簿記・会計の用語として「減価償却費」についてご説明いたします。

とある日常、経営者と会計事務所の担当税理士との会話。

社長、今期の決算で計上する減価償却費は1,000万円になります。
んっ?あっ。なるほど、了解。(って、減価償却費ってイマイチわからないんだけど…)
前期の減価償却費は1,500万円でしたので、予定通り減ってきていますね。
おぉ、そうだね。予定通りだね。(って、予定なんかしてたっけ?そもそも減価償却費が減るのはいいことなのか?今更、「ところで減価償却費って何?」なんて聞けねぇよなぁ…)

「減価償却費(げんかしょうきゃくひ)」
経営者であれば必ず聞いたことがある言葉ではないでしょうか?

実際に「減価償却費」と言われても的確に説明できる人は意外と少なく、なんとなくニュアンスで受け流している方がほとんどかと思います。このブログを機に、減価償却費の意味をキチンと理解しましょう!


「減価」と「償却」のそれぞれの言葉の意味を理解する

減価とは「価値が減る」、償却とは「費用に化ける(=費用化)」という意味合いがあります。

「費用に化ける」はいまいちピンとこないかもしれませんね。「化ける」は、もとの形から何かに変化することを意味しますが、簿記・会計では資産(モノ)が費用に化けるときにこの「償却」という言葉を使います。

具体的な資産(モノ)としては、建物や機械装置、車両、備品など、形が有り高額で、長期にわたって使用する有形固定資産と呼ばれるものや、営業権やソフトウェアなどのような形の無い権利のような無形固定資産と呼ばれるものが、減価償却費と関係しています。

基本的にこれらの特徴は、使用頻度や時間経過による劣化により「価値が減る」ところにあります。

例えば、500万円の車を購入し、5年間で10万キロ走行し、下取り価格を調べたところ価値0円だった場合の「減価」を考えてみましょう。「減価」の計算根拠としては、5年で均等に価値が減ったと考えると
500万円÷5年=100万円
毎年100万円ずつ価値が減少したこととなります。

また以下のように、走行距離の割合に応じて価値が減ったと考えることもできます。

費用収益対応の原則を知っておこう!

経営者として簿記・会計を語るうえで知っておくとカッコイイ基本原則があります。それは「費用収益対応の原則」です。

収益を得ることができたのは投下した費用があるからこそであり、その因果関係を重視して1年ごとに区切って収益と費用を対応させるということが大原則となっています。

先ほどの車の例で考えてみましょう。500万円の車を購入、5年間使用するということは、この500万円という支出は1年目で使い切ってしまうのではなく、5年間の収益に貢献していると考えます。なので、下の図のように1年目で全て費用として計上してしまうことはこの「費用収益対応の原則」を無視した素人の考え方ということになります。

そのためには、購入した500万円の車は、一旦有形固定資産として計上し、下の図のように5年間にわたって一定の計算方法で因果関係が見込まれる期間に費用として振り分けます。


つまり、1年目にまとめて支出したものであっても長期にわたって保有し、将来の収益獲得に影響を及ぼす可能性がある有形無形の固定資産を取得した場合には、それ相応の期間に案分して費用化するのです。

車を使って収益を得たとしたら、その使った分だけ車の価値は下がりますよね。価値が減る分「減価」、費用を計上(費用に化ける)する「償却」。費用収益対応の原則は、減価償却費の基本となる原則なのです。


減価償却費ってお金が出ていかない費用なの?

通信費、旅費交通費、接待交際費など、科目のおしりに“費”とついているものは基本的に現預金で支払うものがほとんどです。しかし、減価償却費も“費”がついていますが、実際はこの減価償却費が計上されてもお金は出ていきません。

先ほどの図を使って説明しますと、

車の購入時に現金で500万円支払ったとしても、1年目には100万円のみ減価償却費として計上され、残りの2年目以降も一切お金の出ていかない減価償却費が100万円ずつ計上されます。

この状態を指して、減価償却費は「非現金支出費用」とも呼ばれています。減価償却費はその金額ほど利益を減らすことができ、実質的には税金計算の際に有利になります。

また、減価償却が1,000万円計上されたうえでの経常利益が500万円だった場合だと、
「減価償却が無ければ1,500万円のキャッシュが生まれたことになるんだよね」という見方をすることができます。

特に金融機関は損益計算書を見る際には、お金が出ていかない減価償却費を探し、経常利益にその減価償却費分を足して資金を判断しています。ちなみに、この金額のことを「営業キャッシュフロー」と呼びます。

さらには、減価償却費を計上してもしっかり利益が出ているという状態は、過去に投資した大きな支出の回収ができているという判断になりますし、減価償却費を計上しない・できないという状態は、過去の投資の回収ができていないという判断になります。

経営者が減価償却費の細かいルールや計算方法をひとつひとつ覚える必要はありません。しかし、減価償却費とは何なのか?ということはしっかり理解をしておきましょう。

岡本 辰徳
岡本 辰徳
株式会社YKプランニング 代表取締役社長

1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。