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なぜ山崎実業は「勝手にバズる」のか?

2026年 8月20日
経営管理 営業/マーケティング

整理収納に関するブログやSNSで、愛用品として頻繁に登場する「tower(タワー)」シリーズ。

100円ショップをはじめとした低価格商品があふれる時代においても、山崎実業の製品は“あえて選ばれる商品”として独自の存在感を放っています。
では、なぜ山崎実業はここまで支持され続けているのでしょうか。

その理由は、単なる商品力ではなく、「売れる仕組み」そのものを設計している点にあります。
今回は、山崎実業が実現している「勝手にバズる構造」を、商品開発・マーケティング・組織戦略の観点から紐解きます。


生活の“不満”を言語化する商品開発戦略

山崎実業は1971年設立のインテリア雑貨メーカーであり、現在も奈良に本社を置く企業です。
同社の特徴は、単に便利な商品を作るのではなく、「生活の中にある小さなストレス」に着目している点にあります。

例えば、コンロ周りの掃除を楽にするカバーや、計量の手間を減らす米びつなど、一見すると些細な問題を解決する商品が多く見られます。こうした製品は「なくても困らないが、あると手放せない」という領域を狙ったものです。

ここで重要なのは、山崎実業が向き合っているのは顕在ニーズではなく、ユーザー自身も言葉にしていなかった不満であるという点です。日常の中で感じていた違和感や手間を可視化し、それを具体的な形として提示することで、初めて「必要なもの」として認識されるようになります。
このアプローチが、同社の商品が広く共感を得る理由の1つです。


「ユーザーの使い方」が拡散するSNS時代のマーケティング

山崎実業の強さは、商品そのものだけではありません。
むしろ特徴的なのは、ユーザーによる使い方の拡張がそのままマーケティングになる点にあります。

代表的な例として挙げられるのが「ポリ袋エコホルダー」です。本来はポリ袋を掛けることで即席のゴミ箱を作れるアイテムですが、実際にはボトル乾燥や保存袋のスタンド、鍋のふた置きなど、さまざまな用途に転用されています。

こうした使い方の広がりは、ユーザーのSNS投稿を通じて共有されます。新しい使い方を見つけた人が発信し、それに共感した人が購入し、さらに別の使い方を発見する。この循環が繰り返されることで、商品は自然と認知を拡大していきます。

このようなユーザーによるアレンジから始まる『バズり』は単なる偶然ではありません。

山崎実業はコラムや活用事例を通じて、ユーザーが自分なりの使い方を発見しやすい環境をあらかじめ用意しています。さらに、ユーザーが見つけた新しい使い方を公式SNSで取り上げることで、ブランドと顧客の関係を強化しています。
このように同社は、企業が一方的に情報を発信するのではなく、顧客を巻き込む形で価値を広げる「共創型マーケティング」を実現しています。


SKU戦略で「小さなヒット」を積み上げる仕組み

山崎実業のビジネスモデルを理解するうえで欠かせないのが「SKU戦略」です。
SKUとは、商品1つひとつの種類や単位のことを指します。同じカテゴリの商品でも、サイズや用途が違えば別のSKUとして扱われます。

山崎実業の特徴は、このSKUの数が非常に多い点にあります。2026年現在も新商品を継続的に投入しており、生活のあらゆる場面に対応するアイテムを細かく展開しています。 
この姿勢は、生活の不満を細分化し、それぞれに対して個別の解決策を用意しているとも言えます。

一般的な企業が1つのヒット商品に依存するのに対し、山崎実業は「大ヒットを狙う」のではなく、「小さな価値を持つ商品を数多く展開する」戦略を取っています。その結果、顧客との接点が増え、リピート購入につながりやすくなります。

さらに、この戦略を支えているのがデザインの統一です。towerシリーズは白と黒を基調としたシンプルなデザインに揃えられており、商品数が増えても生産や在庫管理の負担が大きくなりにくい構造になっています。
このように山崎実業は、「少数精鋭の商品」ではなく、「多数の小さな価値」を積み上げることで成長を続けている企業です。


海外展開に見る「日本の課題を価値に変える力」

山崎実業は現在、アメリカやヨーロッパにも拠点を持ち、グローバル展開を進めています。
また、自社ECを通じた海外販売も強化されており、北米市場を中心にブランドの認知が広がっています。

ここで興味深いのは、日本独自の住宅事情がそのまま海外で価値になっている点です。

日本の住環境はスペースが限られているため、収納や整理に関する工夫が求められます。山崎実業の製品は、こうした環境に最適化されており、結果として都市化が進む海外市場でも受け入れられています。
つまり同社は、ローカルな課題をグローバルな価値へと転換することに成功しているのです。


山崎実業は「仕組み」で売れている

山崎実業の成功の本質は、単なる商品開発力ではありません。

生活の不満を起点にした商品設計、ユーザーによる使い方の拡張を前提としたマーケティング、小さな価値を積み上げるSKU戦略、そしてそれを支える効率的なデザインと組織構造。
これらが組み合わさることで、同社は広告に依存せずとも商品が広がる仕組みを構築しています。

SNSの発信力が個人に分散している現代において、山崎実業の事例は「顧客とともに価値を創る企業」の象徴と言えるでしょう。


株式会社YKプランニング
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