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今更聞けない「資金調達」

2023年 3月23日
会計・財務 ビジネス用語

こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。
今回は、今更聞けない会計のこと「資金調達」についてご説明します。

とある日常、経営者と会計事務所の担当税理士との会話。

先日、数人の経営者と話していたら、その中の一人が「ファンドから資金調達した」って言っていたんだ。そしたら別の経営者が「俺の会社はファクタリングで資金調達したよ」って。「ファンド」も「ファクタリング」も最近よく耳にするけど、ちゃんと理解できていないんだよね・・・
「ファンド」も「ファクタリング」も資金調達の手段に変わりはありませんが、性質が全然違いますね。そもそも社長の会社は業歴が長いので、銀行との付き合いも長いです。なので、資金調達は普通の融資で十分事足りていますからね。
銀行から借りる以外の資金調達の手段って実際どうなの?
それぞれの会社のビジネスモデル、規模感、業歴、そして経営者自身が将来的に会社をどのように維持・成長させていきたいかによって、資金調達の方法を上手に選択することが重要です。
今まで通りスムーズに銀行から借りられれば問題はないけど、「ファンド」や「ファクタリング」についても最低限の知識は身に着けておいた方がいいかもね。
もちろん、知っておいて損することはありません。では、今回はいろいろな「資金調達」について解説していきましょう。


資金調達を理解するためのコツは「貸借対照表」

資金調達をおこなううえで最低限理解しておくべきことがあります。

それは「貸借対照表(Balance Sheet、以下BSといいます)」の構造の理解です。BSとは、決算書の一つで下記の図のように左側に「資産」、右側に「負債」と「純資産」が記載されます。

このBSを今回のテーマ「資金調達」という視点で表現をすると以下のようになります。
「資金調達」というと、BSの右側をイメージする方が多いです。ですが、左側にも実は資金調達の手段があるのをご存じでしょうか?


①モノを処分して資金調達(※換金的なイメージ)

BSの左側には、資産として売掛金や受取手形が記載されています。
これは会社の財産として持っているものですが、資金調達の道具として使うことができます。
これが、いわゆる「ファクタリング」と呼ばれる、売掛金(近未来にお金が入ってくる権利)の現金化です。

この方法は、もともと売掛金や受取手形などを持っている場合に選択できる資金調達方法で、一言でいえば「換金」です。持っている手形を期日前に現金化する「手形の割引」は昔からあるファクタリングですが、昨今はWEB上で売掛金を早期に現金化できるサービスもあります。

会社の車や土地、建物を売って現金化する行為と似ていますが、形があるものではなく、債権(権利)を現金化するという行為になります。どちらかというと、小規模事業やスタートアップなどの少額資金を調達するための手段で使われることが一般的です。ただし、満額換金ではありませんので、しっかりと考えてから活用しましょう。

ちなみに余談ですが、無形の資産を処分してお金に換えるという考え方として営業権の売却というものがあります。会社が持っている資産を処分してお金に換えるという点では、これも資金調達の一つですね。


②返済が伴う資金調達

次にBS右側の資金調達について解説します。
BSの右側は“上”が負債、“下”が純資産となっています。まず、上の負債側での資金調達の手段についてみていきます。
負債としての資金調達とは「返済の義務が伴う資金調達」のことであり、いわゆる銀行からの借金が該当します。銀行から借金をする際には、決算書の提出を求められるケースがまだまだ多くあります。そのため、事業の立ち上げ直後にきちんと帳簿を付けていないと、お金を貸してもらえないケースがあります。

よく聞く言葉として、「3期分の決算書を提出してください」「直近の試算表を提出してください」など、過去の実績を確認したうえで融資を実行するというケースが大半です。

また昨今では、担保や保証人に依存しないような融資を実行するよう金融庁が金融機関に対して促進しています。しかし、こちらもまだまだ担保や保証人依存型の融資が多く、それなりの財産や信用を求められることがあります。

ただし、小規模事業者やスタートアップ企業でも借りることのできる制度融資(※新創業融資制度|日本政策金融公庫)もありますので、事業のステージや規模感に合わせて借金をしましょう。

ちなみに当然のことですが、借金をすると元本返済と利息の支払いをしなければならないという特徴があります。


③返済が伴わない資金調達

続いて、右下の純資産側の資金調達の手段についてみていきましょう。
純資産としての資金調達には2種類の考え方があります。

1つは「自己資金を用意する」ということ、もう1つは「金融機関以外の他人からお金を出してもらう」ということです。これらにはどちらも“株式の発行”が関係してきます。

たいていの経営者は創業時に自己資金を用意して事業をスタートさせているかと思います。
自分のお金でスタートするので“株式の発行”という概念はあまりないかもしれません。

ですが、実質的には自分で自分の会社の株を持って経営をしています。その後は毎年の利益が「繰越利益剰余金」という形で純資産の部に溜まっていくこととなり、これが会社の企業価値(株価)を上昇させていくことになります。途中で自己資金の注入(増資)をすることもあるかと思いますが、「資金調達をした」という感覚ではないと思います。

一方で、金融機関以外の他人からお金を出してもらう方法ですが、これがいわゆるファンドやVC(ベンチャーキャピタル)から「資金調達をする」というものになります。
原則として、調達したお金は返す必要がありません。この「返済する必要がない」というところが銀行からの借金と決定的に違うところです。

その代わり、“会社の株式を渡す”という行為が伴います。これは経営権や利益の分配という点で非常に重要なことです。返済しなくてよいという点では非常にメリットですが、株式を渡すということは、経営にも口を出してくることを意味し、株の持ち株割合によっては、自分の会社ではなくなってしまうというケースも出てきます。なので、経営の現状維持を考えている会社にはおススメしない方法です。

新しいビジネスモデルでの急成長やIPOも視野に入れた資本政策などを考えている場合には、ファンドやVCなどを上手に活用してその先の目標を達成する場合にとても心強い資金調達方法です。そのような経営者の方はまずは身近な税理士、会計事務所に相談することをおススメします。

今回は「資金調達」について解説していきました。
まだまだ他にもたくさんの会計に関する今更聞けないことが存在します。一つずつわかりやすく解説していきますので、ぜひほかの「今更聞けないシリーズ」も読んでみてください。

岡本 辰徳
岡本 辰徳
株式会社YKプランニング 代表取締役社長

1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。