BLOG bixid

経営のあらゆる課題を支援する
bixidオフィシャルブログ
  • ALL
  • 経営管理
  • 会計・財務
  • bixid活用
  • 業務改善
  • 営業/マーケティング
  • 人材育成
  • ビジネス用語

今更聞けない「黒字倒産」の原因とメカニズム

2023年11月 9日
会計・財務 業務改善

こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。

みなさんは「黒字倒産」という言葉を耳にしたことはありますか?
利益を上げている会社がなぜ倒産するのか、一見すると矛盾しているように思えますよね。しかし、この現象は珍しくなく、多くの企業が陥り得る罠なのです。

今回は、今更聞けない会計のこと「黒字倒産」のメカニズムについてご説明します。

とある日常、経営者と会計事務所の担当税理士との会話。

先日「黒字倒産」っていう言葉を耳にしたんだけど、具体的にどういう状況を指すの?
黒字倒産とは、企業が利益を計上しているにも関わらず、現金の流れが滞り、財務上の支払い能力に問題が生じて、その結果、倒産してしまうこといいます。
それは厄介だね。ところで、その状況はどうやって引き起こされるの?
主に、売上があっても代金回収が遅れたり、過剰な在庫が現金を圧迫したりなど、お金の流れをうまくコントロールできないと、この黒字倒産に陥ってしまいます。
なるほど。うちもキャッシュフロー管理は十分注意し、定期的なチェックを怠らないようにしないといけないね。
まさにその通りです。売上だけでなくキャッシュフローの健全性にも目を向け、継続的な企業運営を支える体制を構築しましょう。



売上の増加に隠された罠

「売上の増加」と聞くと、ほとんどの人はそれを会社の成功の証と捉えます。しかし、増加した売上が、実は企業を破綻に導くトリガーになることがあります。これを理解するためには、売上の増加が企業の資金状況にどのような影響を与えるのかを掘り下げて見る必要があります。
まず、売上が増えるということは、それに見合う量の商品やサービスが顧客に提供されているということです。在庫が速やかに売れることは良い兆候ですが、その在庫を補充するためには原材料や商品を購入するための資金が必要になります。急激な売上の増加には、通常、大量の在庫購入を伴いますが、この在庫を購入するための現金が手元になければ、会社は現金不足に直面します。

さらに、売上の増加は新規顧客の獲得や市場シェアの拡大を意味することが多く、これには追加のマーケティングや広告活動が必要となります。これらの活動もまた、前払いが必要なため、さらに現金の流出を引き起こします。

また、売上の増加は従業員の採用や設備投資といった、企業の成長を支えるための投資を必要とすることがあります。新しい従業員の教育や設備の導入には時間がかかり、それらが売上に寄与するまでにはタイムラグが生じます。この間に、企業は新しい投資に対する支出を継続しなければなりませんが、これが売上の即時的な現金化と同期していない場合、資金繰りの問題が生じることになります。

要するに、売上の増加は企業にとって歓迎すべき事態ですが、それが現金の流れを無視した経営がおこなわれると、運転資金の不足に直面し、黒字倒産という矛盾した結末を迎えるリスクを高めることになります。そのため、企業は売上の増加に伴うリスクを管理し、キャッシュフローを健全に保つために、適切な財務戦略を実行する必要があります。


企業の成長と運転資金の不足

運転資金の不足は企業が直面する大きな問題の一つです。
これは、企業が日々の運営を続けるために必要な資金が不足する状況を指します。上記にも述べましたが、運転資金は原材料の購入、商品の生産、従業員への給料支払い、その他日常的な費用の支払いに使用されるため、企業の運営を円滑におこなうためには欠かせない要素です。

売上が増加すると、それに比例して原材料や商品、人件費などの運転資金への要求も増大します。しかし、売上の増加による収入がすぐに現金化されない場合(例えば、売掛金が多いなど)、企業は運転資金のギャップに直面する可能性があります。

このギャップは、企業が成長期にあるときに特に顕著になることがあります。
成長期には、追加の設備投資や人員の雇用が必要となることが多く、これらは即座には収益を生まない投資です。つまり、これらの投資が将来的な収益につながる前に、企業は運転資金を支出する必要があります。さらに、新しい市場に参入したり、新しい製品を開発するための研究開発費用も、運転資金にプレッシャーをかける要因です。

運転資金の不足に対処するために、企業は短期借入やクレジットライン(与信限度額)の拡張など、外部からの資金調達をおこなうことがあります。しかし、これには利息負担が伴い、企業の財務負担を増大させることになります。また、資金繰りを改善するためには、売掛金の回収期間を短縮する、在庫を最適化する、支払い条件の再交渉などの内部管理を強化することが重要です。

総じて、運転資金の不足は企業が成長する過程で避けられない問題です。ですが、適切な財務管理とキャッシュフローの最適化によって、このリスクを管理し、企業の健全な成長を維持することが可能です。


黒字倒産に陥らないためのキャッシュフロー管理

売上の増加は企業にとって望ましいことですが、それが自動的に安定経営を意味するわけではありません。

特に、運転資金の不足は売上が上がっている状況でも黒字倒産を引き起こす可能性があります。このパラドックスを防ぐには、利益(黒字)とキャッシュフロー(現金の流れ)を明確に区別し、適切に管理することが不可欠です。
売上が増えると、それに比例して商品や原材料の購入、人件費、その他の経費の支払いが増加します。これらの支払いが顧客からの入金を上回ると、キャッシュフローがマイナスになるリスクが生じます。また、売上増加には在庫を増やす必要があり、その分だけ現金が固定されるため、流動性が低下します。

対策として、入金のサイクルを早めるために顧客への請求プロセスを改善したり、支払い条件を交渉して支払いサイクルを延ばしたりすることが有効です。さらに、厳格な予算管理をおこない、不必要な支出を削減し、予想外の支出に備えて適切に現金を準備しておくことが重要です。また、短期的な資金繰りには、クレジットラインの確保や短期ローンの利用も選択肢となります。

長期的には、売上の増加に合わせて資本の増強を図り、安定した運転資金を維持するために、キャッシュフロー予測を定期的におこない、将来の資金需要に備えることが求められます。企業が健全な成長を続けるためには、収益性だけでなく、キャッシュフローの健全性にも目を向けることが絶対条件となります。

まだまだ他にもたくさんの会計に関する今更聞けないことが存在します。一つずつわかりやすく解説していきますので、ぜひほかの「今更聞けないシリーズ」も読んでみてください。

岡本 辰徳
岡本 辰徳
株式会社YKプランニング 代表取締役社長

1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。