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ROE(自己資本利益率)とは?

2024年 9月 5日
経営管理 会計・財務

こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。

みなさまはROEという指標をご存じでしょうか。耳にしたことがある方も多いと思いますが、実際に何を意味しているのか、何がわかるのか、どう活用すればいいのか、少し難しいと感じるかもしれません。

今回は、ROEの基本的な概念を説明するとともに、中小企業経営における指標の使い方について解説します。


ROEとは?何がわかるのか

ROE(Return on Equity、自己資本利益率)は、企業が株主から預かった資本(自己資本)をどれだけ効率的に運用して利益を上げているかを示す指標です。一般的には投資家が企業の収益性を評価する際に使用します。しかし、この指標は中小企業経営者にとっても、企業の健全な成長と財務効率を評価するために有益な指標となります。
計算式は以下の通りです。

ROE=純利益÷自己資本×100(%)

この指標は、自己資本に対してどれだけの利益を生み出しているかをパーセンテージで表します。ROEが高いほど、少ない自己資本で効率的に利益を生み出していることを意味し、投資家から見て魅力的な企業と評価されます。

投資家は、自分が投資した資本がどれだけのリターンを生むかを重視します。ROEが高ければ、企業は効率的に資本を運用しており、将来的にも安定した利益を期待できると考えられます。そのため、ROEは投資家が企業の株式を購入する際の判断基準の一つとなります。


中小企業経営における活用法

一方で、中小企業経営おいては、ROEは必ずしも第一に考慮すべき指標ではないかもしれませんが、企業の健全な成長や資本の効率的な運用を図るためには重要な指標です。

以下に、ROEが中小企業経営においてどのように役立つかを説明します。

①資本の効率性を測る指標として活用する
中小企業においても、自己資本を効率的に活用できているかどうかは重要です。ROEを定期的にチェックすることで、自己資本が適切に利益を生み出しているかを確認でき、資本効率を向上させるための戦略を立てることができます。

②資本構成のバランスを見直す
ROEは、自己資本の規模が利益に対して適切かどうかを示す指標でもあります。ROEが極端に低い場合、自己資本が過剰である可能性があり、逆に高すぎる場合はリスクを取りすぎているかもしれません。ROEを通じて資本構成のバランスを見直し、適切な資本運用を目指すことができます。

③投資家や金融機関への説明資料としての活用
中小企業であっても、外部からの資金調達や投資家との関係構築が必要な場合があります。その際に、ROEを示すことで、自社の資本効率や収益性をアピールできます。これは、投資家や金融機関に対して企業の魅力を伝える有力な手段となります。

④成長戦略の策定に役立つ
ROEは、企業がどの程度のリターンを自己資本から得ているかを示すため、長期的な成長戦略を策定する際にも役立ちます。例えば、ROEを一定の水準に維持しつつ、どのように自己資本を増やしていくかを考えることで、企業の持続的な成長を図ることができます。


ROEは高い方がいいのか?

ROEは、企業が自己資本をどれだけ効率的に運用して利益を上げているかを示す重要な指標ですが、その特性ゆえに注意すべきポイントもあります。特に、借入金の影響を理解しておくことが大切です。

ROEは、自己資本に対する純利益の割合を示しています。これを簡単に説明すると、自己資本が少ないほど、同じ利益であってもROEが高くなるということです。ここで注目すべきなのが、企業が借入金を増やした場合です。

たとえば、企業が新たに借入金を増やして事業を拡大し、利益が増えたとします。この場合、借入金はBS(貸借対照表)上では負債として計上されるため、自己資本はそのままの状態です。利益が増えた分だけ純利益も増えますが、自己資本は変わらないため、ROEは上昇します。

つまり、借入金を活用することで一時的にROEを高めることができるのです。しかし、これは借入金というリスクを伴うものであり、返済義務があるため、過剰な借入によって企業の財務状況が悪化する可能性もあります。このように、ROEが高いからといって必ずしも企業が健全であるとは限らない点には注意が必要です。


投資家目線のROEと経営者目線のROE

投資家は、企業が少ない自己資本でどれだけ高い利益を生み出しているかに注目します。そのため、ROEが高い企業は魅力的に映ります。

しかし、中小企業経営者の視点では、ROEだけでなく、企業の全体的な財務健全性を考慮することが重要です。特に、中小企業においては、経営者自身が主要な投資家であることが多く、企業の長期的な成長と持続可能性を第一に考える必要があります。

このような場合、借入金を増やして一時的にROEを高めることはリスクを伴う可能性があります。中小企業経営者は、ROEの高さだけにとらわれず、返済可能性や将来のリスクを慎重に評価したうえで、適切な資本構成を維持することが求められます。


ROEとROAの違いと使い分け

ROEと似ているものとしてよく挙げられるROAという指標があります。

ROEとROAは、どちらも企業の収益性を測る指標ですが、フォーカスする視点が異なります。

ROE(自己資本利益率)は、
自己資本
に対する収益性を測る指標です。自己資本を効率的に運用できているかを示します。

ROA(総資産利益率)は、企業が保有する
総資産
をどれだけ効率的に活用して利益を生み出しているかを示す指標です。企業全体の資産運用効率を測ります。

ROEは投資家目線での指標であり、株主に対するリターンを示します。一方、ROAは企業全体の経営効率を示し、企業が持つすべての資産をいかに有効に活用しているかを表します。

中小企業経営者は、この2つの指標をバランスよく使い分けることが大切です。ROEを使って自己資本の効率を評価しつつ、ROAを使って企業全体の資産運用の効率性を評価します。このように、両方の指標を組み合わせて経営状況を総合的に分析し、持続可能な成長戦略を立てることが求められます。


ROEとROAをバランスよく活用しよう

中小企業経営者は、ROEの高低に一喜一憂せず、企業の健全な成長を第一に考えましょう。

特に、借入金によるROEの変動には注意し、資本効率の改善と同時に、長期的な財務の安定性を維持することを心がけるべきです。ROEと ROA をバランスよく活用し、自社の経営戦略に役立てることで、持続可能で強固な経営基盤を築いていくことができるでしょう。

岡本 辰徳
岡本 辰徳
株式会社YKプランニング 代表取締役社長

1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。