2022.08.10
今期予算のデータから、
現時点の実績と今後の方向性をチェック
西日本食品工業株式会社 ✕ 税理士法人アイ・パートナーズ
西日本食品工業株式会社の代表取締役 長田氏と、税理士法人アイ・パートナーズの山田氏・石渡氏(以下ビサイダー)の絶妙なチームワークで、スタートから順調に回を重ねる「bixider経営支援プロジェクト」。その第5回定例ミーティングが、2022年4月中旬、熊本と横浜を結ぶオンラインで実施されました。
今回のミーティングでは、bixidに反映させた今期予算(2022年2月~2023年1月)のデータから、現時点の実績と今後の方向性をチェック。以下2項のTASKを通して、今期2・3月の実績をモニタリングしながら、4月以降の見通しや会計処理などの詳細を確認していくことになりました。
<TASK1> bixidのモニタリング機能で、今期2月・3月の実績を予算(計画比)ベースで確認し、4月以降の方向性についても共有
<TASK2> 「月次棚卸の計上」に関する長田社長の質問を受けて、ビサイダーが基本的な考え方と具体的な処理方法について解説
今期2・3月の売上目標の達成率は…?
アイ・パートナーズ 山田(以下ビサイダー)
前回までのミーティングで、bixid上に今期予算(2022年2月~2023年1月)のデータが積み上がりましたので、あとは詳細を調整しながら月々の実績を入れていけば、計画と対比させて確認できる状態になっています。すでに2・3月の実績を長田社長に入れていただきましたので、さっそく2ヵ月分のモニタリング結果から見ていくことにしましょう
まずビサイダーはbixidの損益ダイジェストを開き、長田社長と画面を共有しながら2・3月の売上実績を計画比でモニタリング。その結果、2・3月の売上累計は、計画に対して96.2%の達成率(3.8%の未達)という数値が示されました。
長田社長
今期に入ってから全体的にちょっと勢いがないな…と私自身も感じていましたので、そうした部分がマイナス3.8%という数字に表れたと受け止めています
ビサイダー
この3.8%の未達分は、さほど大きな金額ではないものの、多少ながらも達成できなかった要因というのは、長田社長ご自身でなにか思い当たりますか
長田社長
現時点で考えられる要因としては、ここ最近の世界的な物流混乱で、コンテナ単位の大口取引となる春雨などの輸入商品の動きが、4月以降に期ずれしてしまっているのが一番大きいと思っています。
ただ、今期の月次売上予算は、私が示した年間の売上と粗利の目標額をもとに、営業部が顧客単位・商品単位・月単位で細かく検討した数字ですし、やはり『勢いがない』と感覚的に思う部分もありますので、4月以降になんとか挽回していかなければと気を引き締めています
さらに長田社長は、今期の懸念材料として「原料費の高騰」と「為替の変動」を挙げ、今後の見通しが立てにくい状況にあると語りました。
長田社長
今期は原料高に加え、輸入物の船賃なども上がっていますので、今後は販売価格に転嫁していくことも検討しています。また、ここ最近、為替の変動が予想以上に大きいのも気になる点です。現在、今期計画を立てた1月より10円以上円安になっており、今後どれほどの影響が出るのか読めない状況です
ビサイダー
そこで着実に粗利を上げていくためには、月々の変動費の動きをリアルタイムに把握し、早め早めに次なる手を打つことが重要になってくるでしょう。そうした意味で、今期から経費処理の方法を切り替えられた(現金主義 ⇒ 発生主義)メリットは、非常に大きいと思います。
これにより、bixid上でも毎月の経費や実績の進捗などを、より高い精度で確認することができますし、私どもでも各変動比のKPI(売上変動比率・売上原料比率・売上包装比率・売上荷造り比率・売上外注比率)を設定してみます。これに沿って、4月以降も決算着地に向けて数値をモニタリングしながら、新たな戦略や軌道修正すべき部分があれば、適宜bixidに反映させていきましょう
月次棚卸の仕訳や処理方法についてアドバイス
続いて長田社長から、毎月の棚卸高の計上に関する質問がビサイダーに投げかけられました。
長田社長
今期から棚卸の数字を毎月計上しようと考え、ひとまず2・3月分をbixidの試算表に入れてみたのですが、月初に設定する期首商品棚卸高は、どのように評価・処理すればいいのでしょうか
ビサイダー
これまでは各事業期の期首に期首商品棚卸高(前期決算末に残った在庫商品の額=貸方商品)、期末の決算時に期末商品棚卸高(当期決算末に残った在庫商品の額=借方商品)という仕訳で処理されていたと思いますが、それを毎月起こすと考えていただけばわかりやすいと思います。つまり、月次決算という形で前月末に残った在庫を月初の期首商品棚卸高、当月に残った在庫を月末の期末商品棚卸として計上するわけです
長田社長
ということは、月初の期首商品棚卸高は、毎月数字が変わってくるんですね
ビサイダー
おっしゃる通りです。月末に評価した期末商品棚卸高は、貸借対照表の<商品>として表示され、そのまま翌月初に引き継がれます。たとえば、2月の期末商品棚卸高は、2月の貸借対照表の<商品>として表示され、3月の期首商品棚卸高となります。そして、3月の貸借対照表の<商品>には、3月の期末商品棚卸高が表示されることになります(下記図表参照)
※金額はイメージになります。
長田社長
これまでは、決算時に期首の在庫と実際の棚卸を比較して実数を把握していたので、期首の数字はずっと変わらないものと考え、今期3月の期首商品棚卸高に、2月の期首と同じ数字(前期末の金額)を入れていました
ビサイダー
社長のお考えは、基本的に間違いではありません。ただ、当初(2月)の期首商品棚卸高をそのまま毎月計上していくと、棚卸の金額がどんどん溜まっていって、かなり煩雑な決算書になってしまうんですね。そこで、積み上げ過ぎた数字をリセットするために、毎月、期末商品棚卸高という科目を使って“逆仕訳”をしていくのです。
もちろん、数字を積み上げたまま進めても最終的な結果は変わりませんが、毎月の数字をリセットすることで、スッキリと見やすい決算書になりますし、月々の利益の増減も実数で把握できるようになります
長田社長
なるほど、説明をうかがって納得しました。さっそく教えていただいた方法で3月の数字を修正しつつ、今後の処理も同様に進めていきたいと思います
会計処理の切り替えや営業のモチベーションについて
こうして今回のTASKが完了し、いつものように長田社長とビサイダーの間で、第5回ミーティングの振り返りトークが交わされました。
ビサイダー
今期より発生主義で経費を計上されていますが、現金主義からの切り替え作業はどのような段取りで進められたのですか。かなりスピーディーに、スパッと切り替えられましたよね
長田社長
前々回のミーティングで、現金主義から発生主義への切り替えを提案いただき、これは急務だと思ってすぐに作業に取りかかりました。
じつは会社の経理は妻が担当していまして、2月から発生主義で処理してほしいと伝えたところ、最初は『え~!?』って反応でしたね(笑)。やはり会計処理の方法を短期間で変えるのは、かなり手間のかかる大変な作業ですから。そこで『毎月の数字を、より正確&リアルタイムに把握したい』と趣旨をはっきり伝え、私も仕訳の作業を手伝いながら完了させた次第です
ビサイダー
そうでしたか、奥様に大感謝ですね(笑)。私も今期計画の進捗を確認した際に、2月から発生主義の処理へ完璧に切り替わっているのを拝見し、『これは速い!』と感嘆いたしました。
あとひとつ、ミーティングの冒頭で『2・3月は勢いがなかった』と話されていましたが、どういった部分でそう感じられたのか、教えていただけますか
長田社長
今期に入って顧客数が減ったわけではないものの、一発注当たりの数量が、全体的にちょっと減少しているんです。加えて、営業担当もいまは値上げの交渉が中心なので、ストレスが二重になってモチベーション的にもダウンしている。そのあたりのモヤモヤとした状況が、いろいろと関係しているように思います。
そうしたなか、3月に出した新商品の反応が良好なので、『これは売れる!』とモチベーションを上げて、積極的に攻めていこうと奮闘しています
ビサイダー
そのあたりも、bixidのKPIなどを活用することで、営業の方のモチベーションアップにつなげていきたいですね。今期は原料高や為替変動、流通混乱など、外的な懸念材料も多々ありますが、私たちも長田社長を全力で応援してまいりますので、勢いをつけてこの波を乗り越えていきましょう!
今回のPOINT!
(ビサイダー 山田氏)
・4月以降も計画に対する実績をモニタリングしながら、新たな戦略や軌道修正すべき部分があれば、適宜bixidに反映させていきましょう
・毎月の棚卸額は、前月末に残った在庫を月初の期首商品棚卸高、当月に残った在庫を月末の期末商品棚卸として処理していきましょう
月次決算を行う際のポイントととして「発生主義による経理」と「月次でのたな卸し」があります。前回までに課題点として挙がったこの2点が改善されたことによって、月次単位での数字の見える化の精度が確実に上がっているようですね。
これまで以上に正確な利益が把握できるようになってきてますので、次は更に現実に近い決算予測を作成することが可能になります。決算の着地が楽しみです!
活用するbixidの機能
西日本食品工業株式会社
「食で命を育み、子どもたちの明るい笑顔を世界に広げる」を企業理念に掲げる、1950年創業の老舗食品メーカー。主力商品の春雨は、中国に古くから伝わる製法にこだわり、その伝統の技と手作りの味を守り続けている。
代表取締役:長田 和也
本社所在地:熊本県熊本市
創業:1950年
事業内容:春雨や粉物などの食品製造・輸入・販売