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部門別管理の本質 チームワークの見える化

2021年 4月16日
会計・財務 業務改善

こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。

みなさんは「部門別損益計算書」って作成していますか?今回は、それを作成するメリット&ポイントについてご説明します。

突然ですが、アメリカンフットボール(以下アメフト)はご存じでしょうか。アメフトは日本ではなじみの薄いスポーツかもしれませんが、ルールがわかるととても面白い競技です。
特にそのルールの中でも「無資格レシーバー」と呼ばれるポジションがあることを知っている方はそう多くないと思います。「無資格レシーバー」とは、ボールに触れない選手のことです。フィールドを走りまわっているのにボールに触れないってどういうこと?と思うかもしれませんが、チームの勝利には「無資格レシーバー」がとても重要な役割を担っているのです。

今回のタイトルである「チームワークの見える化」は、会社における「無資格レシーバー」というポジションを理解することが決め手となります。


まずは分解してみる

部門別損益計算書を作成するのは難しいと思われがちですが、実はそれほど難しいものではありません。しかし、本来作成するべき規模感の会社でも作成されていないケースをよく見かけます。

その理由の一つは、これを作成することが、会社や経営者にとってどのようなメリットがあるのかを理解されていないためだと思います。

部門別損益計算書は、普通の損益計算書だけでは発見できない課題点や問題点をあぶり出すために有効な手段だといえます。例えば、以下の単純な損益計算書を見てみましょう。

(表1)

この会社は3人で経営しており、Aさんが商品aを販売、Bさんが商品bを販売、Cさんはバックオフィス業務を担っています。
3人のチームワークは良好で、結果として利益が出ているのでなんら問題はありませんが、各人ごとの成果を把握するために分解してみると、次のような部門別損益計算書になりました。

(表2)

分解の結果、Aさんはプラス(黒字)、Bさんはプラマイゼロ、Cさんはマイナス(赤字)という結果となりました。皆さんはこれを見てどのような感想を抱くでしょうか? 

・AさんがBさんとCさんの分も稼いでいる
・Cさんがいるから、AさんBさんは本業に専念できている
・BさんはB商品を販売するのをやめて、儲けが多いA商品を販売したほうがいい
・Cさんの赤字はAさんBさんに割り振るべきじゃないか?
・やり方を変えればもっと利益が出るんじゃないか? 

などなど、いろんな立場からいろんな意見が出てきます。
最終的にこの3人が納得しているのであれば、周りがとやかくいう事ではありませんが、表1の損益計算書を見ただけでは、このような意見を出すことはできません。

ここではシンプルにヒト別に分けただけですが、議論すべきポイントがいとも簡単に見える化されるというのが、この部門別損益計算書の素晴らしいところです。


非売上計上部門の存在

部門別損益計算書を作成するコツは、まず売上が計上される部門と計上されない部門に分けることです。
売上が計上される部門については、取り扱っている商品別や、粗利益別、店舗・拠点・エリア別など、会社の状況に応じて細分化して、利益の源を正確に把握することが重要となります。各部門ごとに、売上高-仕入高=粗利(粗利率)を把握することで、稼ぎ頭の部門であるとか、足を引っ張っている部門であるとかを客観的にとらえることができるようになります。

また、できる限り各部門ごとにかかっている経費も分類していきましょう。今回の例では人件費だけしか把握していませんが、例えばAさんBさんが営業のためにそれぞれ乗っている車の維持費だとか、各人が使っている電話代や交際費などを把握して分類することで、より正確な部門ごとの利益を把握することができます。

一方で売上が計上されない部門、いわゆるバックオフィス部門は、別名“共通部門”と呼ばれており、先ほどの例でいうCさんのポジションです。AさんBさんに対して直接割り振ることができない費用を、Cさんが抱えるというイメージなります。共通部門は売上が計上されない部門なので、ないがしろにされがちですが、部門別損益計算書を理解するうえで、この共通部門を大切に扱うことが最大のポイントとなります。
ここで集計される費用のことを共通経費と呼び、後ほどAさんBさんの部門へ割り振りを行います。このことを“配賦(はいふ)”と呼び、配賦前と配賦後のAさんBさんの利益を比べることで、課題・問題の本質が見えてきます。

無資格レシーバーは重要な攻撃の要

売上が計上されない総務部門や経理部門は、バックオフィスや共通部門と呼ばれているのでどうしても守りのポジションという印象があり、場合によってはそのポジションを重視していない経営者も少なくありません。

冒頭に述べたアメフトの「無資格レシーバー」というポジションは、攻撃の際の要である、センター1人、ガード2人、タックル2人の最前列に並ぶ5人のユニットです。彼らはボールに触ることができませんが、他の6人がボールを持って敵陣に攻め込むために体を張って道を開ける役割を担っています。

会社の経営もそれぞれのポジションで日々戦っています。花形のポジションがあれば、縁の下の力持ち的なポジションもあります。それを見える化するのが部門別損益計算書の目的です。

ある一定の売上規模を超えてくると会社は部門別計算計算書が必要だと言われていますが、私としては、それぞれの役割分担を数字で見える化したい場合には、規模にかかわらず部門ごとの成果を把握すべきだと考えています。特に部門別損益計算書を作成することで、非売上計上部門に対する見方が変わってくるのではないかと思います。 

ボールに触ることが許されない選手も一緒になって戦っているチームと、そうでないチーム、どちらが強いかはだれが考えてもわかりますよね。
部門別損益計算書はそれを見える化してくれる経営者の道具だと理解しましょう。

岡本 辰徳
岡本 辰徳
株式会社YKプランニング 代表取締役社長

1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。