【経営ウォッチ】星野リゾートの強いチーム創りとは
コロナ禍の現状で苦しむ旅行業界の中で、リーダー的存在となっている星野リゾート。「星のや」「リゾナーレ」「界」「OMO」といったそれぞれに個性豊かなブランドを確立し、国内の宿泊施設の中で今や圧倒的な顧客支持を誇り、業界をけん引していると言っても過言ではありません。
コロナ禍では様々な業界がそれぞれに苦境に喘いでいるわけですが、中でも旅行業界は苦しい立場に追い込まれていると言えるでしょう。
そんな業界内でリーダー的存在となっている星野リゾートですが、高い顧客満足度を得ている根底にはスタッフのサービス提供力があります。
素晴らしいサービスを提供する一流のスタッフを育てるために、星野リゾートは何をしているのでしょうか。
今回は、そんな星野リゾートの「人材育成」について、組織のあり方や職場環境といった視点から見ていきたいと思います。
「フラットな組織文化」で正しいコミュニケーションを促す
まずは組織のあり方から見てみましょう。
星野リゾートは、そのあり方として「フラットな組織文化」を掲げているのですが、これはどういう内容なのでしょうか。
代表を務める星野佳路氏によれば、機能的に作った組織図はやはり権限を持った人の名前が上の方にあり、そこは一般的な会社組織と変わりがないのだそう。「フラットな組織文化」と聞くと組織レイヤーがフラットなのかと考えてしまいがちですが、そうではなく、フラットな「文化」を醸成することが大切だと氏は述べています。
つまり、権限を持つこと、責任者であることも一つの仕事ではありますが、その責任者が特別に「偉い人」である必要はないというのが星野リゾートの掲げる「フラットな組織文化」のポイントです。
組織上権限のある人物や責任者が「偉い人」であると感じているスタッフは、彼らに直接的に意見を述べることを遠慮してしまう傾向があります。反対に、一人一人が感じていることを自由に述べられるようになれば、意見交換はおのずと活発になり、組織としての健全な意思決定につながる、というわけですね。
フラットな文化づくりの一環として、同社ではホテルや旅館経営の中でトップの立場である総支配人から新入社員まで、皆が「さん」付けで呼び合うようにしているのだそうです。
スタッフが発想・判断・行動するための環境を提供する
それでは次に、一人一人が行動するための職場環境づくりについて見ていきます。
ホテルでのサービス業務では、顧客から何らかの要望があった時、それを受けたスタッフがその場で判断を下さなければなりません。
そのため、いわゆる一般的な社員教育を行うのではなく、スタッフが自分で発想・判断し、行動する領域をできる限り広く設定する環境を提供するのが、経営陣の仕事であると星野氏は述べています。
稼働率や売上、費用、顧客満足度などの情報を公開
稼働率や売上、費用、顧客満足度といった経営に関する情報は、経営陣内では共有されていても末端のスタッフには知らされていないということが多いものです。
経営情報を知らないスタッフが休憩所などで、「なぜあんな設備を作ったのか」「上は何も分かっていない」などと愚痴を言い合うのは、何もホテル業界に限らず、どこの会社でもよく見られる光景ではないでしょうか。
しかし、それぞれの施設の経営状態を知ることができれば、「あの設備を作ったのは顧客満足度を高めるために必要なことだ」などと理解することが可能になります。
スタッフ一人一人が、経営者の視点になることができ、それによってスタッフ自らの責任で方向を決定することができるようになっていく。それがまた、星野リゾートの掲げる「フラットな組織文化」にも繋がっていくのです。
まとめ
「スタッフ一人一人が経営者の視点を持って事業に臨んでほしい」
これが星野リゾート代表 星野氏の考えです。
一般のスタッフが、責任ある立場のスタッフに対して臆せず自分の意見を述べられる環境づくりと、一人一人が自発的に考え、行動することを可能にするトレーニングと情報開示。星野リゾートの考える「強い組織=チーム」は、それが根底にあります。
このような強い組織を築いたからこそ、業界のリーダー的存在になることが可能だったというわけですね。