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財務分析‐効率性編‐事業は人なり

2021年 8月26日
経営分析 会計・財務 bixid活用

こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。

これまで会社の財務分析を「顔=収益性」「上半身=安全性」「心臓=資金力」と3回に分けて解説してきましたが、今回は全4回シリーズのラスト「下半身」について解説していきたいと思います。

陸上競技において、短距離走選手は「硬く伸び縮みしにくい筋肉」のほうがパフォーマンスが高く、一方長距離選手は「柔らかく伸び縮みしやすい筋肉」のほうがパフォーマンスが高いという論文が2019年7月に順天堂大学より発表されました。

このような科学的な分析を活用することで、体格的に不利な日本人には難しいと言われ続けた100メートル9秒台を、近年実現させました。

では別の競技ではどうでしょうか?それぞれの競技において最大限のパフォーマンスを引き出すための下半身は違います。

これは会社経営も同じです。企業に合った下半身とはいったいどんなものでしょうか?
今回はそんな会社の下半身(瞬発力、持久力)を評価する3つの財務分析指標について解説していきます。


①一人当たり売上高

まず最初は「一人当たり売上高」です。別名「パーヘッド」と呼ばれるもので、企業経営の効率性を測る指標としては絶対に欠かせないものです。“ヘッド”という言葉がついているので下半身っぽくありませんが、私的には完全に下半身の状態を示す指標だと考えています。

イメージで言うと下記の図のように、会社の売上を何人の足で支えているか?といった感じを想像してください。

特にこの指標は、同業のライバルと比較するときにとても力を発揮します。

例えば、同じようなシステムを開発しているA社とB社の売上高がそれぞれ1億円と3億円だったとしましょう。次にそれぞれの従業員数はA社が5人、B社が30人とすると一人当たり売上高は以下のようになります。

A社:1億円÷5人=2000万円/人
B社:3億円÷30人=1000万円/人

比較してみると、A社のほうが断然一人当たりの売上高が高いことがわかります。

売上高だけで比較すると年商3億円のB社のほうが3倍も大きいのですが、実際には売り上げの少ないA社のほうが効率よく売上を上げていることになります。

この指標から、B社の従業員よりもA社の従業員のほうが給料も高く、モチベーションも高いのではないかと推測できます。いわゆるA社はB社に比べて「少数精鋭」で賢く経営をしていると評価できます。

この売上高を、売上総利益(粗利)や営業利益に置き換えると、「一人当たり売上総利益(粗利)」や「一人当たり営業利益」も計算することができます。

ライバル会社と競争する場合には、一人当たりの売上高を見誤るとスタミナ切れを起こしてしまいます。売上高単体で見るのではなく、必ず一人当たりの売上高を比較して作戦を練りましょう。


②簡易労働分配率

正しい「労働分配率」を計算するためには「付加価値」と呼ばれるものを算定しなければならないのですが、ここではそのような小難しいことは考えずザックリ解説します。それゆえ、名称を「“簡易”労働分配率」としています。

従業員に支払う給料は、売上高から変動費を差し引いた限界利益が源(みなもと)となります。この限界利益に占める人件費の割合のことを簡易労働分配率と呼んでいます。人件費には役員報酬、給与、賞与のほか社会保険料などの法定福利費も含めて計算するのが一般的です。

売上高-変動費=限界利益
人件費÷限界利益×100=簡易労働分配率

簡易労働分配率の目安は50%ですが、大企業になればなるほどこの率は低くなり、中小企業になればこの率が高くなる傾向にあります。

一見、簡易労働分配率は低いほうが会社としての利益が残るように見えますが、この率が低すぎる場合には、捻出した限界利益がバランスよく分配されていなかったり、ライバル企業と比べて従業員を低賃金で雇用してしまっているといった可能性があります。

一方で簡易労働分配率が高い場合には、捻出できる限界利益が少ないにも関わらず大盤振る舞いをしてしまっている可能性や、そもそも限界利益に見合わない人数と給与水準になっている可能性があります。

あくまでもこの簡易労働分配率はバランスが重要で、業界ごとに数値が異なる傾向にあります。この指標も自社単体でみるのではなく、ライバル企業と比較することで客観的な評価としてとらえましょう。


③平均年収

人件費÷従業員数=平均年収
※人件費からは役員報酬、従業員数からは役員数を外すのが一般的です

非常にシンプルな指標ですが、これもまた下半身を見るためには重要な指標の一つです。

平均年収に関してはライバル企業との比較も必要ですが、それ以上に同地域にある異業種との比較もすべき特殊な指標です。特に地方でしのぎを削る中小企業にとって、優秀な人材の確保はとても重要です。

一方で従業員側の思いとしては、少しでも豊かな生活を送るためには給与額が多いに越したことはありません。専門的でハイスキルな職種ではない限り、給与面で従業員が他社に流出してしまうことも十分にあり得ます。

この指標は従業員のモチベーションに影響し、低いと定着率や帰属意識に影響がでます。そのため、まずは自社の平均年収が、地域でどの水準にあるのか、さらには同業種内でどの水準にあるのか、優秀な人材の確保に視点を置いた指標として理解しましょう。


まとめ

以上、会社の下半身を見る財務分析指標3つを解説しました。

もうお気づきだと思いますが会社の下半身を支えているのは従業員が絡む指標ばかりです。企業はすべて人で成り立っています。これらの指標を意識することは従業員を意識していることと同じ意味になります。

「事業は人なり」是非とも会社の下半身=従業員にも目を向けた経営をしましょう。