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今更聞けない「限界利益」とは

2023年12月 7日
経営管理 会計・財務

こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。
今回は、今更聞けない会計のこと「限界利益」についてご説明します。

とある日常、経営者と会計事務所の担当税理士との会話。

知り合いの経営者が「限界利益」が大切だって言っていたんです。でも、正直その大切さがピンと来てないんですよね。そもそも「限界利益」って売上から何を引くんでしたっけ?
限界利益を簡単に説明すると、売上から変動費だけを引いたものですね。つまり、一つ商品を売るたびに、どれだけ利益がプラスになるか、その金額のことなんですよ。
じゃあ固定費は関係ないんですね。でも、どうしてそれが重要なんですか?
いい質問ですね。限界利益を把握することで、どのくらいの売上があれば固定費をカバーできるか、つまり「損益分岐点」が分かるんです。これが分かれば、より戦略的な価格設定やコスト管理ができるようになるんです。
なるほど、それは結構使えそうですね。でも、変動費と固定費の区別がイマイチ…
そこは私の方でしっかりサポートいたします。改めて、まずは限界利益について解説しますね。


限界利益と粗利の違い

変動損益計算書(変動費法に基づく損益計算書)における「限界利益」とは、売上から変動費を差し引いたものです。変動費とは、生産量や販売量に応じて増減する費用で、原材料費や直接労務費などのことです。限界利益は、変動費をカバーした後の売上の「余剰」部分を意味し、固定費を賄える利益がどれだけあるかを示します。

一方で、通常の損益計算書(総費用法に基づく損益計算書)における「売上総利益(粗利)」は、売上から売上原価を差し引いたものです。この売上原価には変動費だけでなく固定費も含まれることがあります。粗利は、製品の売上に対する利益性を示し、売上原価を差し引いた後の売上の「純」部分を意味します。
簡単にまとめると、限界利益は変動費のみを考慮に入れますが、粗利は製品の売上原価全体(変動費と固定費を含む)を考慮に入れます。そのため、限界利益は固定費の影響を受けないが、粗利は固定費の影響を受けます。


限界利益を計算する目的とは?

変動損益計算書で限界利益を見る目的として、企業の損益分岐点売上高を算出することが挙げられます。損益分岐点を特定することで、企業がどのくらいの売上高であれば固定費を賄えるか、つまり利益が発生し始めるかを把握できます。

損益分岐点売上高とは、製品・サービスから得られる総収入が、総費用(固定費と変動費の合計)と等しくなる点、つまり利益も損失も発生していない「ゼロ利益」の状態になります。
(詳しくは今更聞けない「損益分岐点」のブログをご覧ください)

その他にも、変動損益計算書と限界利益を基にした分析を通じて、経営者はさまざまな経営判断をおこなうことができます。
損益分岐点の分析以外での限界利益の活用方法は、以下の通りです。

①意思決定のための情報提供
価格変更、追加投資、コスト削減策、新製品の導入などの経営上の意思決定の際に活用できます。価格設定においては、限界利益を考慮に入れることで、市場の動向に合わせた効果的な価格戦略が可能になります。

②コスト構造の分析
企業のコスト構造を詳細に分析することにより、変動費と固定費のバランスを最適化し、コスト削減やプロセスの改善を通じて利益を増やす方法を見つけ出すことができます。市場ニーズが変動する際には、この柔軟なコスト構造の理解が企業の迅速な対応を可能にし、競争力の維持を助けます。

③ビジネス拡大の判断
企業が規模を拡大するときの利益の増減を予測し、ビジネスモデルの持続可能性を評価するために使用できます。

④利益の最大化
限界利益は最大化するための製品ミックスや販売戦略を考える際に重要な指標となります。限界利益が最も高い製品を把握することで、どの製品にリソースを割り当て、製品ラインナップをどのように調整するかの判断もできます。 

⑤安全余裕度の分析
損益分岐点分析をおこなうことで、企業が損益分岐点に達するために必要な売上の量を把握し、現在の売上がその点からどれだけ離れているかを通じて、企業の安全余裕度を評価することができます。この分析は、事業の将来に関するリスクを管理し、収益性の高い製品や市場への集中投資、逆に利益が出にくい事業部門の縮小や撤退といった戦略的な意思決定をおこなう際の基盤となります。

限界利益を経営に活用しよう

限界利益を中心に置くことで、企業はより柔軟に市場の変化に対応し、効率的な経営を行うための戦略を立てることが可能になります。
経営者は不確実性を減少させ、より情報に基づいた戦略的な意思決定をおこなうことができるようになり、結果として企業の総合的な経営改善の実現に繋がります。

まだまだ他にもたくさんの会計に関する今更聞けないことが存在します。一つずつわかりやすく解説していきますので、ぜひほかの「今更聞けないシリーズ」も読んでみてください。

岡本 辰徳
岡本 辰徳
株式会社YKプランニング 代表取締役社長

1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。