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今更聞けない「自己資本比率」

2022年 8月10日
経営管理 会計・財務

こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。
今回は、今更聞けない簿記・会計の用語として「自己資本比率」についてご説明します。

とある日常、経営者と会計事務所の担当税理士との会話。

先日、とても尊敬している有名な経営者の講演会に参加したんだけど、そこで「自社の自己資本率って把握できていますか?」とみんなに質問が投げかけられてね。
社長は答えられましたか?
いや、ぶっちゃけ今でも答えられないんだよね(笑)
それでしたら今から「自己資本比率」について一緒に確認してみましょう。


「自己資本」

“自己資本”とはその名の通り、自己(=自社)の資本(=元手)のことをいいます。
別名“純資産”ともいわれます。自己資本は次の2種類からなります。

1.誰にも返済する義務のない元手・・・・・資本金、資本剰余金
2.これまでに積み上げてきた利益・・・・・利益剰余金

上場企業や大企業の場合は、事業の途中でも元手を追加(増資)することがありますが、中小企業で増資がおこなわれるケースはそう多くはありません。
よって、中小企業の場合は、この元手(=資本金)は、事業を開始した時に用意した元手のことだと理解して問題ありません。

ちなみに、資本剰余金の「剰余」とは「余り」のことであり、元手として用意したお金のうち、会計上資本金勘定にはせず「剰余金=余りのお金」として処理した金額のことです。
なぜ剰余金とする場合があるのかはここでは割愛しますが、この剰余金も事業を始めるために最初に用意した元手であることに変わりはありません。(なお、ほとんどの中小企業では資本剰余金が使われているケースはありません)

2つ目の利益剰余金は「利益の余り(残り)」です。
事業を開始したばかりの時は、当然ながら利益剰余金は0です。それから1年、2年、3年・・・と事業を続けるごとに利益を出せば、この利益剰余金勘定が貯まっていきますし、赤字を出し続ければマイナス(損失)が増え続けていきます。
このように純資産は「最初に用意した元手」と「これまでに積み上げてきた利益」の2つから構成されていることを理解しましょう。


「自己資本比率」とは

健全な事業(黒字経営)をおこなっていれば、年数が経てば経つほど「利益剰余金」が増え、自己資本(純資産)が充実していきます。

では、どれくらいの割合まで増えれば安全性の高い会社になるのか?
それを表す代表的な指標が「自己資本比率」です。

一般的に安全圏のラインとされる自己資本比率は30%以上で、50%を超えてくるとかなり良好な状態と判断することができます。自己資本比率の目安は業種によって一概には言えないところもありますが、とにかく多いに越したことはありません。
上記の図をみてわかる通り、会社の総資産1,000に対して、純資産(自己資本)300が占める割合(30%)のことを自己資本比率といいます。

自己資本比率は会社の健康状態を端的に表している代表的な指標です。

上記で述べたように、自己資本が充実しているということは、これまで着実に利益を積み上げてきた証拠になります。着実に利益を積み上げてきている会社の顔はいつもイキイキしています。
逆に、赤字続きの会社の顔には覇気がありません。強いて言えば、自己資本比率は経営者自身の表情に表れてくる指標です。

自己資本比率を意識することは、自分の会社に自信が持てているのかどうか、鏡の前で自分の顔を眺めるのと同じような意味合いのモノなのです。

現在の自社の自己資本比率が何%であるか、今すぐに貸借対照表で確認してみましょう。


自己資本比率増減のメカニズム

現時点の自己資本比率の意味合いがわかったところで次に必要なことは、これから先、自己資本比をどのようにして充実させていくのかということです。
そのためには、自己資本が増減するメカニズムを理解することが重要です。

①黒字になると自己資本比率が増える

②赤字になると自己資本比率が減る

③負債が減ると自己資本比率が増える(利益の増減はここでは無視)

④負債が増えると自己資本比率が減る(利益の増減はここでは無視)
上記①③からわかるように、「黒字を出す」か「負債を減らす」と自己資本比率が上がります。
逆に、②④のように「赤字を出す」か「負債を増やす」と自己資本比率が下がります。

この中で一番注意しないといけないのは④の「負債が増えると自己資本比率が減る」です。

事業の成長を考えるうえで、借入金の調達は必要不可欠な手段です。
ところが、自己資本比率、つまりバランスを考えずに借入金をどんどん増やしてしまうと、気がついたら借金体質の会社になってしまいます。
借金体質のままある程度の規模になってしまうと、いつまで経っても借金の返済のために事業をおこなっているような感じなってしまいます。

時間をかけてコツコツ利益を積み上げるのと同時に、バランスのとれた借入金の調達および返済計画を立てることで、安心して経営のできる自己資本の充実と理想的な自己資本比率を目指しましょう。

今回は今更聞けない「自己資本比率」について解説しました。

まだまだ他にもたくさんの財務分析が存在します。一つずつわかりやすく解説していきますので、ぜひ他の「今更聞けないシリーズ」も読んでみてください。

岡本 辰徳
岡本 辰徳
株式会社YKプランニング 代表取締役社長

1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。