続・今更聞けない「試算表」
こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。
今回は、今更聞けない簿記・会計の用語として「試算表」についてご説明します。
とある日常、経営者と会計事務所の担当税理士との会話。
「月次決算」と「試算表作成」は同義語
試算表とは、その名の通り“試しに計算するための表”です。
試しに(仮に)何を計算(作成)しているかというと、みんなが大好きな「損益計算書(以下PL)」と「貸借対照表(以下BS)」です。
本来、PLやBSは、年に一度の決算のタイミングで作成します。1年間の儲けや損のほか、決算時点の現預金残や債権債務残、借入金残などを明確にして、申告・納税のために利用したり、銀行に提出したりします。
また一方で、PLやBSは、会社の健康状態を把握するのにとても重要な役割を持っています。ところが、年一回作成ではタイムリーな判断ができないのが実情です。
そこで、経営にPLやBSを活かすために、それらを月次で作成することが求められます。月単位である程度正確なPLやBSを作成することを“月次決算”と呼んでいます。
ここで“ある程度”と表現したのは、年一回作成する“正確な”PLやBSと区別するためです。
「決算」という表現は、堅苦しく小難しいイメージを持ってしまいます。
確かに、年に一度の決算作業は事務方にとっては一大イベントです。しかし、一般的な中小企業であれば毎日および毎月やるべきことをちゃんと処理していれば、それほど大掛かりな手間と時間がかかるものではありません。
月次単位でやるべきことをしっかりおこなっていれば、12カ月目に迎える本決算は特別なものではありません。
これらの作業を毎月単位でおこなうことで、ある程度正確なPL・BS(=試算表)を作成することが可能です。
試算表をタイムリーに作成する目的とは?
では、なぜ試算表をタイムリーに、しかも月次単位で作成する必要があるのでしょうか?
試算表とは、ある程度正確な月次単位のPL・BSと説明しました。つまり、試算表とは「損益計算書」と「貸借対照表」のことで、いわゆる「決算書」なのです。ゆえに、試算表を作成することを「月次決算」と呼んでいます。
決算書は、人間でいう健康診断書であり、会社の健康状態を知るための資料が「試算表」です。
体重や体脂肪率のチェック、血液の流れ、血管のつまり具合、胃や腸のポリープの有無など、毎月1回チェックしている人と、年に1回チェックしている人だと、どちらが健康状態を保つことができるかは言わずもがなです。
健康診断も試算表もそれを作成すること自体が目的ではありません。
そこに記載されている数値から見えてくるものに対して、安心できる数値であればそれを維持し、安心できない数値であれば、それをどう改善すればよいのかを考えることが目的です。
そのためにも試算表はある程度の正確性が必要です。
など、一見数字は記載されていますが、“ある程度正確な試算表”とは言いづらいものだとすると、それはあまり意味のない試算表です。記載されているその数字に基づいて、安心であるのかそうでないのか判断ができなければ、試算表を作成する意味がありません。
まずはタイムリーな試算表作成にこだわろう
試算表を作るにも“うまい・へた”が存在します。
誰が作っても同じものができあがるかと思われがちですが、作成する人のスキルによって完成品の出来栄えが変わってきます。
ただし、これは社長が身につけるべきスキルではなく、経理スタッフや会計事務所が身につけるべきスキルです。社長に求められる試算表に関するスキルとは、そこに書かれている数字が意味するところを理解し、それを経営に生かせるようになることです。
「数字は経営するうえで大切だと思うけど、どうすればいいかわからない」と思われている社長は少なくはありません。ステップとしては、社内に経理部があれば経理部に、そうでなければ会計事務所に依頼して、まずはタイムリーにある程度正確な試算表が作成できる体制を整えることです。
次に、その試算表を活用するために知識を身につけたり、専門家に相談したり、システム等を利用して数字の見える化をしたり、といったステップになります。
数字を勉強したくても「試算表が2~3か月遅れ」の状況では、なにもできません。まずは、ある程度正確な試算表を「タイムリーに作成すること」にこだわってみましょう。
今回は、今更聞けない「試算表」について解説しました。
まだまだ他にもたくさんの会計用語が存在します。一つずつわかりやすく解説していきますので是非ほかの「今更聞けないシリーズ」も読んでみてください。
1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。