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緊急事態に備えた資金繰り対策とは?

2023年 4月20日
会計・財務 業務改善

こんにちは、YKプランニング管理本部長であり公認会計士の丸山です。

経営者のみなさま、災害や緊急事態の発生に備えて何か対策はされているでしょうか?
経営者は、災害や緊急事態が発生しても何とかして商品やサービスを提供し、会社を存続させたいと考えるでしょう。

しかし、いざ緊急事態となればどうでしょうか?
普段と同じように判断し、的確な行動ができるでしょうか?

災害や緊急事態などの非常時には、会社の業務継続に必要となるBCP(事業継続計画)や資金の手当てとしてリスクファイナンスをしておくことは重要です。
特に、中小企業では業種・業態にかかわらず備えが必要でしょう。

そこで今回は、中小企業の緊急事態に備えた資金繰り対策に絡めて、BCP(事業継続計画)とリスクファイナンスの基本について紹介したいと思います。


BCPとは?

そもそもBCPとは何なのか?から始めましょう。

BCPは、Business Continuity Planの略で、日本語で『事業継続計画』と呼ばれます。
これは、災害や緊急事態が発生した場合に、企業が業務を継続できるように、あらかじめ計画や対策を立てておくということです。

例えば、大雨や地震などの自然災害が起こった場合は、事業所の建物が壊れたり、道路が通行不能で物流インフラが機能しない可能性があります。また、コンピューターウイルスやサイバー攻撃などの情報セキュリティー上の問題が発生すれば、一定期間は業務を継続できないかもしれません。
手元資金に余裕がある企業は、非常時による損害が生じても、即倒産に陥る可能性は低いでしょう。しかし、手元資金に余裕のない中小零細企業の場合、そのまま倒産する可能性は相対的に高まります。そのため、中小企業こそBCP(事業継続計画)を策定し、非常時に備えることは重要です。


BCPと事前の資金繰り対策

それでは、BCP(事業継続計画)を策定する中で、資金繰り対策(財務対策)を意識するとは、どんなことが考えられるでしょうか?

後述するリスクファイナンスに近いのですが、例えば、以下のようなことが挙げられます。

運転資金の確保
災害や緊急事態が発生した時に備えて、事業継続のために必要な運転資金を確保する対策が必要です。そのためには、内部留保による緊急時の積立資金の準備はできているか、損害保険の加入は適切か、補償額を見直す必要はないかなど、事前の資金対策が必要になるでしょう。

借入金の返済
災害や緊急事態が発生した場合、借入金の返済が滞る可能性があります。そのために、いざという時の借入金返済計画シミュレーションを立てておくことも重要でしょう。また、事前に金融機関と深い信頼関係を築き、非常時にすぐに相談できる体制を整えておくことも重要です。

売上の減少
災害や緊急事態が発生した場合、単一事業、単一販売チャネルだけで経営を展開しているなら、売上減少が一極集中し、影響が多大になる可能性があります。そのリスクを減らすためには、いまのうちから複数事業の展開、販売チャネルの多様化など、売上減少の影響を緩和する対策をおこなうことも重要です。

BCP(事業継続計画)を考える際に、資金繰りの観点から具体的な対策を立てておくことは事業を継続するうえで重要な意味をもちます。


リスクファイナンスとは? 

しかし、あくまでもBCP(事業継続計画)は災害や緊急事態に備えて、損害を低減するための計画や対策ですから、実際に損害をゼロにできない可能性があります。

そのため、万が一損害をゼロにできなかった場合に備えて、実際に損害保険や自己資金などで資金的な手当てをしておくことをリスクファイナンスと呼びます。
リスクファイナンスは大きく『リスク保有』『リスク移転』に分かれます。

「リスク保有」は、企業が自ら損害を負担することです。災害や緊急事態の発生時に想定される損害が大きく、事業継続に関わる致命的な損害を免れるため、資金的な手当てをしておくことです。
例えば、実際に損害が発生する時に備えて、事前に毎月コツコツと積立資金を準備することがリスク保有の手段となります。

「リスク移転」は、企業が負う損害を他者に移して、企業自身の損害を減らす方法のことです。例えば、火災保険に入ることで、火災による損害を保険会社に移転することができます。


自社のリスクファイナンスを把握

もちろん、経営状況が芳しくない中小企業にとっては、リスクファイナンスなどに手をつける余裕がなく、リスクに対する備えが手薄とならざるを得ないかもしれません。

しかし、非常時は突然やってきます。

そのためにも、まずは、自社のリスクファイナンスの現状把握をすることから始めてみましょう。
損害保険の加入と見直し
もっともポピュラーなものが法人向け損害賠償責任保険への加入でしょう。非常時を想定して自社にとって加入が必要な保険は何か?補償額はどれほど必要か?を取扱保険代理店にヒアリングして把握しておきましょう。

会社の手元資金
もっとも融通の効くリスクファイナンス対策は会社の手元資金でしょう。非常時が発生した場合には積立資金を取り崩して事業を継続できます。その場合に、いくら資金が必要なのかを把握し、備蓄資金をコツコツ積み立てる準備をしましょう。

経営者からの支援
こちらも会社の手元資金と同様に融通の効くリスクファイナンスでしょう。非常時が発生した場合に、経営者が自己資金をいくら会社に拠出できるのかを事前に把握しておきましょう。

金融機関・自治体・保証協会
BCP(事業継続計画)の策定・対策をおこなっている企業に対して、特別な融資や保証を実施している金融機関・自治体・保証協会があります。関係性の深い金融機関や県などの取り組みについて、中小企業向けの制度を事前に把握しておくとよいでしょう。


まとめ

今回は、中小企業の緊急事態に備えた資金繰り対策に絡めて、BCP(事業継続計画)とリスクファイナンスの基本について紹介してきました。
もちろん、災害や緊急事態の発生確率や損害額を正確に見積もることは困難です。

ですが、万が一、不測の事態に見舞われた場合に、
あなたの会社は生き残ることができるでしょうか?
従業員やその家族を守れるでしょうか?
顧客からの信頼を維持し、社会的責任を果たせるでしょうか?

BCP(事業継続計画)やリスクファイナンスは、あなたにとって決して特別なものではありません。

災害や緊急事態において的確に判断し行動するためには、緊急時におこなうべき行動や、緊急時に備えて平常時におこなうべき行動を事前に整理し、BCP(事業継続計画)として取りまとめておくことは重要です。

また、実際に被害にあったときに、被害を低減できたとしてもゼロにできるかはわかりません。
そのようなことを想定すれば、おのずとリスクファイナンスの対策も十分検討しておく必要があるでしょう。

丸山 桂
丸山 桂
株式会社YKプランニング 経営管理本部長 公認会計士

大学卒業後、金融機関のリテール営業からEY新日本有限責任監査法人での金融機関監査とIPO支援経験を積む。独立し税理士事務所を開業後、YKプランニング入社。現在は経営管理本部で予算管理とバックオフィス業務を統括。幅広い財務会計と金融の知識と経験を活かし、組織の成功に貢献するべく管理体制を強化中。
趣味はゴルフ・YouTubeで興味がない分野の動画をあえて見ること。