固定資産を管理する目的と業務フローとは?
こんにちは、YKプランニング管理本部長であり公認会計士の丸山です。
経営者のみなさま、日ごろから固定資産の管理は適切におこなっていますか?
経営活動をおこなう上で、会社は固定資産を保有していることがほとんどですよね。
固定資産は、一般的に多額であり、かつ、長期にわたり使用するという特徴があります。
多額であるがゆえに、購入時にキャッシュへの影響が大きいですし、減価償却による費用の影響も把握しておかなければなりません。また、購入時点の固定資産管理をおろそかにしてしまうと、過去に購入した固定資産の詳しい情報を把握できないなど、管理の甘さから生じる不都合がしばしば起こります。
そこで今回は、中小企業における固定資産管理の目的や固定資産管理の業務フローについて紹介します。
固定資産管理はなぜ必要なのか?
そもそも固定資産の管理はなぜ必要なのでしょうか?
一言でいえば、企業経営の健全性を担保するためということでしょう。
では、固定資産の管理を怠ると、企業経営の健全性にどのような悪影響を及ぼすのか、固定資産管理の必要性の視点で確認していきましょう。
【固定資産管理の必要性】
①適切な減価償却の計算ができない
前述したとおり、固定資産は多額で、かつ、長期にわたり使用する資産です。そのため、購入時に全額経費処理することはありません。一般的に耐用年数や償却方法のルールに従って、毎年少しずつ経費として計上します。これを減価償却(げんかしょうきゃく)といいます。
適切な減価償却の計算をするためには、固定資産ごとの情報を適切に管理する必要があります。固定資産の細かい情報を台帳にまとめ、その情報を利用して減価償却額を計算するのです。適切な減価償却計算をすることは、言い換えると適切な期間損益計算をおこなうことですから、健全な企業経営には欠かせません。
②固定資産税の算出ができない
固定資産には固定資産税が課されます。土地・建物に課される固定資産税だけでなく、償却資産を対象とした税金も課されます。そのため、台帳を用いて固定資産を管理しておかないと、正確な税金計算ができません。また、不要な償却資産を把握できれば除却・廃棄をおこなうことで、その分の節税効果をもたらすこともあります。固定資産管理を適切におこなうことは、税金計算の側面でも企業経営の健全性に関連しているのです。
③無駄な投資を排除する
固定資産管理を怠ると会社は無駄な投資をおこなうこともあります。例えば、ある部署で職員の退職があり、新しいPCが余っているとします。それを知らずに、新たにPCを購入してしまうと無駄な投資につながります。日ごろから固定資産管理を適切におこなえば、知らないところで誤って新規購入がなされることもないため、無駄な投資を排除する点で健全な企業経営につながります。
④資産の保全ができない
あってはならないことですが、適切に固定資産管理がなされていないと盗難や不正使用などにつながります。適切に固定資産管理をしていないと、どのような固定資産がどの部署にいくつ存在し、また、稼働状況はどうなのかなどの情報がありません。そのため、現物管理が徹底されていないと盗難や不正使用などを引き起こす動機となるのです。適切な固定資産管理は、会社財産を保全するという点で健全な企業経営に必要な要素でしょう。
⑤適切な買い替えタイミングを把握できない
適切に固定資産管理がなされていなければ、固定資産の買替えタイミングを把握することができません。いつごろ購入したのかなど、詳細な情報が管理できていないからです。企業は持続的・安定的に組織運営をおこなわなければなりません。突然の固定資産故障で業務が停止すれば取引先の信用を損ないかねません。固定資産の陳腐化・老朽化を見越して適切なタイミングで修繕や買い替えをおこなうことは健全な企業経営に必要なのです。
固定資産管理の業務フロー
ここまで固定資産管理の必要性について触れてきました。
では、固定資産管理はどのようなフローでおこなうのでしょうか?
ここでは、詳細な説明は避け、おおまかなフローについて紹介します。
①取得の申請・承認
固定資産の取得をおこなう際には、まず申請と承認が必要でしょう。
複雑な申請ワークフローである必要はありません。大切なのは、とにかく誰かが申請して、それを承認するプロセスを踏むことです。固定資産は多額になりやすく、初期コストやランニングコストも考慮しなくてはなりません。場合によっては、リースやレンタルの方が会社にとって都合がよいこともあるでしょう。申請・承認のプロセスはその意思決定も兼ねていることを意識しておきましょう。
②取得の会計登録と台帳登録
購入がなされれば、会計ソフトに購入取引の登録をおこなうことになります。また、固定資産管理で一番重要なポイントは、各固定資産の情報を台帳へ登録し、一元管理を徹底することです。台帳は、会計ソフトについている固定資産管理機能を活用するケースや固定資産管理に特化した専用ソフト活用することをおすすめしていますが、もちろんエクセル管理でも問題ありません。例えば、以下のような情報を固定資産台帳に登録しておくとよいでしょう。
・固定資産名
・取得年月日
・供用年月日
・設置場所
・管理部門
・用途
・取得価額
・数量
・償却方法
・耐用年数
これらの情報を管理していれば、減価償却や除売却などの会計処理、税務申告(別表)などにまつわる「会計・税務上の管理」への対応、固定資産そのものにまつわる「現物の管理」への対応に十分な情報を与えてくれます。
③現物の管理・棚卸
固定資産は長期にわたって使用するため、盗難・紛失・損壊がないか、現物管理を徹底しなければなりません。そのために、最低でも年に1回は現物棚卸を実施します。これは、台帳に載っている固定資産が実際に存在するのか現物を目視して照合する作業です。固定資産にラベリングシールを貼り付けておくと、現物棚卸の際に固定資産を特定しやすく効果的です。
まとめ
今回は固定資産を管理する目的や固定資産管理の業務フローについて紹介しました。
固定資産は長期にわたり使用しますから、購入時点(入口)をしっかり押さえることがポイントです。時間が経ってから台帳登録をおこなうと、入力誤りや入力漏れを引き起こします。
これが原因で、台帳に登録された固定資産が存在しなかったり、逆に固定資産が存在するのに台帳に記載されていなかったりという事象が生じます。
健全な企業経営には固定資産の存在が不可欠です。
目的を十分に理解して固定資産管理を徹底していきましょう。

大学卒業後、金融機関のリテール営業からEY新日本有限責任監査法人での金融機関監査とIPO支援経験を積む。独立し税理士事務所を開業後、YKプランニング入社。現在は経営管理本部で予算管理とバックオフィス業務を統括。幅広い財務会計と金融の知識と経験を活かし、組織の成功に貢献するべく管理体制を強化中。
趣味はゴルフ・YouTubeで興味がない分野の動画をあえて見ること。