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中小企業が絶対におさえておくべき経営指標5選 

2023年 7月20日
会計・財務 ビジネス用語

こんにちは、YKプランニング管理本部長であり公認会計士の丸山です。

経営者のみなさま、会社の経営指標にどれだけの関心をお持ちでしょうか?
経営指標は、会社の状況を数値で把握し、自社の経営がどのような状態にあるのかの目安となる水準を知ることができるものです。

しかし、やっかいなのは、世の中にはたくさんの経営指標が存在することです。
例えば、収益性、安全性、生産性など、多くのカテゴリに分かれた経営指標が存在します。
また、短期的、中長期的など時間軸の視点で重要度が異なる経営指標が存在します。

経営が安定している大企業ではより多くの経営指標を利用して財務分析することもありますが、中小企業の場合は多くの指標があることはかえって混乱を招いてしまいます。
そこで今回は、中小企業が絶対におさえておくべき経営指標を5つ厳選して紹介したいと思います。


①現預金販管費率とは

まずご紹介する指標は、現預金販管費率です。
これは、安全性に関する指標で、短期的に極めて重要な指標です。
現金預金残高÷1ヵ月分の販管費(販売費及び一般管理費)(単位:ヵ月)
の計算式で求めることができます。

販管費は固定費をイメージするとわかりやすいでしょう。
つまり、仮に売上がゼロの状況になった時に、あと何ヶ月間会社が耐えられるか?を知ることができます。この指標はできれば毎月チェックしていただきたい指標です。

中小企業であれば、最低でも3ヵ月、理想は6ヵ月欲しいものです。ですが、実際は1~2ヵ月の中小企業が多いのも事実です。1~2ヵ月の現預金販管費率の会社では、目先の資金繰りに追われて何とか会社を回している状況です。何かイレギュラーな事象が起きれば、いつ資金ショートしてもおかしくないということです。

このような状況だと、経営の足場固めができていない状況ですから、経営者に時間と気持ちの余裕がありません。言い換えれば、将来のことをじっくり考え、将来戦略をたてる余裕がないということです。
将来戦略を考えることができなければ、会社を安定的・持続的に経営していくことは難しいでしょう。

まずは、追加借り入れなどで手元資金を増やし、現預金販管費率の改善をおこないましょう。


②減価償却前利益とは

次に紹介する指標は減価償却前利益です。
これも、安全性に関する指標で、短期的に極めて重要な指標です。
当期純利益+減価償却費(単位:円)
の計算式で求めることができます。

これは、銀行も必ずチェックする指標で、会社の借入金の返済能力がどれだけあるかを把握する指標です。減価償却を足すのは、減価償却は費用として計上しますが、キャッシュが出ていっていないために足し算すると覚えておきましょう。

例えば、当期純利益が400万円あり、減価償却費が100万円あるとすると、減価償却前利益は500万円となります。これが=借入金の返済能力になります。

なので、この金額が年間借入金返済総額を上回っているのかどうかをチェックするとよいでしょう。年間借入金返済額が300万円だとします。減価償却前利益500万円で返済をまかなえているわけですから、無理なく借入金を返済することができており、かつ、200万円キャッシュが手元に残ることになります。

逆に下回っているようだと、明らかに借入金過剰の状態ですから、収益性の改善をおこない、当期純利益をアップさせていく必要があります。


③債務償還年数とは

次に紹介する指標は債務償還年数です。

これも、安全性に関する指標で、中長期的に極めて重要な指標です。
借入金総額÷減価償却前利益(単位:年)
の計算式で求めることができます。

これも、銀行が必ずチェックする指標で、会社が何年で借入金を返済することができるかを把握する指標です。

債務償還年数の目安は10年以内が望ましいのですが、10年超であれば大規模な設備投資が必要な装置産業でない限り借入過剰と言えるでしょう。減価償却前利益と年間借入返済額の比較と同様、借入金の返済余力を測る指標として重要です。

どちらも目安となる水準を下回るようでしたら、いち早く収益性改善をおこなうようにしましょう。


④売上高営業利益率とは

次に紹介する指標は売上高営業利益率です。

これも、収益性に関する指標で、短期的にも中長期的にも極めて重要な指標です。
(営業利益÷売上高)×100(単位:%)
の計算式で求めることができます。

この指標でわかることは、本業で儲ける力がどれだけあるかです。
例えば、営業利益が300万円で売上高が3,000万円であれば、売上高営業利益率は10%となります。

業種によって目安が異なりますが、重要なのは、自社数値の過去複数年との比較をすることです。比較対象があるだけで、この指標の意味合いは何倍も違ってきます。目安としては最低過去3年間、できれば過去5年間の比較が望ましいでしょう。

例えば、過去5年間の推移で比較し売上高が順調に伸びているとしましょう。売上高営業利益率が10%のまま固定であれば、当然営業利益の絶対値は大きくなるでしょう。
このように売上高営業利益率が安定しているケースは問題ないのですが、往々にして売上高が伸びているのに、営業利益の額がほぼ横ばいというケースがあります。

要因としては、原価率や販管費率が高くなっていることが原因です。経営者としては売上が伸びることはとても気分がよいものです。しかし、実際に営業利益が伸びていないのではあれば、売上上昇=リスクととらえることも重要です。
特に販管費率が高くなっている状況では、売上高の上昇に応じて固定費が大きくなっていることと同じですので、急に売上が下がった時に一気に赤字転落ということもあり得ます。

繰り返しですが、会社経営は安定的・持続的におこなうことが重要です。売上が大きくなったことで会社は成長したと感じる経営者は多いでしょう。しかし、そう認識するのは営業利益が売上に応じて大きくなっていることをセットで確認した後にしましょう。


⑤自己資本比率とは

次に紹介する指標は自己資本比率です。
これも、安全性に関する指標で、中長期的にも極めて重要な指標です。
純資産÷総資産(負債+純資産)}×100(単位:%)の計算式で求めることができます。

これは、会社全体の総資産が、返済の必要がない自己資本でどれだけまかなわれているかを把握する指標です。言い換えれば、借入金に依存しない安全な会社経営をおこなっているかを把握することができます。

例えば、純資産が1,000万円で総資産が5,000万円だとすると、自己資本比率は20%ということになります。自己資本比率の目安としては、できれば30%は欲しいところではありますが、中小企業では30%を下回っている会社も多いと思います。

これは中長期的な指標ですので、すぐに改善できる指標ではありません。収益性を改善し、毎年の当期純利益をコツコツと積み上げて純資産額を増やしていくほかありません。

特に、銀行にとってみれば50%程度の自己資本比率があるような会社は簡単に倒産するような会社ではないという安心感をもたらたす指標ですから、毎年1回は必ず確認するようにして欲しいものです。


まとめ

さて、今回は中小企業が絶対におさえておくべき経営指標を5つ紹介してきました。
中小企業において、経営指標は会社経営の方向性や改善を示してくれるものです。
しかし、多くの経営指標を目の当たりすると圧倒されることも多いでしょう。

どの経営指標を優先すべきか分からないからです。中小企業の場合は、短期の指標(目先)をより優先して、それから中長期の指標の改善に取り組むとよいでしょう。

まずは、中小企業にとって重要な5つの経営指標のみにフォーカスし経営分析をおこなってみてはいかがでしょうか。

丸山 桂
丸山 桂
株式会社YKプランニング 経営管理本部長 公認会計士

大学卒業後、金融機関のリテール営業からEY新日本有限責任監査法人での金融機関監査とIPO支援経験を積む。独立し税理士事務所を開業後、YKプランニング入社。現在は経営管理本部で予算管理とバックオフィス業務を統括。幅広い財務会計と金融の知識と経験を活かし、組織の成功に貢献するべく管理体制を強化中。
趣味はゴルフ・YouTubeで興味がない分野の動画をあえて見ること。