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ROIC(投下資本利益率)とは?

2024年10月10日
経営管理 会計・財務

こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。

会社を経営するうえで、売上や利益だけを追いかけていませんか?
もちろんそれも重要ですが、同時に「どれだけ効率よくお金を使って利益を生み出しているか」も見逃せないポイントです。

そこで役に立つのが「ROIC(投下資本利益率)」という指標です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、この指標を理解することで、あなたの会社が本当に「儲かっている」のか、そしてどのようにお金を使えばさらに効率的に成長できるかが見えてきます。

今回のブログでは、ROICの基本から、経営にどう活かせるのかまで、わかりやすく解説します。


ROICとは何か?活用メリットと計算式

ROIC(Return on Invested Capital、投下資本利益率)とは、企業が事業活動をおこなうために投資した資本が、どれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す指標です。具体的には、企業が投入した資本からどれだけの利益を生み出しているかを測定することで、資本運用の効率性を評価します。
計算式は以下の通りです。

ROIC=NOPAT(税引後営業利益)÷投下資本×100(%)
※NOPAT(Net Operating Profit After Tax)とは、税引後営業利益。企業の本業から得た利益に対して税金を差し引いたものです。
※投下資本(Invested Capital)とは、企業が事業活動に使っている資本。自己資本と負債の合計から事業に直接関連しない余剰現金や短期的な投資を差し引いたものです。


ROICの目安は?業種別の目標値は?

ROICの一般的な目標値は、業界や企業の特性によって異なりますが、15%以上が一つの目安とされています。この数値が高ければ高いほど、企業が投下した資本を効率的に運用して利益を生み出していることを示します。

●理想的なROICの目標値
15%以上:
一般的に、このレベルのROICは非常に優れた資本運用効率を示しており、企業が価値を創造していると判断されます。これは、企業が投入した資本に対して十分なリターンを得ていることを意味します。
10%~15%:
これは良好なROICの範囲と見なされます。この範囲でも、企業は健全に資本を運用していると評価されます。
10%未満:
この範囲にあるROICは、企業が投下した資本に対して十分なリターンを得ていない可能性を示唆します。特に、ROICが企業の資本コスト(WACC※)を下回る場合、企業は価値を毀損している可能性があります。

※WACC(Weighted Average Cost of Capital、加重平均資本コスト)とは、企業が資金を調達する際に支払うコストの平均を、資本の構成割合に応じて加重平均したものです。簡単に言うと、企業が投資や運営のために必要な資金を調達する際にかかる全体的な費用を示す指標です。

●業種別のROIC目標値
業種によっては、平均的なROICが異なるため、同じ数値でも評価が異なる場合があります。たとえば、ハイテク産業やソフトウェア企業などの資本集約度が低い業界では、ROICが高いことが多く、20%以上を目標とすることもあります。一方、製造業や重工業などの資本集約度が高い業界では、10%前後でも健全とされる場合があります。

ROICは、企業の収益性を測るうえで非常に重要です。なぜなら、ROICは単なる利益率ではなく、企業が持つ資本全体を使ってどれだけの利益を上げているかを示すため、企業の経営効率を包括的に評価できるからです。特に、企業が投資家から預かった資本や借り入れた資金をどれだけ有効に使っているかを判断するために、ROICは不可欠な指標です。

企業経営において、ROICは投資判断や経営戦略の策定に大いに役立ちます。高いROICを維持することで、企業は資本を効率的に使いながら成長を続けることができ、長期的な競争力を高めることができます。


なぜNOPAT(税引後営業利益)を使うのか?

NOPAT(Net Operating Profit After Tax、税引後営業利益)は、企業が本業から得た利益を示す指標であり、ROICの計算において非常に重要な要素です。NOPATは、営業利益から税金を差し引いた後の利益で、企業の本業がどれだけ健全に利益を生み出しているかを反映します。

NOPATを使用する理由は、本業にフォーカスして企業の収益性を評価するためです。
もしも企業が本業以外の投資や非経常的な収益で一時的に利益を上げた場合、それは持続可能な収益とは言えません。NOPATは、こうした一時的な要因を排除し、純粋に本業から得られる利益だけを評価します。

たとえば、ある企業が営業利益として1,000万円を上げたが、税率が30%であれば、NOPATは700万円となります。これは、税金を支払った後に企業が実際に手元に残すことができる本業の利益です。

このように、NOPATを用いることで、企業の本業の収益力を正確に把握することができ、資本運用の効率性を測るための基礎が整います。


投下資本(Invested Capital)に含まれないものとは?

投下資本(Invested Capital)とは、企業が事業活動をおこなうために実際に使っている資本のことです。これは、自己資本と負債の合計から、事業に直接関連しない余剰現金や短期的な投資を差し引いたものとして定義されます。投下資本は、企業がどの程度の資本を実際に使って利益を生み出しているかを示すため、ROICを計算するうえで非常に重要です。

投下資本は、企業が実際に事業活動に投入している資本を示すため、総資産から事業運営に直接使われない資産を差し引く必要があります。具体的には、以下のような資産が投下資本に含まれないため、総資産から差し引いて計算します。

●含まれない主な資産
①現金および現金同等物
現金や短期預金など、すぐに現金化できる資産は、企業が事業運営に直接使用することが少なく、余剰資金として保持される場合が多いため、投下資本には含めません。

②有価証券
短期的な資金運用や投資目的で保有している有価証券も、事業運営に直接関与しないため、投下資本からは除外されます。

③繰延税金資産
将来の税金の減額を意味する繰延税金資産は、事業運営の資本としては利用されないため、これも除外します。

④前払費用
保険料やリース料など、将来の期間に対応する費用として前払いされたものは、直接的な事業運営資金としてはカウントしません。


ROICとROA、ROEの違いと使い分け

ROICは、資本の効率性を評価する指標として非常に重要ですが、他にも企業の収益性を測る指標としてROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)があります。それぞれの指標には異なる特徴があり、目的に応じて使い分けることが大切です。

●ROIC vs ROA
ROICは、企業が投入した資本に対するリターンを測定し、資本の運用効率を評価します。一方、ROAは、企業が保有する全ての資産を使ってどれだけの利益を生み出しているかを示します。ROAは、総資産に対する収益性を評価するため、企業の全体的な資産効率を測る際に使用されます。

●ROIC vs ROE
ROEは、株主が投資した自己資本に対するリターンを測定する指標です。株主に対する利益の効率性を示しますが、ROICは自己資本と負債の両方を含む資本全体の効率性を評価するため、より包括的な視点で企業のパフォーマンスを評価できます。

企業経営においてROICは資本全体の運用効率を把握するために非常に有効であり、長期的な成長戦略を策定する際には特に重要です。ROAは資産全体の効率性を測る指標として、企業の資産運用の健全性を確認する際に使用されます。また、ROEは株主の観点から企業の利益性を評価するため、株主へのリターンを重視する場面で活用されます。

それぞれの指標は異なる視点を提供しますが、ROICはこれらの指標の中でも特に資本効率に焦点を当て、企業がどれだけ効果的に資本を使っているかを総合的に評価できる点が特徴です。


中小企業にもROIC経営の考え方を!

ROIC(投下資本利益率)は、単に利益を上げるだけでなく、資本をどれだけ効率よく使っているかを示す重要な指標です。

中小企業にとっては、限られた資本を最大限に活用することが鍵となります。ROICを定期的に確認することで、どの事業にもっと投資すべきか、どこに改善の余地があるかを判断できます。
さらに、ROICを活用して経営の健全性を把握することで、長期的な成長戦略を立てる際にも大いに役立ちます。新しいプロジェクトや設備投資を検討する際には、ROICを基準に判断し、無駄な投資を避けることができるでしょう。
そして、ROICの高さは、外部の投資家や銀行にも企業の安定性を示し、より良い条件での資金調達につながる可能性があります。

ROICを意識した経営をおこなうことで、資本の効率を最大化し、持続的な成長を目指しましょう。

岡本 辰徳
岡本 辰徳
株式会社YKプランニング 代表取締役社長

1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。