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中小企業にキャッシュフロー計算書は不要なのか?

2021年11月11日
会計・財務 ビジネス用語

こんにちは。YKプランニング代表取締役社長の岡本です。

上場企業の決算書には「損益計算書」と「貸借対照表」そして「キャッシュフロー計算書」のいわゆる「財務三表」の作成が義務づけられていますが、中小企業にはそのうちの「キャッシュフロー計算書」は作成の義務がありません。

これは
「大きい会社はキャッシュフロー計算書を作りましょう」
「小さい会社はキャッシュフロー計算書を作らなくいいですよ」
という単純なことではありません。

なぜそうなっているのかを理解することで、キャッシュフロー計算書の本質が見えてきます。特に「経営の見える化」をしたい中小企業経営者の方、必見の内容です!

キャッシュフロー計算書が必要とされる背景

経営者の方であれば「黒字倒産」という言葉を耳にしたことは一度くらいあるのではないでしょうか?

赤字で倒産なら誰しもが納得いく答えなのですが黒字なのに倒産…?もう少し表現を変えると「赤字じゃないのに倒産」または「赤字じゃないのにお金がない」となります。

ひと昔前、会社の良し悪しは損益計算書に記載される利益に着目して判断されていました。ところが、損益計算書は黒字なのに実際に倒産する会社が多数発生しました。「損益計算書を改ざん(粉飾)していたんじゃないの?」と思うかもしれませんが、倒産した会社の中には、改ざんをしていない会社もたくさん含まれていたのです。

会社の倒産によって困るのは、社長であり、社員であり、取引先であり、銀行でありと、多くの方に迷惑をかけることになりますが、上場企業の場合は「株主」にも多大なる迷惑をかけることになります。「黒字倒産」が多数発生したことにより、企業が作成する損益計算書の利益だけを信じて投資をすることは危険だということになりました。

では、何を信じて投資すればいいのか?

これを解決するために、1980年代に欧米で発明され制度化されたのが「キャッシュフロー計算書」なのです。日本は欧米から遅れること約20年後、2000年になってようやく上場企業に対してキャッシュフロー計算書の作成が義務付けられました。


作成の義務がないからって中小企業にはホントにいらないの?

上場企業では「株主たち」が困るからキャッシュフロー計算書を作りましょうね、というのが実態です。何百人、何千人、何万人という株主が困るので義務付けられているのです。

それならば、中小企業は困らないのか?となると、そんなことはありません。経営者自身が困るのです。

これは私の意見ですが「中小企業は自己責任」「上場企業は説明責任」だと考えています。制度化するためにはそのような線引きが必要であったと理解すると腑に落ちます。ですので、ここからは自己責任の世界ですから「キャッシュフロー計算書」を自分のために作るのか?作らないのか?をご自身で判断してください。

キャッシュフロー計算書を簡単に理解するためのポイントを1つお教えすると、「キャッシュインフロー」と「キャッシュアウトフロー」です。(過去に書いたこちらのブログも参照してみてください)

キャッシュフローとは直訳すると「お金の流れ」です。その流れがインとアウトということです。つまり入ってくるお金と出ていくお金を計算した書類がキャッシュフロー計算書です。

さらに詳細にご説明すると、「入ってきたお金」と「出ていったお金」です。あえて過去形で表現しました。

キャッシュフロー計算書とは過去の実績を集計して記載する書類なので、原則、過去の資料であることを意味しています。意外とこれを理解せずに使っている人がいるのですが、例えば
「来期のキャッシュフロー計算書」
この表現は矛盾しています。だからとって実際には指摘するほどのレベルでもありませんが、キャッシュフロー計算書の本質を理解するうえで、本来は「過去のことを書いたもの」ということを理解しておいてください。

自分自身のためにキャッシュフロー計算書を味方につけよう!

企業は人間の体と同じです。人間が生きていくために重要なものの一つに血液がありますが、企業にとってのそれは「お金」です。

血液の流れが悪かったり、数値が異常だったり、さらには慢性的な出血を続けていると、いずれ取り返しのつかない状態になってしまうことはだれにでも想像がつきます。それと同じでお金のインとアウトのバランスが悪かったり、インとアウトそれぞれの中身が明確でなかったりすると、いずれ取り返しのつかない状態になってしまいます。

お金がどんどん増えていく局面では通帳の残高を眺めるのが楽しいと思いますが、残高が日に日に減っていってしまうときは目を背けたくなるのが心情です。現実的にどのようなお金の流れをしていたのか、タイムリーかつ正確に把握することができるのが「キャッシュフロー計算書」です。

中小企業であろうが上場企業であろうが、すべての人が事業の継続を望んでいます。

キャッシュフロー計算書は、株主を守るために上場企業で義務化されているのであって、中小企業だから必要ないというものではありません。経営を行うすべての経営者に平等に与えられたツールを作成しない手はないはずです!

コツさえつかめれば簡単に読めるようになります。次回はその構造についてご説明します。

岡本 辰徳
岡本 辰徳
株式会社YKプランニング 代表取締役社長

1998年3月山口大学経済学部卒業。学校法人大原簿記法律専門学校入社。簿記・税理士講座の講師を務めた後、2003年行本会計事務所に入所。2017年株式会社YKプランニング代表取締役社長就任。ミッションである「独りぼっち経営者を0に」実現のために日々奮闘中。
趣味は長距離運転、スキンダイビング(素潜り)、GoogleMAPを見ること。