【決算書で見る】マクドナルド V字回復の戦略③
過去に業績低迷でどん底を味わった大手ファストフード店マクドナルドの知られざる業績秘話について、3回にわたって、決算書を交えながら紐解いていくこのブログ。
第1回目ではマクドナルドの業績悪化の要因とV字回復の推移を数字で見ていき、第2回目はV字回復の1つの要因について紐解きました。
最後の第3回目となる今回は、業績が低迷していた状況での追加投資と、それを実現するための資金調達について紐解いていきます。
参考URL:https://www.mcdonalds.co.jp/company/outline/kessan/
マクドナルドの復活劇
前回までのおさらいとして、V字回復の様子とその戦略を見ていきましょう。
まずは「価格破壊戦略の転換」と「使用期限切れ鶏肉問題」の大きく2つの要因で売上低下に陥ったマクドナルドの利益推移と、そこからの大幅回復を数字で見ていきます。
売上高を見ていくと、2013年から売上高が減少して2014年には前年比11.7%減。さらに2015年、2016年と売上減が14%超えとなっています。
しかし、2017年には前年比119.6%増、2018年には111.9%増を達成し、2期連続の大幅回復となりました。営業利益も順調に回復し、2016年~2017年を境にV字回復を遂げたと言えます。
そのV字回復の裏には前回ご説明したフランチャイズ店舗を増やす原点回帰戦略と、これからご説明する業績悪化に際しても継続されていた積極的な宣伝投資と設備投資があったのです。
未曽有の業績悪化だからこそ投資を優先
会社の安全性を示す「自己資本比率」は、2013年には16.8%あったものが、2014年には7.9%と前年比と比べて8.9%も低下しています。しかし2017年から比率を少しずつ伸ばしています。
その理由は業績悪化に際しても継続されていた積極的な宣伝投資と設備投資が一因です。
損益計算書にある「有形固定資産」「販売費及び一般管理費」を見てみましょう。
2013年から業績が低迷していたにもかかわらず、2014年には前年比9%の追加投資をしており、2015年は11%下げていますが赤字を出している企業にしては十分投資をしている事がわかります。
次に販売費及び一般管理費の部分を見てみましょう。
2014年は254億円、2015年は251億円計上されていますが、これは回復後の2017年3月期の227億円を上回っています。
つまり、業績が悪化している中でも広告宣伝費を削減せず、積極的にアピールを続けていたということです。マクドナルドは、業績が悪化して資金繰りが厳しくなっても設備投資を抑えず、店舗の入れ替え、既存店の改修等への投資を積極的にしていたのです。
ここにもユーザーに対する信頼回復という面もあったと考えられますが、実はフランチャイジーにとって集客や経営がしやすい環境を本部が戦略的にとっていた可能性があります。
そうしたユーザー目線、フランチャイジー目線での改善が利益を増大させたと言えます。
単年度赤字では史上最悪のマイナス351億を計上した2016年。資金はどこから調達したのか?
2015年に-211億円、2016年に-351億円もの史上最大の赤字を出したマクドナルドですが、資金はどのように調達したのでしょうか。資金が無ければ設備投資や宣伝費用などの捻出はできません。
2014年時点ではキャッシュは161億円ほど持っていますが全く足りません。
そこで外部から資金を調達する必要がありますが、これだけ大きな問題を抱えている会社の株を積極的に買う投資家はいません。市場からの資金調達は望み薄です。
そこで財務諸表を見ると、2014年までは関連会社短期借入金は440億円ほどでしたが、問題が起こった2015年から751億円、2016年には1,082億円まで借入金が増えています。
このことから、パートナー企業からの借入をする事で、短期間で大惨事を収集させようと動いていたのではないかと予想できます。
2016年の大混乱からキャッシュの蓄積も進んでいます。2020年には586億円ものキャッシュを手元に置きつつ経営をおこなっています。
まとめ
3回にわたり、財務諸表を基にして大手ファストフード店マクドナルドの業績を見てきました。財務諸表である「損益計算書」「貸借対照表」を見ると細かな会社の健康状態がわかります。
では、最後に全体の内容をまとめて終わりたいと思います。
1.マクドナルドの業績低迷理由は「高価格商品の投入」「賞味期限切れ鶏肉」の影響が大きかった。
2.V字回復した理由は、会社経営をトップダウン型からボトムアップ型に変更。それによって地域に合った商品提供が可能になりスピード感を持った経営改革を実現。
3.業績低迷期にも関わらず宣伝投資を意識した既存店の設備投資を積極化した
公開されている財務諸表を読み込めば経営陣がどのようなジャッジをしていたか、戦略まである程度は見ることが可能になります。
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